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大人向け? 子ども向け?

「巷に雨の降るごとく、我が心にも雨ぞ降る」

ランボー(怒りのアフガンではなくフランスの早熟詩人)の本を読んでいて上記の一節を思い出しました。でもこれ、彼の詩ではありません。数年間共に旅をし、一緒に暮らした彼を銃で撃って牢獄に入れられたヴェルレーヌの作品です。牢の中でランボーを想って書いたとか。

私がこの詩の存在を初めて知ったのは、子どものころに見たアニメ「機動新世紀ガンダムX」です。作中の台詞が各回のタイトルになるという洒落た作りになっていました。次回予告を兼ねたエンディングの最後でキャラクターが台詞を言うのです。「巷に雨の降るごとく」は第九話でした。

しかもすっかり忘れていたのですが、件の一言を発した医師テクスは「ランボーの詩だったか?」と続け、「いや、ヴェルレーヌだ」と返されているのです。忘れていた? 当時は会話の意味がわからずスルーしたのでしょう。これだから漫画やアニメは侮れません。名作であればあるほど、子ども向けな中にも大人の目を開かせる本格要素を落とし込んでくる。

たとえば「ドラゴンボール」。カプセル・コーポレーションの技術体系やタイムマシンによって生じるパラドックスの説明など、SFという観点で見ても興味深い要素がありました。あまり知られたアニメではないですが「キャシャーン Sins」の終末的世界観もすごかった。アメリカ文学の第一人者、コーマック・マッカーシーの代表作「ザ・ロード」に何ら引けを取っていません。死を見据えるがゆえの充実した生。と同時に永遠の命に焦がれる性(さが)。主題歌のカラーボトル「青い花」も、テーマとリンクしていてじっくり噛み締められる名曲でした。

漫画やアニメが子ども向けな中に大人向け要素を落とし込むのなら、文学やハードボイルドは大人向けな中に子ども向け要素を落とし込んだらどうだろう? というわけで、noteで書いている掌編小説「ハードボイルド書店員日記」の次回作は漫画を巡る話にします。

新しいことへの実験って楽しいですね。オラ、ワクワクしてきたぞ!








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