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#境界性パーソナリティ障害
ボクは愛に殺される①
【プロローグ】
……暗く、ただ暗く、虚しい時間が流れている。
どこだろう、ここは。
何もなくて、何も見えなくて、それに…
動けない。
圧迫感? まるで闇に一人、ぎゅうぎゅう詰めにされてるような。
怖い。恐い、こわいコワイこわい………
独りでここにずっといるなんて。苦しい。
──そっか。
これはきっと。
自分で自分の命を絶った『罰』なんだ──
ボクは愛に殺される②
【一章】
ボク。ボクという人間。
小さい頃から、新しい遊びを考えたり、誰よりも大きな声で笑い、
叱られれば誰よりも泣いていた、創造性と感受性に長けた人間だったと思う。
今までに4度くらいお付き合いした異性がいるけれども、別れた時は、必ず三日三晩は泣いてたし、ご飯も飲み込めなくて吐いてしまう、
実際にそんな人間だ。
でも、どうしてだろう。
最近、誰と距離を縮め、離れることがあっても。
どん
ボクは愛に殺される③
【二章】
ある時、ボクが作曲の先生に曲を流して聴いてもらっていた。
ボクは学校でよく思われてないみたいで、みんなとの付き合いを諦めていた。
だけど作曲に関してだけは誰よりもストイックにやろうと思って、いかなる批判も覚悟して、誰よりも曲を先生に聴かせに通った。
運命の出会いってこういうことを言うのかな?
見知らぬ…同性の…先輩?が、曲を流しているのを熱心に見ていた。
それも、何曲も、何十分も、
ボクは愛に殺される④
【三章】
学校には、毎月企業から『学生の自由な発想で曲を作ってほしい』と、作曲の案件が舞い込んでくる。
うちの学校では、その案件に対し、作曲専攻の先輩から同級生、後輩と世代関係なしに10人程度のチームを自由に結成し、
学校内全ての作曲チームと作曲で戦う、コンペ形式で取り組んでいた。
まるで曲作りのバトロワみたいだ。
実力主義の場面では、ボクは珍しく評価され、
先輩たちにも編曲や発想力の面で頼
ボクは愛に殺される⑤
【四章】
『すごく難しいものと戦うんだね、頑張って!』
月の励ましに癒され、鼓舞され、ボクはPC上で音を紡ぐ。
行き詰まっても親友や月がボクを応援してくれる。
そんな心の支えは、ボクの作業スピードと集中力に拍車をかけた。
3時間後。デモソングは完成し、ボクの生演奏でメロディを録音した。
理論を駆使し、理論を詰め込み、理論で心を揺さぶろうと考えに考え抜いたこの曲は、
確かにシンプルながら聴き心地
ボクは愛に殺される⑥
【五章】
『いい音が録れたね!楽しかったみたいでよかった。』
その音に月も喜んでくれたし、チームのみんなも絶賛してくれた。
ボクも親友も録り音に満足している。
残りのお菓子を開封しながら、曲をさらに高める工夫を考える。
そうだ。心を揺さぶる音楽。
ボクが表現したい音を一番わかりやすく聴衆に届ける手段─つまり、ボクの生録音で録ろう、と発案した。
のちに発案はチーム内で大好評を博し、そのままコ
ボクは愛に殺される⑦
【六章】
涙なんて一週間もあれば止まる。
苦しいなんて1ヶ月もあれば麻痺する。
でも、誰かが言ってた。
"死んで本当の地獄を見るのは
死んだ本人じゃない。
周りに取り残された人だ。"
過剰服薬は、止まらなかった。
一ヶ月も二ヶ月も、止まることはなかった。
『私には支えられない。ごめん』
月も、ボクの世界から消えた。
『私には病んでる人の気持ちがわからない。
同じ病んでる人の方があなたを
ボクは愛に殺される⑧
【七章】
感受性が、死んだ。
1人が、耐えられなくなった。
自分が、わからなくなった。
そんな時、ボクを救ってくれたのは、
いつも、ボクが愛した人だった。
愛ってなんだろう。
多分、理屈で考えることじゃない。
そばにいてくれるのが嬉しくて、その人のためならどんな負担でも受け負って、
何かしてあげられたらいいなと思う。
世界中の全員が愛する人に刃を向けたとして、
それでもボクは愛する
ボクは愛に殺される⑨
【八章】
みちゃんは、我はそこまで強くないが、
自分の世界が、特に愛することへの考え方が、人一倍しっかりしている人だ。
なにに関しても責任感を感じすぎて完璧にやりすぎてしまう、その性格からきている…というにも、なんだか違くって。
でも、一途で、好きな人を心から応援して弱いところまで包み込める、
そんな慈愛に溢れた恋愛観が、とても綺麗だと思った。
ボクは、最近愛の価値がよくわからない。結局傷
ボクは愛に殺される⑩
【九章】
みちゃんに会って、みちゃんと話して、
みちゃんと愛し合って、みちゃんと笑って。
みちゃんと泣いて、みちゃんに傷つけられて。
みちゃんが自分を責めないように、平気なフリをし続けて。
愛してる人だから、心の闇まで、精神疾患の闇まで、腕の傷まで、解離まで、
怖い破壊人格さんとのやり取りまで、
全部全部、愛してる人だから、
全部全部、その人の一部だから。
ボクはただ愛していればいい。
ボクは愛に殺される(完結)
【十章/最終章】
結局、人間という生き物は、
代償なしには何かを得られないのかもしれない。
ボクの身の丈に合わない幸せを得たから、
こんな地獄に突き落とされたんだ。
ボクはこの先、この世界で、どう生きていけばいいんだろう。
ここには何もない。
誰もいない。
好きな人も、嫌いな人も、誰もいない。
白い光が、天から差し込んでいる。
ボクは地獄じゃなくて、天国に行く人間だったのかな。
なん