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【脳死は人の死ではない#5】「脳死が人の死」とどうして言えるのか?

脳死の実態はどうなっているのでしょうか? その現場の状況について調べてみたいと思います。

ウィキペディアの「脳死、読売新聞2006年12月15日・16日の「移植医療を問う (3) (4)」、2009年9月21日の「臓器移植法改正を考える」を見てみましょう。そこには、次の生々しい実態が示されています。

・従来、脳死になったら数日から一週間で心臓も止まると言われてきたが、1998年に米国の脳神経学者D・A・シューモンが統計的な大規模調査を行ない、175例が脳死判定後一週間以上、心臓鼓動していたことを明らかにした。臨床的脳死の状態で1年以上心臓が動いていた例が3例ある。最長例では21年間心臓が動き続けた。これは4歳で脳死判定された男性であり、この状態のまま身長が伸び、論文発表後も成長し20歳を超えた。2004年に死亡(心停止)した後に解剖されたが脳は死滅しており、人間の統合性は脳がなくても維持されることが示唆されている。

・大阪医大小児科の田中英高助教授は、1983年から2005年にかけて医学雑誌などに報告された国内の15歳以下の症例を分析。脳死か、脳死が強く疑われた114例のうち、心臓が30日以上動き続けた「長期脳死」が約3割を占め、2例は300日を超えた。脳死の診断後に自発呼吸が再開したケースも3例あった。

脳死判定後に人工呼吸器を外した脳死患者が、自発的に手や足を動かすという「ラザロ徴候」が知られている。1984年に米国の脳神経学者A・H・ロッパーによって5例が報告された。脳死患者が医師の目の前で、突如両手を持ち上げ、胸の前に合わせて祈るような動作をする。動作後は自分で手を元の位置に戻す。

脳死判定後、6年間心臓が動き、成長した7歳の男の子がいる。暑ければ汗をかき、排便時は顔を真っ赤にして踏ん張り、注射針を刺すと体をよじるという。また、瞳孔は開いたままで脳波もない交通事故に遭った男の子は、温かい手でギューッと握り返してあいさつしてきたという。

脳死と診断された5カ月の男の子が、診断6日後に自発呼吸が一時的に戻り、その後4年3カ月間生存していた。

・アメリカやカナダ滞在中に脳血管の病気で意識不明になった日本人で、家族らが現地の医師から「脳死」と説明されたにもかかわらず、帰国後に意識を回復した人が3人いた。また、ハワイで交通事故に遭って、医師から「全臓器の提供」を求められた女性は、1カ月余り後に意識を取り戻して帰国した。

「おいおい、脳死って死んでない、生きてんじゃん!」――これが最初の感想でした。今は、「脳死になれば、1週間以内に心臓が止まる」といったひと昔前の常識が、全く通用しないといいます。小松美彦教授の「私が脳死移植に断固反対する理由」で述べられている現実は、もっと生々しい。

 確かに、脳死判定の結果、脳死と宣告されても、まだその患者の心臓も動いているし体温も維持されている。だからこそ臓器移植が可能なわけだが、その体から臓器を取り出そうとすると、患者の体からは汗が噴き出し血圧もあがるなど、痛みを感じる時とほぼ同じような症状が見られるという。そのため欧米では、脳死者から臓器を取り出す際にモルヒネなどの麻酔を打つことが常識となっている。何と、死体が暴れることがあるので、死体に麻酔を打っているというのだ。暴れる死体が本当に死体と言えるのか。小松氏はそう問いかける。

ここまで来ると「これ何?まずいんじゃないの?」って感じになります。脳死患者の体は絶対に死体ではありません。痛みを感じ、汗が噴き出し、血圧が上がり、そして暴れるのは、“生きている”以外に考えられないのです。

こうした実態を知ってしまうと、「脳死が人の死である」とは絶対に言えません。もし言ったとするならば、それは不誠実というものでしょう。

そして、こうした臓器移植の現場とは何でしょうか。ドナー(臓器提供者)を生きたまま切り裂き、臓器を取り出すその現場こそ、まさに殺人・屠殺の現場に他ならないのではないでしょうか。「脳死患者を家族に見せないように」などと脳死では言われますが、臓器移植の実態など、しっかりと情報公開すべきではないでしょうか

このように脳死は、調べれば調べるほど人の死でないことが明らかになってきます。

臓器移植について言えば、ドナーが自分の意思によって、「その人を救いたい」という崇高な心で、自分の死と引き替えに臓器を他人に提供するなら、私は本当に素晴らしいことだと思います。しかしこのとき、臓器を提供することが、すなわち自分の死を意味することを知らなかったならば、これは悲劇なのではないでしょうか。ここでドナーは、自分が生きたまま肉体を切り刻まれて、臓器を提供しなければならない実態を理解すべきでしょう。

そして、臓器を移植される側は、その後の人生が免疫抑制剤による免疫力の低下から来る感染症との熾烈な闘いになる現実を知らなければなりません。臓器移植による拒絶反応を防ぐために免疫を抑えると、当然感染症にかかりやすくなって苦しむのです。また、移植した臓器で生きられる年数も限られているケースがほとんどで、決して長生きできるわけではありません。

こうした実態を考えるならば、脳死移植に大きなメリットはあまりないわけで、それは慎重を期して検討すべきものであって、拙速な推進は戒められるべきでしょう。


見出し画像は、渡辺健一郎さんの画像をお借りしました。ありがとうございます。

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