甘さと人類(雑記9 甘さの多様性3)

<メープルシロップ編>
いくつかの国で生産されているけどもその中で最も甘くて濃厚で旨いメープルシロップの主要生産国はカナダである。サトウカエデから採取されており、サトウカエデに穴を開けて採集して煮詰めて濃厚な味を作り出している。こんな風に。

メープルシロップの歴史は他の甘さを彩る食品と比較すると非常に浅い。農耕が開始される前の寒冷期のため氷床で繋がっていたユーラシア大陸とアメリカ大陸の架け橋であったベーリング海峡を渡って先住民はカナダへ進んでいった。欧州からの侵略が始まる前にも先住民はサトウカエから甘いものを採取していたかもしれないが文献があまり残っていないのでわからない。メープルシロップが採取されて市場に広がっていったのは18世紀の話である。

 楓のように自然的なものである植物を国旗に象徴として載せているカナダは非常に興味深い。楓の国旗は、森の恵みの甘み、長い年月をかけて形成された原生林、苦労した開拓、先住民との角質や強調、新しい国づくりのファクターが含まれている。多様性の中の統一をモットーとする国家なのである。多文化尊重主義であり、英国とフランスの抗争、アメリカの影響、先住民との摂政から生まれた中庸と寛容の精神が含まれている。

 宗教でいとフランスやイギリスの影響を受けており国民の約80%がキリスト教であり、キリスト教の歴史とは自然を野蛮なものと見なし、自然を克服して文明を発展させていったいわば自然的なものに価値を感じることと最も遠い文化とも言えるのだが、そのような国がこのような国旗にしたのは何故だろうか。
 1960年代に人種や民族、出身地によらない移民政策など人権法が可決され、連邦での公用語として言語の選択権が認められている。課題を残しつつも先住民こそがルーツであり、独自の文化を有する人達であり、そして彼らこそカナダが誇りうる存在なのだ という認識へと好転しているようだが、順風満帆ではなくケベックなどは独立を目指す地域でもあり、混沌としているし、対立も起きている。わかりやすい対立軸として、フランス的保守的なカトリック主義と革新的なプロテスタント主義、個人的自由主義的なイギリスと集団的フランスの自由主義、移民的な自然と切り離されたような強い父性に包まれたイデオロギーと厳しい自然と共に歩んでいた自然的で母性溢れるイデオロギー、経済優先主義と、自然主義。
 
 この国は北緯49°で人為的に区切られた巨大な土地がフランスやイギリス、アメリカの外的影響を強く受けてきた。経済発展に伴って国土が拡大されたのでは無く、巨大な空袋に中身を埋めることを急務として、経済発展や国防のために国外からの移民の誘致が不可欠だった。多様性がある国家は欧州の特に東欧の歴史を辿ると分裂してもおかしくないところだが、カナダは国家として各州で対立はするものの断裂はしなかったのは、まさに地政学的な理由も大きな要因であった。
 人類学的は、国土が小さいと、土地の管理が人の管理につながるため人の尊厳を守ことは後回しになるが、国土が大きい国は、人の管理が国家の管理につながるため、人あっての国であるため、人の尊厳の保証が重要となる。

 カナダ人といっても、ケベックはフランス的であり、オンタリオはイギリス的であり、バンクーバなどブリティッシュコロンビアは東欧やアジア、その他地域からの流入など、多様性に富んでいるし、先住民は天然資源や経済発展、教育法を自分達で管理する権利を求めているし、ポトラッチなどの儀礼などの禁止撤廃、漁労や伐採、狩猟の独占権などの要求をしており、経済資本主義と戦っている。

 労働者権利を訴えることができるのには、労働者の要求が経済発展を損なうという批判を受けることがないからと言われている。この思考法は非常に重要でこれがないと社会の不は地下に埋もれてマグマのように煮えたぎりいきなり爆発し大分裂を起こすのである。
 カナダとは対立が常に内在しており、この対立は国民統合の神話不在の結果とも言われているが、社会的権利の元に経済的権利の保証がされていることが対立を調和させることに繋がっているのだろう。というより権利を主張しあい、認め合い、許容し合い、調和をさせようと努力した証なのだろう。
 
いつからを伝統と呼び、どの程度馴染んだ文化を人々が誇りに思い尊厳を感じるかは人それぞれかもしれないが、移民ばかりの国でどれもが地政学的自然の成り行きで集まった人々にとって、自然発生的に生まれた文化を尊重することは自然を尊重することと同義なのだろう。甘さは人を欲望に見たし、人格をも変えた黒歴史もあるが、そんな危険な甘さ、自然的な要素を含んだカナダの国旗は興味深い。 


 メープルの甘さは自然をも尊厳あるものとして許容する象徴であり、多文化尊重の尊重の証なのである。欲望から少し距離をおいたものでありながらもメープルの甘さは人々を魅了し、多幸感をもたらす素晴らしい甘さの一つなのであった。


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