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書評講座 Vol. 4

8
課題書:1)インヴェンション・オブ・サウンド(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳、早川書房)、2)自由課題
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#インヴェンション・オブ・サウンド

陰謀論について語りたい──【書評】チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』

陰謀論について語りたい──【書評】チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』

SNS台頭後、ハリウッド映画は作品に「語る仕掛け」を織り込んでいる。そのために、一見普通に楽しめる映画に敢えて違和感のあるものや雑なものを投げ込んで、人々に「あれは変だろ」と指摘させ、その議論まで計算してメッセージを伝えることまである。……そういった手法を小説界に持ち込んでいるのが、映画「ファイトクラブ」原作者のパラニュークだ。

パラニュークの18年ぶりの邦訳作『インヴェンション・オブ・サウンド

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闇を担わされた者たちの悲痛な叫び――チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』書評

闇を担わされた者たちの悲痛な叫び――チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』書評

第四回 翻訳者のための書評講座に参加しました。
今回の課題はこれまであまり読んでこなかったジャンルの小説で、書評をまとめるのが難しいかもしれないと思っていたのですが、思いのほかスムーズに書くことができました。それはたぶん、この小説が持つ、人をぐいぐい引き込んでいく力のおかげなのだと思います。
講座では今回も講師の豊崎由美さんにご教示と励ましをいただき、また他の受講者の方からも貴重なご意見をいただき

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「インヴェンション・オブ・サウンド」(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳 早川書房) 書評

「インヴェンション・オブ・サウンド」(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳 早川書房) 書評

 「想像による恐怖は眼前の恐怖に勝る*」 と言いますが、本書『インヴェンション・オブ・サウンド』(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳 早川書房)はこれを巧みに利用し読者の恐怖感を刺激してきます。読み手は文字で描写される世にも恐ろしい音を想像しては背筋を冷やし、不穏さ満載でありながら核心部分は描写されない音の採取方法について、おぞましい想像をあれやこれやと掻き立てられます。やだなあ、怖いなあ、と

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