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赤ん坊は風呂場で産まれた vol.2

わたしがお産でお世話になる、石神井にある「つむぎ助産所」助産師の渡辺さんはとても気さくで、いろんな話ができる人だ。

子育ての相談、妊娠中の悩み、夫婦の問題など、わたしがお話ししたことをしっかりと目を見て聞いてくれる。あぁした方がいいとか、こうした方がいいとか、そういう言い方はせずに、「自分もそういうことあったなぁ。」なんて失敗談を語ってくれたりする。どんな話題にも寄り添ってくれる、彼女の対応はどれも心地が良かった。

妊婦という生き物は、すぐに不安を抱え込む。

妊娠してからというもの、もう一人の身体ではなく体内にもう一人の命が在ることで、自分勝手に行動することができないし、”母”というフィルターを通して物事を捉えるようになるから、あらゆることに理由をつけて落ち込みやすくなる。

わたしの場合、悪阻もひどかったので(産む直前まで悪阻が続いた)とにかく平常心でいることが難しかった。

そんな状況だったので、助産師さんの存在はとてもありがたかった。

妊娠中、最初は1ヶ月に一度の検診だったものが予定日が近づくにつれ、2週に一度、1週に一度という頻度で彼女とコミュニケーションをとる機会も増えていく。

母のようにどんな話にも耳を傾けてくれる助産師さん。自分にとってもう一人、お母さんができたような気持ちになった。

病院にもよるのだろうけれど、わたしが長男を産んだ総合病院では、検診でまさかプライベートの話をするなんて絶対にできなかった。

大きな病院では、当たり前だけれど、多くの妊婦さんを迎えているわけで、1日に何人もの診察をする必要があるし、健康であれば、「はい!次!」という感じですぐに出されてしまう。

ちょっとした悩みだって、聞いてもらえるような状況ではないし、話せるような雰囲気ではない。

病院と、助産所ではここまでコミュニケーションの取り方が違うのか。と、わたしは純粋に驚いた。

「何かあれば、いつでも電話してね。」そう声をかけてもらえる嬉しさよ。

「出産」するのは同じでも、自分の心の状態が違う。新しい命を迎え入れる準備をひとりでするのではなく、ふたりで進めているような感覚。

長男の時の病院での出産は、夫がずうっと立ち会ってくれたのに、不安が最後まで消えることはなかった。頑張って立ち会ってくれた夫には申し訳ないけれど、不安だったのは彼も一緒だ。

夫もわたしも二重に不安では、そりゃあ最後まで安心できないのも仕方がない。

助産所では、まず赤ちゃんの心臓の音を聞く。赤ちゃんの足の位置、頭や背中の位置を触診で確認する。わたしの足が冷えていればお灸をすえたり、アロマオイルでマッサージをすることもある。とにかく、助産師の彼女はわたしの心と身体の状態をよく観察してくれるのだった。

だから、今回は「彼女がいるから、きっと大丈夫。」そう思えた。

妊娠期間中、怖いとか、不安とか、ネガティブなことはいつの間にかどこかに消えて「いつ産まれてくるか、どんな子に育つだろう。」と、これから外の世界に出てくる我が子に想いを馳せて、産後の生活を明るく想像する自分がいた。

出産予定日は、2019年4月10日。

我が子よ、元気にこの世界に出ておいで。

つづく

次回は「赤ん坊は風呂場で産まれた vol.3」を予定しています。

いよいよ陣痛がやってきますよ〜


photo by 神ノ川智早




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