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1.おじいちゃんの梅干し

私は小さい頃から、とてもおじいちゃんっ子だった。
元お医者さんだったおじいちゃんは、初孫の私を連れて、美味しいお店やお寺に連れて行ってくれた。
食べ物だけでなく、植物の名前やお寺の歴史など、
幼い私にはちんぷんかんぷんな時もあった。
そして、お抹茶を気に入り、遊園地よりもお寺に行きたいとねだる、ずいぶん渋い子どもが誕生したのであった。

そんなおじいちゃんが家で作っていた梅干しが、
私は大好きだった。
沢山の紫蘇でつけた、顔がぐちゃぐちゃになる程酸っぱい梅干し。
小学生の私は、よくおじいちゃんと一緒に梅干しを作った。何しろ幼かったので、作り方を覚えていないのが悔やまれる。

青い梅を大量の塩と共に大きなバケツに入れた記憶。
どじょうすくいのようなカゴに梅を並べて干した記憶。
漆塗り?の大きな壺の中に、たっぷりの紫蘇に囲まれた梅干しが沈んでいる記憶。

大きなたくさんの壺は、階段下の収納にいくつも入っていた。その収納はハリーポッターの階段下の部屋のようで、私はよく梅干し壺部屋に潜り込んでいた。
その頃私の前髪はおじいちゃんによって眉上パッツンにされており、黒髪パッツンのおちびを収納で発見するおばあちゃんや母には、座敷わらしのように思われていたかもしれない。


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