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【本118】『包帯クラブ』

著者:天童荒太 出版社:ちくま文庫

『傷を愛せるか』で宮地さんが紹介していた小説、気になったので読んでみました^^
みんなどこか傷ついている。その傷を受けた場所に包帯を巻く「包帯クラブ」。

主人公のワラはかつて離婚した両親たちとともに楽しいく過ごした遊園地に包帯を巻いてもらいます。遊園地に足を踏み入れることのできなかったワラ、離婚なんてたいしたことないと思っていたワラ、でも、タンシオが巻いてくれた包帯を見ながら、涙をこぼして、私はこんなに辛かったんだと思うのです。

「わたしは、包帯を巻いて心が軽くなるのは、傷が治ったわけじゃなく、<わたしは、ここで傷を受けたんだ>って、自覚できたことと、自分以外の人からも、<それは傷だよ>って、認めてもらえたことで、ほっとするんじゃないかと思った。」

受けた傷は簡単に癒えるものではないし、それをなかったかのように封印することだってしばしば。でも、傷を自覚して認めてあげることで、何かが心の中で動き出し、前に進めるようになるかもしれません。

それぞれの傷に寄り添う繊細な少年少女たちの心の動きに気づかされることがたくさんあります。読み返すたびに、自分の心も柔らかくなっていく気がします。


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