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アラカタアラタと読みます。長編が主眼ですが、不定期で世にも奇妙なモノガタリも。あなたの…

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アラカタアラタと読みます。長編が主眼ですが、不定期で世にも奇妙なモノガタリも。あなたの日常にちょっとしたデスソースを 《投稿作品の一部を無断で複製、転載、配信、送信すること、および内容を無断で改変・改竄することを禁止します。第三者への譲渡も不可です》

最近の記事

続•note創作大賞にむけて『真夏の絶望編』

7月。今年も室外機が溶けそうなほどの酷暑が猛威をふるっている。先月の時点ですでに真夏日を観測した地域に住む俺は、世界が音もなく崩壊してゆくのをただ傍観していた。劣化した新紙幣の発行、終わらぬ戦争、トランプにイヤリングの機会を与えた野田草履似の狙撃犯の凶行。 この世はすでに壊れたおもちゃで埋め尽くされている。俺もその歯車の一片にすぎない。 ジュースばかり飲んで育ったこどもは、味がしないからという理由で夏場でも水を飲めなくなっているという。そんな新世代を否定する気はない。俺も

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    • 『見えない目撃者』を目撃し見えたもの。

      たまたまネトフリで見た邦画サスペンス『見えない目撃者』がけっこう面白かったんですが、これが韓国版のリメイクと知り、サイコスリラー好きとしては原初を辿りたい衝動に駆られました。 オリジナル版(11年 韓国『ブラインド』)  リメイク版(15年 中国、19年 日本) 全3作を視聴し、比較しました。 というか中華版もあったのね… 結論から言うと、韓国版が抜けて良かった。 ついで、日本、中国という所感です。 この記事を開いた人はあらすじなどは説明する必要はないかと思うので割愛し

      • 新潟SF 裏不完全ガイド

        • イキモノのイレモノ[完結版]

        続•note創作大賞にむけて『真夏の絶望編』

        ¥100

          note創作大賞にむけて

          パスワードすら忘れてしまい、久々のログインをした自分の目に件のnote創作大賞なるイベントバナーが飛び込んできた。第3回だと? 情弱すぎて初めて知ったわ。そもそもこのnoteも、気晴らしで5000字ていどの短編を一昨年冬からぽつぽつと残すために使ってたわけなんだけど、早々にマンネリ感を覚え(小声)、昨年から参加してる某SF同人誌もイマイチ噛み合わないまま不満だけが募っていた。どうしたものかとなりつつある中、この賞は面倒くさがりにうってつけみたいな催しではないかとすこし興味を持

          note創作大賞にむけて

           ひびわれた瞳 ①

           仕切りガラスの向こうで節くれだった手が文庫本をめくるのを止め、プラスチックのカードの束を数えはじめると遠くから電車の走行音が聞こえてきた。下部にある小窓が開き、アルミ台の窪みから折り重なった万券がトレイと一緒にスライドされる。空は黒い雲の隙間からまだ青みがかった肌をのぞかせていた。土手を横切る群れからはぐれた一羽のカラスが、フェンスで囲われた駐車場で所在なさげにうろついている。  下唇にぬるい感触が走る。四方を山に囲まれた地特有のむせ返るような熱気の余韻が雨滴となり、店を後

           ひびわれた瞳 ①

          ホラー短編 ③ 廃墟マニア

             そう言えば、歯医者の予約をほったらかしてから半年も経ってしまったな、とアキラは口の中で溶けるチョコを転がしながら思った。バレンタインを過ぎ、30%オフで買った売れ残り、昔はひとつも貰うことなく終わるのが確定しているこの時期がわずらわしかったが、今はそれも感じなくなっていた。  感じる余裕など、とうに失せていた。 「心臓やぶりの坂だね」 「は? 冗談キツいぜ」    赤錆びたレンガ造りの小屋が立ち並ぶ坂。こんなところでへばっていたら先が思いやられる、とこぼすケンジ。き

          ホラー短編 ③ 廃墟マニア

          ホラー短編② 過脳暴威/Snow boy

          「ふー、ちょっと座り疲れたから席外していいですか? 飲み物も取ってきたいし、みんなもこのタイミングでトイレ休憩など、インターバル挟みましょう」  クリスマスが訪れ、年末までの七日間というのは、一年で最も早く時が過ぎる期間ではないだろうか。ぼくの住む地域はもともと雪深い所で有名だが、今年はケタ外れの豪雪に見舞われて、なかば強制的に引きこもるしかない状況に陥っていた。日本海側に到来した爆弾低気圧によって、インフラは遮断され、道を3本曲がった先にあるコンビニへ歩いて行くのに1時間

          ホラー短編② 過脳暴威/Snow boy

          ホラー短編① アマネ/AmanE

           玄関に人を入れるのは珍しくはないが、女が来るのは久しぶりのことだった。  何度も呼び鈴を鳴らしたけど反応がなかったので仕方なく玄関扉を開けて入ってきたらしい。古い家はあちこちガタがきているので不便ばかりだ。排水管のつまりで業者を呼んでいる最中だったので気づかなかったのもあるが、俺は唐突に現れた女に戸惑いを隠せなかった。ショートカットでスタイルの良い女だった。框の段差から俺を見つめる視線の高さに気を奪われていると、女は家の前に停めてある業者の車を指差した。 「トーラー、使

          ホラー短編① アマネ/AmanE