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『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII』岸見一郎、古賀史健

概要

『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII』は、ベストセラー『嫌われる勇気』の続編で、哲学者アルフレッド・アドラーの心理学に基づいた思想を対話形式で展開しています。本作は、青年が教育者として成長を試みる中で「アドラー心理学」を実践し、直面した問題を通じて「本当の教育とは何か」「幸せとは何か」を模索していく物語です。特に「尊敬」の重要性や、「課題の分離」といったアドラー心理学の考え方を、教育や人間関係に応用する方法が深く掘り下げられています。教育者や親、リーダーなど他者を導く立場の人にとって、日常生活や仕事に役立つ具体的な指針を示してくれる一冊です。哲学者と青年の対話を通じて、読者自身も人生の問いを追体験できる構成になっています。

本のジャンル

自己啓発、心理学、人生論

要約

1. 教育の本質:尊敬と自立

『幸せになる勇気』の中心テーマの一つは、教育の目的です。哲学者は、教育の究極の目標は「自立を促すこと」であり、それを達成するためには「尊敬」が必要不可欠だと語ります。

青年は教育現場で、アドラー心理学を取り入れた「褒めない」「叱らない」教育を実践しますが、クラスは荒れ放題になります。その原因は、青年が子供たちを「本当の意味で尊敬していなかった」ことにあると指摘されます。アドラー心理学における尊敬とは、相手を「唯一無二の存在」として認め、その人がその人であることに価値を見出すことです。

たとえば、子供が何か悪いことをしたとき、それを単に叱るのではなく、その行動の背景や理由を理解しようとする姿勢が重要です。また、「自分の価値観を押し付けず、相手の価値観を受け入れる」ことが、教育者としての基本的な態度だとされています。

2. 課題の分離:他人の問題に介入しない

アドラー心理学の重要な概念の一つに「課題の分離」があります。哲学者は、「人生のあらゆる問題は『自分の課題』と『他人の課題』に分けられる」と語ります。教育においてもこの考え方が適用されます。

例えば、子供が勉強しない場合、その結果(テストで良い点が取れない、進学が難しい)は子供自身が引き受けるべき課題です。一方で、親や教師は、子供に知識を提供し、学ぶ環境を整える「援助者」としての役割を果たすべきであり、それ以上の介入は控えるべきだとされます。このように、課題を明確に分けることで、教育者が過干渉になることを防ぎ、子供自身が自分の人生に責任を持つ力を育むことができます。

3. 他者の関心事に関心を寄せる

哲学者は、「相手を尊敬するためには、相手の関心事に関心を寄せることが重要だ」と強調します。青年は、子供たちが蟻の行列を観察したり、大きな葉っぱを集めたりする姿を見て、それが無意味でくだらない遊びだと感じますが、哲学者はそれを否定します。

相手の関心事を理解しようとすることこそが、尊敬の第一歩だといいます。例えば、仕事の場面で部下が独自の方法でタスクを進めているときに、それをすぐに否定するのではなく、彼らのやり方や考えを理解しようと努めることが重要です。

4. 人間関係の三角柱:「悪いあのひと」と「かわいそうな私」を超える

本書では、人間関係の問題を整理するためのツールとして「三角柱」が登場します。この三角柱には3つの面があります。一つは「悪いあのひと」、もう一つは「かわいそうな私」、そして最後の面が「これからどうするか」です。

人は、問題が起きたときに「誰のせいか」を議論しがちですが、それでは根本的な解決には至りません。哲学者は、「これからどうするか」に焦点を当てることで、建設的な議論や行動が生まれると説明します。

たとえば、職場でのトラブルを考えてみましょう。同僚のミスによって仕事が遅れた場合、「あの人が悪い」と責めても解決にはなりません。一方で、「これからどうすれば遅れを取り戻せるか」を話し合うことで、より良い結果が生まれるのです。

5. 教育者と被教育者の対等な関係

哲学者は、教育者と被教育者の関係を「対等な関係」として捉えることを提唱します。これは、教師や親が「教える側」「上に立つ側」として権威を振りかざすのではなく、対話を通じて相手の自立をサポートすることを意味します。

この対等な関係は、単に教育現場だけでなく、家庭や職場、友人関係にも応用できます。対等な関係を築くためには、相手の意見に耳を傾け、その考えを尊重する姿勢が必要です。

まとめと感想

『幸せになる勇気』は、前作『嫌われる勇気』以上に深く、アドラー心理学を実生活にどう応用するかを考えさせられる内容でした。特に、「尊敬」の概念や「課題の分離」の考え方は、日常の教育や人間関係に役立つ具体的な指針を与えてくれます。

本書を読んで特に印象的だったのは、「他者の関心事に関心を寄せる」というシンプルながらも実践が難しい教えです。自分の価値観を押し付けず、相手をそのまま受け入れることの重要性を改めて実感しました。また、三角柱の考え方も斬新で、「これからどうするか」に焦点を当てる姿勢は、個人的にも試してみたいと思いました。

ネット上でも「人生を変える一冊」として高評価を得ているこの本。哲学的な内容ながらも、日常に落とし込める実践的なアドバイスが満載です。あなたの人生や人間関係を一歩前進させるヒントが見つかるでしょう。

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