見出し画像

『エゴを抑える技術・賢者の視点を手に入れる』 レビュー

エゴ。それはときに人を奮起させ、熱に身を焦がさせる燃料となる一方で、身を滅ぼす主因となるもの。歴史上数多の人間がそれによって転落したもの。そう、矢や象、ミサイルよりも手強いあの強敵。 " 我" だ。
本書は、ライアン・ホリデイの著書だ。
ホリデイが本書を編む上で材料としたのは、個人的経験ではない。
光をあてたのは、歴史上の現れては消えていった成功者、古代から近現代までの陰の功労者たちだ。ベンジャミン・フランクリン、ロックフェラー、チンギス・ハン、古代ギリシアのイソクラテスが支援した青年デモニコス、ドイツの元首相メルケル….
始めは強敵であるエゴに呑まれながら、苦悶し、不安に襲われ、自惚れ、ときに有頂天になることもある無名に等しい青年は、エゴを射り、コントロールすることを学んでいく。やがて地位や名誉以上のもの、目標とアタラクシア(心の平静)をバランスのとれた感覚で追求していくようになる。
本書の存在は、ロルフ・ドベリ著『Think Clearly 』の参考文献で知った。
本書を参考にドベリはこの著作のいくつかの章を書いたという。どちらにも共通しているのは、ストア派哲学の思考法をベースにしている点だ。
本書を一言で言い表すならば、「謙虚さを極め、冷静な態度と適切な現実感覚で、自身の目標を着実に達成していくための本」「キャリアや人生を歩もうとする人、あるいは歩んでいる人が転落し、奈落の底に落ちずに、前進するための助けとなる本」だ。
冒頭では、本書を著すに至った、ホリデイの痛ましい経験にふれられている。著者渾身の一冊と言える。
激動の時代である現代において、本書は、自らを客観的に律し、人生という大波のなかをバランスよく航海していく上で、良きバイブルとなるだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?