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知の巨人が指南する方法論発見のための書・立花隆著 『知のソフトウェア』 レビュー

 知的生産を説いた書なら、世の中にはピンからキリまでいくらでもある。ではそのような数多の指南書のなかで、本書は何がユニークだろうか。
 それは、著者が総合知を体現した知の巨人であり、その経験知がシャープに描きだされている点だと思う。
 著者がいうように、この分野の本は、一般論が成り立たない。読む意義としては、自分の方法論を発見し、確立する上でのヒントを得るためということが大きい。
 と同時に、著者自身への理解を深めたいとの思いがあるのも確かだ。東大には縁もゆかりもないけれど、私は立花隆さんに関心がある。
 一章の情報のインプット&アウトプットの章から、引きこまれた。
人間が知識や情報を欲求する根本から説き起こされているからだ。リーディングの原理、知的受容のメカニズムたるものは未だ暗黒大陸であり、だからこそ、知の巨人である著者の経験知が存分に活きている。
 本書で語る著者の指南を要約すると、「難解な古典的名著に若いうちからトライせよ、書物は自分で選んで買って読め、文体は衣装に過ぎない、オリジナル情報に近づけ、無意識下の力を涵養せよ。」
 本書の価値は刊行から、30年以上経った現在もなお、古びていない。
論理学と非ユークリッド幾何の初歩の学習の必要性も教えてくれた。
 情報のSN比を高める努力を説いた部分などは、SNSなどの興隆でこれだけ情報が氾濫し、混乱している現在においては必読。
 自分の方法論を早く発見するための、真価ある書。


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