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祈りによって

何れにしても 
旅は続けなければならない 
終わりにたどり着かなければならない
岸を離れた舟は流されていく 
櫂を漕ぐ力ではなく 
祈りという重力によって
両岸に蔓延る植物は 
ざわめく時の具象のように 
漂う舟を眺める
突然の嵐が空をおきかえ 
稲妻として落ちてくる 
天声が可視となる
舳先に降りた蝶が 
翅を揺らしながら 
最後の案内をはじめ 
押し返そうとする波も 
無力さを知る
海は近い
潮風が髪を揺らし 
瞳に無垢のカモメが映るとき 
ひとつの覚悟が竟の舵を切らせる
自分に背き 世界に従うこと
旅は続けなければならない 
櫂を漕ぐ力ではなく 
祈りという重力によって

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