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ご馳走はインスタントの味?

こんにちは。ぼーんぐんです。

今から8年ほど前の出来事です。

「日本人の伝統的な食文化」いわゆる「和食」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことを、みなさんは覚えていらっしゃるでしょうか。当時大々的にニュースに取り上げられましたので、私は何か誇らしい気分になった事を覚えています。

今、東京では五輪真っ盛りですが、みなさんはその「和食」の特徴について、海外の方に説明できるでしょうか。

「和食」には次の4つの特徴があります。
・地域に根差した多様な食材を用い「素材の味わい」を活かしている
・一汁三菜を基本とする理想的な「栄養バランス」が健康に役立っている
・季節に合った「調度品や器を利用して季節感を楽しむ」
・「年中行事と密接に関わり家族や地域の絆を深める」

旬の素材が持つ本当の味を引き出し、特徴的な器に盛りつけ季節を楽しみます。正月の重組みされたおせち料理はその代表格ですね。日本の様々な行事と共に家族の絆を深める中心的な役割を果たす料理。それが「和食」です。

その和食文化が古来から日本にはありました。その地域に伝わる料理、その家に伝わる味を親から子へ行事と共に引き継がれていたのです。

しかし戦後、欧米の価値観と食文化の輸入と共にやがて変質していきます。家庭の台所環境も経済発展と共に大きく変化しました。電気冷蔵庫や都市ガスの普及と流し台の整備等により、それまで温度管理が難しかった炒め物や揚げ物が手軽に作ることができるようになりました。それらによって地元でとれる野菜中心の食事から、肉や牛乳に多く含まれる動物性蛋白質と脂肪が多い食事へと変わりはじめ、それと対照的に伝統的な”コメ”(炭水化物)の摂取量が減りました。そしてその後の外食ブームです。ファミリーレストランやファストフード店が続々と登場し欧米食がより身近な存在になってきたのです。

また、器用な日本人はインスタント食品、レトルト食品、冷凍食品も開発しました。電子レンジの普及もあいまって「簡単」「短時間」「手間をかけない」調理が一般家庭で好まれるようになってきたのです。

短時間煮る、湯を加える、水や牛乳を加えて冷やすといった単純な操作で、料理が完成する時代の到来です。いつでも簡単に食事ができるのは便利ですが、食品を保存加工すると栄養成分が減少し、風味も食感も変わってしまいます。その風味をおぎなおうとすれば、味つけがどうしても濃くなります。

そうして出来上がった現代の一般的な日本人が好む料理は、はっきりとした味、濃い味付けのものが多く流通するようになってきています。中には栄養バランスを欠いた偏った食事が、耐久性に優れたプラスチック系の食器類に盛られて提供されます。そしてその料理を 1 人きりで食事をする個食(孤食)も増えてまいりました。

現代の食事は「好きな時に」「好きなものを」「好きなだけ食べる」しかも他人に気を使わいでいいからと「一人で食べる」時代の様です。スマホ片手の会話のない食事です。

保存技術の高まりと、輸入食材の多様化で、もはや”旬”は存在していません。私たちは既に食材・料理の良し悪しすら判断できない”舌”になってしまったのかもしれません。

そこで私たちが頼るのは、世界的に有名な外国企業の選んだ飲食店の評価本です。もしくはネットの口コミ評価によるものかもしれません。判断基準を他人に求め流行に乗ることで満足しているのかもしれません。

食の多様化、時代の変化、世代間の価値観の違いなどから以前のように食文化の継承が難しくなってきている部分も仕方がないのかもしれません。古来からの年中行事の代表格の”おせち料理”も有名店のネット購入が今どきです。母から子への大切な料理や味の継承の機会ははなくなりつつあります。

”日本人に蔓延する失敗したくない病”は何も若者だけに限ったことではありません。マニュアル世代と揶揄された世代が親となり子を育てます。失敗からの学びのないまま要領だけが受け継がれますから料理の本質が伝わりません。

またレシピ本からは基本は学べますが、行間のストーリーは読み取れないんです。誇らしく感じた「和食」のユネスコ無形文化遺産登録が、だんだんと絶滅危惧種のメダカのごとく、頼りなく愛おしいものに感じます。

・素材の味わい
・栄養バランス
・調度品や器を利用して季節感を楽しむ
・年中行事と密接に関わり家族や地域の絆

私は「和食」の4つの特徴を覚えておくことにします。それは日本へ観光目的で訪れる外国人へ説明する為ではなく、現代に生を受け成長する未来の日本人へ、先人の知恵が詰まった世界に誇れる文化を持っているのだと、しっかり説明が出来るように。

そして自らは「和食」を味わえる舌を失わないようにしたいものです。

日本が大好きですから。
美味しいものが大好きですから。

さあ、みなさんの舌は大丈夫でしょうか。

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第三回:ご馳走は郷土の味
https://note.com/booooooongun/n/na4341adb419a

第五回:ご馳走はコンビニの味
https://note.com/booooooongun/n/n65849ca2e5ef

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