もう女の子を襲おうと考えたりはしない。 #未来のためにできること

1

「女子中学生10人と性交して懲役3年」

「16歳の女子に酒を飲ませ 5時間近くラブホテルで性交 懲役6ヶ月 裁判で『被告人に問う 被害者が何度もコンドームをつけて欲しいと懇願したことについて?』『特に意味はない』」

(世の中不公平だ。Hしてたかが懲役6ヶ月?3年?そんなんで戻ってこれるのかよ。僕はまたフラれた。童貞だ。生まれてからこのかた、同世代の女子に相手にされたことなんて一度もない。正攻法で駄目なら犯罪でいいんじゃないか)

2

「バカヤロー」

 2階の押入れに閉じこもる僕を、父はリビングから階段を駆けあがり僕の部屋に入りこむなり、押入れのドアを開け放ってビンタするなりそう言った。

 当時中学生だった僕は3年生になり部活を引退した。今まで坊主だったぶん、髪を伸ばしたかったんだと思う。食事中前髪が目にかかる僕を見て母が、「うっとうしいから切ってきなさい」と言う。僕はかたくなにそれを拒否した。父に何か言われると思った僕は一目散に自分の部屋の押し入れに閉じこもった。父が怖かった。
 父から言わしてみれば子供の教育は母任せ。その母が切れと言っているのだから切れ。理にはかなっている。それに······、

「お前には母さんの気持ちがわからないのか?」

 その言葉に心打たれた。ビンタされたほっぺがじんわり痛みを帯びた。そのことで僕の胸の辺りがカッと熱くなった。

3

 スーパーの裏口から女性が現れた。暗がりで顔はわからない。多分そうだ。影が少し歩いて自転車置き場で確信に変わる。そこには天井に明かりがある。その明かりに照らされて彼女の顔があらわになった。美しいとはもう思わなかった。Hがしたいとも思わなかった。もはや心のそこから生まれる殺意しかなかった。自転車にまたがった。急げ。さあ出発だ。

4

 土壇場で僕は平常心を取り戻した。家に帰ってスマフォでニュースを確認した。「女子大生19歳刺殺 被害者と加害者同じ大学で面識 SNSブロックされ殺意を覚える」と、あった。僕と全く同じケースじゃないか。紙一重だった。バカヤロー、あの時僕を叱ってくれた父に改めて感謝の意を表した。父さん母さんごめん。でも僕もう一度人生をやり直せるよ。ベランダに出て空を見た。真っ暗な夜空に星がいくつかあった。それを見て僕はなぜかほっとした。
 もう女の子を襲おうと考えたりはしない。そう心に誓った。
 僕は誇りを失ってはいけない。僕はこれからも誇りを失わず生きていく。

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