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路上園芸

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2018年12月の記事一覧

酒屋のおじちゃんの園芸事情

酒屋のおじちゃんの園芸事情

このnoteで2016年の記事に、酒屋さんの植木鉢を定点観測していた記録が残っている。
以前住んでいた家の近くにあった酒屋さんだったのだが、お酒だけじゃなく、お菓子や野菜、ちょっとした食料品や日用品を売っているよろづ屋のような感じで、夜遅くまで空いていたので、わりかしよく立ち寄っていた。

ある日、窓際に置かれていたクワズイモの植木鉢の根元に、突然じゃがいもとサツマイモが置かれていた。
「え?

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散歩

散歩

路上観察というか、散歩したり、街を歩いて写真を撮ったり、特定の対象物を鑑賞するのが好きな人どうしで話していると、「こんど歩きましょう!」っていう言葉で締めくくることがある。
「こんど飲みましょう!」みたいな感覚で「こんど歩きましょう!」が合言葉になるのって、散歩好きならではなんだろうか。

広辞苑で「散歩」を引いてみると、「気晴らしや健康のために、ぶらぶら歩くこと。散策。」とある。

Wi

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台湾の路上園芸

台湾の路上園芸

街中の園芸に興味があって、という話をすると、これまで何人もの方から「台湾はすごいよ」というタレコミ情報をいただいた。
ここ数年、手帳や携帯のメモ帳に「台湾に行きたい」と、うわ言のように走り書きしては、台湾への思いを募らせてきたが、今年、ありがたいことに二度も訪れる機会があった。
結論から言うと、台湾は路上園芸天国だった。

今年訪れたのは台北。台湾の北部だが、気候は亜熱帯。何といっても植物の勢いが

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造園・園芸・雑草

造園・園芸・雑草

路上で見られる植物を出自で分けると、計画して植えられた植物、個人が育てている植物、勝手に生えた植物がある。
石川初さんは『思考としてのランドスケープ 地上学への誘い』(LIXIL出版)の中で、それらを「造園」「園芸」「雑草」と区分している。

造園=制度によって配置された公共物としての植物。材料として植えられる植物は、ある程度の条件や傾向がある。

園芸=そこに住む人が個人的に育てている植物。

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路上で営まれ、育まれる園芸

路上で営まれ、育まれる園芸

高校時代まで福岡で過ごし、北海道で大学生活を送った。
上京して下町の路地を歩いた時、軒先に所狭しと並ぶ植木鉢に圧倒された。

生まれ育った福岡や、学生時代を過ごした北海道では、ここまで路地をめいっぱい使って園芸活動する光景は見かけた記憶がなかったのだ。
植木鉢は、設置場所を選ばないポータブルな庭とも言える。とりわけスペースに限りがある都市部では、様々な事情で「庭」が路上にはみ出す。

建物の軒先や

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街中の野生

街中の野生

半年ほど前から、ひょんなきっかけで猫と暮らしはじめた。
これまで動物を世話した経験がほぼ皆無。植物も見るのは好きだけど、いざ育てようとするとことごとく枯らしてきた。
こんなズボラな自分に果たして猫など受け入れられるのだろうかと不安だったが、いざ一緒に暮らし始めると、「飼う」「世話する」というよりは、同じ空間でそれぞれ自由に生活している感じなので、ちょっと拍子抜けした。

猫の行動を目で追っていると

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意識・無意識のはざま

意識・無意識のはざま

街中にあるものを、「意識されたもの」「無意識に存在するもの」という観点で観察してみる。
建物、信号機、ガードレールなどは、法律等に則り、あらかじめ計画・意図され、意識され設置されるものだ。
また、個人邸の軒先にある植木鉢や、「チラシお断り」といった貼り紙は、住人が意図して設置したものだけれど、あくまで私的な行為として設置されるもの。
ひとくちに計画して設置されたものといっても、公共的な意味合いが強

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