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45話 結びの歌

墓守のドムはギュッと目を閉じ暗闇の中にいた。体の周りに集まる音の切れ端を掴んでいく。その音は少しづつ繋がり、そしてメロディーになっていく。ドムはその音階に自分の声を重ね歌を作っていった。
それは、墓から吹く風とドムとの声を結ぶ「結びの歌」だった。

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ルンクク ルンララ 歩き出せ
風と踊れ 夢の足
ルンクク ルンララ 飛び出せ
風と回れ 夢の指
ルンクク ルンララ 追いこせ
風と光れ 大空に

ルンクク ルンララ
踊れ 回れ  輝けっ!

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ドムの頬を風がなでる。戻ってきた風がドムの背中を押して、進めと言っている。ドムは風に導かれるまま道を進み、ようやく目を開くとそこは墓守が長年歌い続けた穴の前だった。

目に溜まっていた土も涙で流れ、声も歌った事で戻ってきた。

振り返ると、そこにはドムを見守るドミノが力強くうなづいた。

「僕、歌える」

ドムはそう言って背筋をのばし、子守唄を丁寧にゆっくりと歌い出した。

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片目で見た夢  甘い虹
眠った夢を食べたなら
歌う花に声を縫う
行きなさい  生きなさい
2つで1つ  可愛い星の子
1つで2つ  眠る星の子
私の見た夢  7つの空
はぐれた夢を追いかけて
彩の風に冷めた息
帰りなさい  忘れなさい
2つで1つ  光る星の子
1つで2つ  先の星の子

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ドムの歌が歌い終わると同時日は沈み、夜の始まりを告げた。

ドムは力が抜け、その場に倒れ込んだ。
ドムのポケットから不機嫌顔のミィと小さなチィが転がり出てくる。

「お疲れ様でした」

ドミノがドムに手を伸ばす。

「僕、ちゃんとできた?」

ドムの言葉にドミのも、ドミノの肩に乗っていたラルーも笑顔でうなづいた。

「よかった」

ドムはそのままそこに寝転び息を整えた。
墓から流れる風は安定している。
目を開きドムは目の前に広がる星空に手を伸ばした。

「今にも降ってきそう」

新しい墓守のドムは無事初役目を終えた。
星が散りばめられた夜空にドムは歓迎されていた。

つづく

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