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七月三十日と書いた紙ヒコーキを明日に向かって投げた。 草が伸び放題で手入れされていな…
坂道を下って、かたつむりの殻のように渦を巻いた道を抜ける。 そうするとトンネルがあっ…
地面の下には水が埋まっていて、その底には街がある。 水底の街は青く輝いていて、そこに…
雨の音にまじって祭囃子の音が聞こえる。 布団から起き上がり、窓を開けるとその先には黒…
こん、こん、とキッチンに卵をぶつけて片手で開き割り、フライパンの中に落とす。 油がち…
黒髪の女性から切符を受け取り、改札ばさみでぱちり、と切り込みを入れて返す。 今日の乗…
■これまでの話はこちら■本編10、クダン 「随分と余裕ね、クダン探偵」 アキはルームミラー越しにクダンを眺める。クダンは縛られたままだというのに、微笑みを浮かべて座っていた。その目に怯えも、体に震えも見られない。虚勢ではない。何かある、とアキは分析する。その何かが、自分たちに致命傷を与えないかどうか、見極める必要がある。そう考えて、アキは「クロダ、運転を代わりなさい」と路肩に車を停めて運転席から飛び降りる。 アキは後部座席に乗り込んでクダンの隣に座り、クロダがハンドルを握
■これまでの話はこちら■本編 9、ラピス? 台車を押しながら薄暗い通路を歩く。かつ、か…
■これまでの話はこちら■本編8、アキとクロダ クロダは車の中で目を覚ました。 車は止ま…
■これまでの話はこちら■本編7、ガーネット 随分時間がかかってしまった、と冷たい夜風を…
■これまでの話はこちら■本編6、アキとクロダ 人の体臭と、生ごみが腐った臭い、それから…
■これまでの話はこちら■本編5、カクタス 人通りのない暗い裏路地にある、テナントもろく…
■これまでの話はこちら■本編4、クダン スマートフォンのアラームで目を覚ますと、時刻表…
■これまでの話はこちら■本編3、アキとクロダ 夜明けの街を二人の女が歩いている。 ビルとビルの合間にある細い路地ともつかない道を見つけると、その半ばまで入って周囲を見渡している。どうやら何かを探しているようだった。 「クロダ、ツェーザルは一体どこに行ってしまったのかしら」 一人の女が路地から大通りに戻ってきて、そこで待っている小柄な白コートの女に嘆息混じりに言った。 女は中肉中背で、着ているものは何の変哲もないブラウスにジーンズ、ミディアムヘアの髪を黒いリボンで纏めてい