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振られたときの話。

彼と最後に恋人として会った日の帰り道、着信音がして足が止まった。内容は想像できた。こういうときばかり、私の勘は鋭い。

身体が熱くなって、血がどくどくと流れるのを感じた。画面を見るのが怖かった。覚悟はしていたけれど、本当にそうなるなんて思っていなかったから。
運命や永遠なんてものを信じていた。

でも、私の心は本当に不思議だ。
「もうどうすればいいかわからない」「別れよう」 この文字を見た瞬間に数秒前の気持ちが嘘だったかのように冷静になって、 「今までありがとう」 と迷わず返信していた。

動き出した自分の影にぽつぽつと黒いシミができて、空を見上げると雨が降り出していた。ドラマみたいなタイミングで私を打つ雨はとても冷たかった。

力が抜けて長い階段で何度も転びそうになった。周りの目ばかり気にしていた私が、すれ違う人に心配されるほど声を出して大泣きしていた。止められなかった。


蒸し暑い夏、信号待ちで足が震えた。このまま時が止まればいいと思った。車に轢かれて彼を後悔させたいとも思った。後ろで止まっていた足が私を抜いていく。ビーサンなんか履いてきたせいで歩くたびに足がびちゃびちゃになった。そういえば最近まともにお洒落もしてなかったな、なんて思ったり。身体が芯から冷えていった。


数え切れないほど一緒に歩いた道に涙が溢れて喉が痛かった。
この頃家まで送ってくれなくなったこととか、気付くべきことは他にも沢山あったはずなのに、どうして気づかなかったんだろう。
ごめんって、ほんとはすきだよって、追ってきてくれるのを期待して、ゆっくり歩いた。何度振り返っても彼の姿は見えなかった。


涙さえも出てこなくなった頃、やっぱり私が好きだと彼はLINEで謝ってきた。待ちわびていた言葉に嬉しさ、そして怒りが混ざった。
思えばいつもそうだった。本当に大切なことはいつも直接聞けなかった。けれど私は彼に依存していたから、すぐに復縁した。


一度崩れた形は元に戻らなかった。新しく築き直す方法も、幼すぎて知らなかった。どんどん悪くなっていく関係に比例して私のメンタルが壊れて、冷静さを失っていった。掴もうとすればするほど彼は逃げていった。


今思えば最初から間違っていた。
運命も永遠も、自分たちで創り上げていくものなのに、運命や永遠という力が私たちを守ってくれるのだと信じていた。あの時戻って素直に謝る選択肢もあったのに、諦めてしまった。一度落ち着いてよく考えるべきだったのに、距離を置いたら離れていってしまいそうで、縛り付けることだけに必死だった。


高校1年生の苦い夏の終わり。

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