![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/21091335/rectangle_large_type_2_4343ae14d46e9e0d57020b1dd9fedfe7.png?width=800)
45話 結びの歌
墓守のドムはギュッと目を閉じ暗闇の中にいた。体の周りに集まる音の切れ端を掴んでいく。その音は少しづつ繋がり、そしてメロディーになっていく。ドムはその音階に自分の声を重ね歌を作っていった。
それは、墓から吹く風とドムとの声を結ぶ「結びの歌」だった。
______
ルンクク ルンララ 歩き出せ
風と踊れ 夢の足
ルンクク ルンララ 飛び出せ
風と回れ 夢の指
ルンクク ルンララ 追いこせ
風と光れ 大空に
ルンクク ルンララ
踊れ 回れ 輝けっ!
______
ドムの頬を風がなでる。戻ってきた風がドムの背中を押して、進めと言っている。ドムは風に導かれるまま道を進み、ようやく目を開くとそこは墓守が長年歌い続けた穴の前だった。
目に溜まっていた土も涙で流れ、声も歌った事で戻ってきた。
振り返ると、そこにはドムを見守るドミノが力強くうなづいた。
「僕、歌える」
ドムはそう言って背筋をのばし、子守唄を丁寧にゆっくりと歌い出した。
________
片目で見た夢 甘い虹
眠った夢を食べたなら
歌う花に声を縫う
行きなさい 生きなさい
2つで1つ 可愛い星の子
1つで2つ 眠る星の子
私の見た夢 7つの空
はぐれた夢を追いかけて
彩の風に冷めた息
帰りなさい 忘れなさい
2つで1つ 光る星の子
1つで2つ 先の星の子
_________
ドムの歌が歌い終わると同時日は沈み、夜の始まりを告げた。
ドムは力が抜け、その場に倒れ込んだ。
ドムのポケットから不機嫌顔のミィと小さなチィが転がり出てくる。
「お疲れ様でした」
ドミノがドムに手を伸ばす。
「僕、ちゃんとできた?」
ドムの言葉にドミのも、ドミノの肩に乗っていたラルーも笑顔でうなづいた。
「よかった」
ドムはそのままそこに寝転び息を整えた。
墓から流れる風は安定している。
目を開きドムは目の前に広がる星空に手を伸ばした。
「今にも降ってきそう」
新しい墓守のドムは無事初役目を終えた。
星が散りばめられた夜空にドムは歓迎されていた。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?