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「パッチワーク」あとがきにかえて


■「パッチワーク」って?

私が創作した短編小説です。未読の方は下記リンクよりどうぞ。

■マガジン収録へ感謝を

山門文治様の「今、このnoterが面白い」に「パッチワーク」を収録していただきました。大変光栄です。ありがとうございます。

下にそのリンクを貼らせていただいておりますので、ぜひご覧ください。

■サムネイル画像について

それぞれ左から、タイガ、ウェイン、リリーのイメージをAIで作ってみました。勿論、これはあくまでイメージなので、みなさんの心の中に描く彼らの姿を一番大切にしてもらえれば、書き手としては何も言うことはありません。

■「パッチワーク」は作者にとってどんな存在か?

今回書いた「パッチワーク」は実験的なものです。
今の私の力量で、思いつきと勢いだけでどこまで物語が作れ、整合性がとれたものを書けるかという実験です。
普段からそうですが、短編は特にプロットを練りません。思いつくままに筆を進めて、書きながら着地点を模索する感じです。
じゃあいつもと同じじゃん。と言われそうですが、「パッチワーク」は読んでいただくと分かるとおり、三つの全く異なる物語が相互に作用しあい、中心となる一つの物語に集結し、決着するという構図の小説です。そのため、まとめることができなければ空中分解する危険性を孕んでいるのです。

本来であれば、三、四行で一つの物語を十数個組み合わせて、一つの物語に「パッチワーク」するつもりでしたが、それには綿密な計画が必要だと悟り、自分の今の力量では、計画を練らないと書ききれないと判断し、三つの物語を柱に「パッチワーク」することに決めました。

物語の展開は完全に書きながらの思いつきです。
ウェイン、タイガはキャラクター、名前ともに比較的早く決まりましたが、リリーは直前まで男性でした。ですが、いい名前が思いつかなかったので、女性にしてみたら、と考えると、物語に華と美しさが加わるな、と女性に。花の名前がいいかと考えて、長い名前は避けて、リリーに名前を決めました。

■書く上で注意したこと

物語として、一つになることです。それぞれがばらばらに終わるのではなく、一つの物語となるよう気をつけました。

それから、例えばウェインは兎を仕留め損ねてありつけませんが、タイガは兎鍋を食べていたり、タイガはアンドロイドを斬れずに剣が折れてしまいますが、リリーは竜の首を斬り落としたりと、前の話と後の話で「できない→できる」の構図を入れ込んでいます。パッチワークを綴る糸が同じ糸でなされるように、物語を綴る糸も同じ糸でなされるべきかと思いましたので、彼らの間には共通項をもうけています。

同じ糸、といえば、各エピソードの主人公たちの前には、必ず赤髪、赤い眼の若い女性が現れます。これも物語を一つの糸で繋ぐ工夫です。果たして彼女は何者なのでしょうか?

■如月博士って、あの人?

私の小説には時々「如月博士」と呼ばれる人物が登場しています。『「キサラギ」という名の楽園について』、『レポート№93「ぱらぱげるについての覚書」』で登場し、この二作においては同一人物として描かれています。
ですが、理想郷を作ろうとした「如月博士」と「滅亡スイッチ」や「タイムマシン」を作った「如月博士」では乖離があるように思えます。

同一人物かどうか、みなさまの想像力に委ねられておりますので、よろしければ上記二作もお読みいただき、あれこれと考えていただけると嬉しいです。

■書き上げてみて

出来上がりは結構気に入っています。
総理は男気を見せる場面が描けましたし、リリーの物語は主人公を女性にしたことで、愛情が細やかにかつ狂的になった気が。本当ならもっと濃厚に書きたかったのですが。くどくなりそうだったのでやめました。
ウェインは最初もっと恐妻ぶりを発揮する予定でした。妻にやり込められておたおたするウェインも書きたかったですね。
タイガも、もうちょっと見せ場とかっこいいセリフをもたせてあげたかった。シチュエーションは近未来の崩壊した世界と、ばっちりだっただけに、惜しかったかなと。

タイムマシンはべたでしたね~。でも他にアイデアがなかったのです……。
リリーはファンタジー世界の住人なので、「逆」異世界転移させることは既定路線でした。流行に周回遅れで乗っかってみた感じです。でも、小説に書かれていることって全部必要なことでなければならないんです。理想的には。だからタイムマシンも、異世界転移も、必要ならば書くべきだし、物語上不要で、装飾的に使うなら、採用すべきでない、ってところです。

反省点はもう一つ。タイガとリリーの関係が横並びなのに対して、タイガとウェインは先祖末裔という縦の関係。ウェインとリリーに至っては関係性がない。「パッチワーク」として、そこをうまく構築できなかったのは、大きな反省点です。

ただ、そうした反省点を除いても、「パッチワーク」は私がこれまで公開した小説の中でも、屈指の物語性をもっていると思いますが、いかがですか?

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