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スタートアップ・ブランドに、本当にコンプライアンスは必要なのか?

こんにちは。ブランディング×弁護士の三浦です。コンセプトドリヴン・コンプライアンス」、たくさんの人に読んでいただきありがとうございます。Amazonのレビュー含め、温かい言葉を方々から頂き感激しています。読んでないよ!という方は、これを機会にぜひよろしくお願いします(笑)。Kindle Unlimited対象です。

さて、普段は弁護士としてコンプラや企業不祥事を主戦場にしている私ですが、実は事務所の「スタートアップ支援チーム」にも所属しています。そこで、今日は「スタートアップ・ブランドにコンプライアンスは必要か?」について考えてみたいと思います。

倫理的であること=差別化要素になる

例えば、Mintelが行った2015年の調査によると、アメリカの消費者のうち実に56%が、非倫理的な行動をとった企業の商品を買うのを止めると回答しました。しかも、そのうち約半数(27%)の消費者は、競合商品よりも値段が安かったとしても買わない、と回答したというのだから驚きです。

また、PwCの2022年の調査によると、家具・家電・自動車などの商品について「サステナブル(ここでは環境だけではなく、社会・ガバナンス要因を含みます)な商品であれば、値段が高くても買う」と回答したアメリカの消費者は36%、イギリスでは24%、中国に至っては何と46%にのぼります。

つまり、スタートアップ・ブランドが世界市場を見据えているのであれば、「倫理的であること」「サステナブルであること」は、重要な差別化要素といえるわけです。

日本の消費者は価格が全て?今は…ね。

ところが、日本の消費者は企業が倫理的であるかどうかをあまり気にせず、依然として価格を重視しているようです。先ほどのPwCの調査によると、家具・家電・自動車などの購入の際に、サステナブルであることを付加価値と認める人の割合はたったの12%、生活用品については5%しかいません。

つまり、「現在の日本市場」だけを相手にするのであれば、「倫理的であること」「サステナブルであること」はあまり差別化要因にならないといってよさそうです。

他方で、将来についてはどうでしょうか。上記の調査によれば、2022年までの過去3年間でESGやSDGsといった言葉の認知度は、4~5倍に跳ね上がったといいます。とすれば、これまでのように「日本の消費者は、とにかく安ければ買う」という前提で事業を計画すると、消費者行動を見誤るかもしれませんね。

スタートアップ・ブランドは、信頼されやすい?

冒頭のMintelの記事には、「自分たちは倫理的な行動をとっている」という企業のステートメントが、消費者にどれだけ信頼されるか?についても興味深いデータが記載されています。

記事によると、消費者の約半数(49%)は、小さな企業はステートメント通りに倫理的な行動を取っていると信頼する一方で、大企業のステートメントを信じる消費者は36%しかいません。つまり、コンプライアンスを差別化要素として機能させようとするのであれば、会社の規模が小さいうちの方がより効果が高いといえます。

スタートアップ・ブランドこそ、コンプライアンスに力を入れるべき

「コンプライアンスを差別化要素にする」という観点から考えると、スタートアップ・ブランドこそコンプライアンスに取り組むべきといえそうです。スタートアップの段階から、ブランドにコンプライアンスを”練りこんでおく”ことで、消費者に選ばれる優れたブランドに成長することができるわけです。

これは「高いお金を払って弁護士に契約書や規程類を作ってもらったり、法律研修をやってもらう」ことではありません。消費者はそんなことは見ていません。ブランディングの一部としてのコンプライアンスでは、まったく別のことを行います。その中身については、また別の機会にお話しします。


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