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インナーブランディングは、誰かが「旗振り役」しなくちゃいけない

ブランド・プランナー協会講師の和田(よければ個人noteもご覧ください)です。
今回はインナーブランディングに関して書かせていただきます。

ところで、「問題を抱えていない企業なんてないですよね」
といきなり身も蓋もないことを言ってしまいます。

どんな企業だって、多かれ少なかれ問題を抱えているものです。
「なかなか売上が上がらない」「プロジェクトが頓挫した」「採用してもすぐに辞めてしまう」などの、ある意味定番の問題から、「社内の雰囲気が悪い」「スタッフのポテンシャルはあるのに発揮できない」「スタッフが好き勝手に行動してしまう」など、意外と根が深くてなかなか解決できない問題まで、じつにさまざまです。

とくにインナーブランディング領域(インターナルブランディングと言うケースも)では、「人間関係のいざこざ」や「人事評価への不満」「社内のパワーバランスから生まれる矛盾」など、目に見えない要素(感情的な要素)が複雑に絡み合うので、余計にややこしくなりがちです。

「指示した通りに行動してくれ!」と言って、本当にその通りになったら苦労はしません。
いや、むしろ指示した通りに行動するだけならAIで十分かもしれませんね。

前に見えない感情的な要素を持っている人間だからこそ、上手いことマネジメントできれば、大きなパワーを発揮できると信じています。期待しています。

社内の問題は「見て見ぬふり」されやすい

これは私の実体験でもあり、クライアントからの相談に共通する問題でもあるのですが、「社内の問題は見て見ぬふりをされやすい」ということがあります。

どういうことか?

「総務担当者と人事担当者の相性が悪く、連携して進めるべき中途採用がストップ。その結果、社内から採用への不満が続出」
「部署を横断する新規プロジェクトが発生。でも、“この仕事はウチの部署の担当範囲じゃない”と部署が壁となり頓挫」

これらのエラーは「会社あるある」かと思います。
人間関係によって仕事が連携できなくなったり、ストップしたり。セクショナリズムによって、仕事が連携できなくなったり、ストップしたり。

「あー、ウチもまさにそれだわ」と思う方も多いはずです。
そうなんです。よくある話しなんですよね。

さて、ここからが需要。

では、そのよくある問題、いったい誰が解決するの?
という新たな問題が発生します。

「みんな!! 社内の問題はオレが解決する!! ややこしいことはオレに任せろ!!」
と率先して手を挙げてくれるスーパーヒーローがいれば話は別です。

実際にはいませんよね、そんなスーパーヒーロー。

だって、汚れ役なんて誰もやりたくはありません。
板挟みになって苦しむと、火を見るよりも明らかですもん。

「あーあ、また揉めてるよ。いっつも総務と人事はケンカばかりしてんな」
と心の中でみんな思っている。

「総務と人事がケンカして連携できないと採用が上手くいかない。採用が上手くいかないと、自分たちも大変な思いをする」
と心の中でみんな分かっている。

でも、見て見ぬふりしちゃいますよね。

総務と人事の間に入り込んで、解決しようとはしない。
「誰かが仲裁しないと、ずーっとこのままだよな~」と思うものの、自分がその役を引き受けようとは思わない。

そんなもんです。

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じゃあ、誰が「旗振り役」するの?

ここで、タイトルの「インナーブランディングは、誰かが“旗振り役”しなくちゃいけない」に戻ります。

そうなんです。誰かが旗振り役をしなくちゃいけないんです。
そうしない限り、問題はずっとそのままです。

「ちょっと待って! 総務と人事が仲悪いのはインナーブランディングと関係あるの!?」と、
鋭いツッコミが聞こえてきそうです。

ナイスツッコミ!

改めて「インナーブランディング」を簡単に振り返ります。

「インナーブランディング」ってなんだっけ?

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これはブランド・プランナー協会の講座で使用しているスライドの抜粋。

ここから読み解くと、
インナーブランディングとは、「ウチの会社はこういう会社だ!」と定めたブランドを社内に浸透させる活動全般を指します。

では、なぜブランディングで「ウチの会社はこういう会社だ!」と定めるのかと言えば、それは「(その会社にとって)正しい方向に自走できる組織」にするためです。

会社には「こうありたい!」「こうしたい!」という経営目標やミッション、ビジョン、夢、理想などがあります。
「今期は10億円の売り上げを達成するぞ!」「当社の製品で世の中から不便をなくすぞ!」「Googleを越える会社にするぞ!」など、経営目標やミッション・ビジョンなどの「目指す先」があります。

そして、企業活動はその「目指す先」である「正しい方向」に向かっていなければいけません。

「いや~、オレはGoogleを越える会社なんて興味ないわ~。それよりも、仕事ほったらかしてみんな呑みに行こうぜ!」では困る。

スタッフみんなが、「よし!必ずGoogleを越える会社にするぞ!そのために、オレは○○をやるぞ!」と、納得して行動して価値を発揮してくれないとGoogleを越える会社なんて実現できませんよね。

その状態をつくるのがインナーブランディングの大きな役割です。

そして、その状態のベースとなるのが「ブランド」です。

「ウチの会社、○○がスゲーよな!」「ウチの会社の経営って、一本の軸が通てるよな!だからぜんぜんブレない!」「ウチの商品、○○に強みがあるよね。これは競合他社に負けない!」「ウチの会社って○○だよね!」などなど。

これら、自社の特長・魅力・強み・弱み・課題・愛すべきポイント・誇れるポイントなどが明確化され、なおかつそれが目に見えるように視覚化され、しかもそれが全スタッフに共有されて理解され語れる状態。

この状態を目指すのがブランディングであり、インナーブランディングです。

インナーブランディングから、「総務と人事が仲悪い問題」を見ると?


では、例に挙げた総務と人事が仲悪い問題」を、インナーブランディングではどう見れば良いのでしょうか?

総務Aさんと人事Bさんは犬猿の仲。口もきかなければ、目も合わせません。
こまったこまった。

でも、仕事はやらなくてはいけません。中には、総務と人事が連携しないと進まない仕事もあります。

でも犬猿の仲。連携なんてしたくありません。結局、放置。やらなくちゃいけないのに、やらない。
そのせいで、社内のあちこちから不満が続出します。そりゃそうですよね。

「仲良くしなさい!」と言って解決すればハッピーなのですが、そうは問屋が卸さない。
そこで「旗振り役」が必要になります。

総務と人事の板挟みなると分かりつつ、旗振り役として解決…はできなくても、仕事が滞らないように調整する。
その結果、ストップしていた採用がようやく動き出し、他の部署もその恩恵を受けられ、会社全体がスムーズに動き出す。

これが、まさに旗振り役によるインナーブランディングの結果です。

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インナーブランディングってめんどくさそうですね…

そうなんです。インナーブランディングはめんどくさいんです。「板挟み」「汚れ役」のオンパレード。

「総務と人事のいざこざ解決したくらいで、インナーブランディングなんて大袈裟だろ!」と言われることもしばしば。

でも実際は、社内調整に駆けずり回ったり、根回しに気苦労したり、不平不満をぶつけられたりします。

ある意味、損な役割です。
でも誰かがやらないと会社は前進しません。やっぱり旗振り役がいないと、いつまでもそのままです。

会社が定めた「ウチの会社はこういう会社だ!」というブランドがあり、「Googleを越える会社にするぞ!」と会社にとっての正しい方向に走るために、「総務と人事のいざこざ」を解決し、「一緒にGoogleを越える会社をつくるスタッフ」を採用していかないといけません。

総務と人事のいざこざ解決も、立派なインナーブランディングです。

社内の誰もやりたくない問題、見て見ぬふりをしたい問題。それはインナーブランディングと大きく関係し、旗振り役が解決しないといけません。

そして、この地道で一見インナーブランディングとは関係なさそうな活動が、ブランド浸透のベースとなるのです。

次回は具体的な実例で解説できたらと思います。

おしまい
和田 裕史:ブランドプランナー協会講師/ブランディングテクノロジー株式会社/コピーライター

一般社団法人ブランド・プランナー協会

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