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僕たちは、曖昧で戸惑うばかりの今日をどうにかやり過ごしている。過ぎて行った昨日は、砂浜…

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僕たちは、曖昧で戸惑うばかりの今日をどうにかやり過ごしている。過ぎて行った昨日は、砂浜に打ち寄せられた虹色の貝殻のように濡れた輝きを残し、まだ知らない明日は、閉じた瞼に映る影絵のようにぎこちない希望に満ちている。 ー今日の成分のほとんどは、昨日の名残と明日の気配でできているー

最近の記事

1/4の確率は特別だろうか。

確率って何だろうとよく考える。パーティでビンゴになる確率、じゃんけんで勝つ確率、宝くじの確率、etc。

    • 灯台

      白い灯台の下にいれば、 白い灯台のその下にいれば、 鬱蒼とした森が僕を隠してしまおうとしても、 鬱蒼とした森が僕を呑み込んでしまおうとしても、 あなたが見つけてくれるような気がして、 ここを離れられずにいるのです。 白い灯台には、魔法があるわけではなく、 白い灯台は、ただいつもそこにあるということだけで、 動かずに、いつもそこにあるということだけで、 僕を安堵させてくれるのです。 あなたは、僕を捜しているわけでもなく、 もちろん、白い灯台を探しているわけでもなく、 ご飯を

      • MAY

        人々の願いごと 数えられない数 アスファルトに澱んでる 流れることない 雨 いっそう強くなるその音に 小さな声を重ねてみる 欠けたドットさえない 不感の空間 最果ての手許近く 消えることない 闇 自らを触れ 足を鳴らし 手を叩き 叫んでみる 重力によって落ちてゆく 無力の指先 部分的な震えが続く 辿り着くことない 愛 零れるものを動機として 突き刺してみる白い肌に 足下はぬかるみ 始まりは彼方 雨上がりの空 一部から 滲むことのない 白 指先の向こう側に 確かに風が見え

        • あなたのいないそのまちで

          「あなたのいないまちで」 余白として残された道を歩いてみる。 「あなたのいないまちで」 観覧車がひと回りするのを待っている。 あなたがいないそのまちは、 パリのように薄い色、 喧噪が互いを相殺して静まりかえる。 丸善の文房具売り場には、 エッフェル塔の絵はがきがあって、 あゝ、ヘプバーンが盗んだ塔は、 こんなところにあったのかと安心する。 あなたを盗んだのは誰ですか。 このまちは、やがて完全に色を失い、 観覧車も止まるはず。 あなたのいないそのまちで、 ぼくはそれを確かめ

        1/4の確率は特別だろうか。

          恋をする

          気になる 話をする 好きになる 知りたいと思う 知って欲しいと思う 時々 心が通じる でも ひとりの人にはならない テレビを見る お菓子を食べる 石を投げる 大声で叫ぶ 旅をする お酒を飲む 薬を飲む 忘れる 思い出す 忘れる 思い出す 忘れる 思い出す 忘れる 思い出す 思い続ける かってに 思い続ける

          恋をする

          ai ha

          「アイハ ドコニアリマスカ?」  薄汚れた時間を纏った旅人が尋ねた。 「ai ha doconi arimaska」  村の若者は答えた。 「アイハ?」  旅人は、言葉を重ねた。 「ai ha」  若者も繰り返し答えた。 「Ai ha?」 「Ha Ha Ha Ai Ari Maska」 「Hahi Hahi Ahi Ahi Doriconia Maska」 旅人は、ここにも、  アイはないことに落胆し、  村はずれの道を去っていった。 若者は、 首をかしげながらそ

          境界と相似形

           ショッピングモールのコーヒーショップ。大きなガラス窓の向 こう側で、重力の隙間を探すように枝を広げる樹木を眺めて いると、ある瞬間、それは反転して、空の裂け目の黒い傷で あるかのように思えてくる。  「(この世界に存在するすべての生き物という意味で)私た ちはみな、内在する自己というエネルギーと外側にある他者 としての重力の境界で形をなしている。また、その様は、すべ て相似の関係にある。」そんなことが頭に浮かぶ。  境界とは、はじめに存在するのではなく、多方からのせめぎ 合

          境界と相似形

          Sanctuary

           斑模様の腹から痩せた乳房を垂らした犬はアスファルトから吹き出す植物の中、一定の距離を保ちながらこちらの様子を窺っている。近づこうとすると、その分だけ平行移動を繰り返し、コンテナヤードの一角に積まれた木材の奥へと姿を消す。  しばらく待っていると、転がるように飛び出してくる二匹の子犬。まるまるとしてふさふさの濃い灰色の毛、瞳にはまだ疑いの光がない。しっぽを振りながらフェンスの隙間を潜り、道路と歩道の境をなす段差を下りて僕の方へ近づこうとする。  遠くで注意深くそれを見ている母

          夜の粒子

          君の記憶は混乱している きっとそれは  夜のせい 虹色の光は 君のつく嘘よりよくできた虚構 開ききった花のミニドレスは 動脈を打つ血に似て紅い 君は夜に生かされている 赤ワインにジンジャエール  それに、氷ひとつ その甘さは夜そのものではないか 夜はやがて消えていく  黒い粒子は日に溶かされ、 白んだ朝がやってくる 君もやがて消えていく  夜の粒子がなくなれば、 その曲線は放たれ 甘い香りと紅い花が残るだけ

          夜の粒子

          彼方

          時の流れのその向こう  銀色鳥の鳴く森の  小径に落ちた影踏みて  昨日のことを解きみる 澱みの中より羽根拾い  指で回してみたとして  光らぬものを日に翳し  空に帰れと投げ上げる 七色花の日にもがれ  褪せた肌に脈の痕  彼方に越えてきたものを  今日の私が焼き払う 銀色鳥のちかちかと  空のひとつになりにけり  月読丘の天辺に立ち  届かぬものに手を伸ばす 私を集めて流れを濁す  彼方を集めて火に翳す  喪い続ける切なさを  夜の粒子がまた埋める

          胸の前で両手を重ねる  祈るように手を合わせるのではなく 軽く握った右手を胸において  包むように左手を重ねる  ちかごろ、 無意識にそうしていることに気がつく

          叙景(後半)

          いつも赦される  幼子の罪のように  灯台の白だけが  収束する光を再び拡散し  何かを見つけようとする私を  諦めさせる 時が消し去ろうとするものは  昨天の輪郭と  その中へ沈んでゆく  いつかの面影 風になびく髪は 島景に重なり  振られる手と手が  重なることはない 定期船は繰り返し  互いを隔て 島はいつも残される 叙景  いったん離れれば  二度と合うことのないものを 高まっていく船尾の潮を糸として  とんとんと揃えて  綴じようとする

          叙景(後半)

          叙景(前半)

          風がふいている  すべてを揺らすことで  すべての均衡を保つために 過飽和の水蒸気が  空と海の境界を曖昧にして  この世界を平面にする 飴色の崖から  無垢で脆い石灰の肌が  日々と共に崩れ落ちる 旅立ち前のツバメは  翼の確信を得るために  低空飛行で折り返す 伏せられた水槽の中で  CO2 を分け合う植物たちが  証のように水滴を広げる 零れ落ちる花びらに似て  マダラチョウは  三次元に翅を揺らす 少女を見守る  老人の曇った瞳に  一瞬、青が戻る

          叙景(前半)

          祈りによって

          何れにしても  旅は続けなければならない  終わりにたどり着かなければならない 岸を離れた舟は流されていく  櫂を漕ぐ力ではなく  祈りという重力によって 両岸に蔓延る植物は  ざわめく時の具象のように  漂う舟を眺める 突然の嵐が空をおきかえ  稲妻として落ちてくる  天声が可視となる 舳先に降りた蝶が  翅を揺らしながら  最後の案内をはじめ  押し返そうとする波も  無力さを知る 海は近い 潮風が髪を揺らし  瞳に無垢のカモメが映るとき  ひとつの覚悟が竟の舵を切らせる

          祈りによって

          マッテイル

          従順であろうとする籠の鳥は  籠の扉が開いているのに  気づかないふりで鳴いている いつも冷静な窓辺の植物は  そのことを知っていて  余所見している 蛍光灯が日かりより  悲しみを露わにし  ポテトチップスの塩味が  異物みたいに尖った夜  時間機械は速度を上げる 野に放とう 小鳥はマッテイル  私の手でのみ  もとの空に還るために 私はマッテイル  彼方の導きを  新たな羅針とするために 壊れ続ける明日を  零れ落ちる今日を  愛しむことはやめにして 振られる

          マッテイル

          Self and Others

          * 風景と記憶  自己と他者  内在と対象  シニフィアンとシニフィエ  それらの境界  私たちの身体  エクリチュール *

          Self and Others