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生まれて初めて「逃げろ!外に出ろ!」と言われて走った/銃がある社会の話

こんにちは、おかゆです。アメリカで3ヶ月のバケーションという大冒険の真っ最中である私ですが、昨日アメリカならではの恐ろしい出来事があったので記事にまとめておきたいと思います。

昨夜、ラスベガスで体験したこと

先日の記事で、私には今回の旅のハッキリした目的がないということをお話ししました。ですが、一緒にアパートを借りている友人には明確な目的があります。

それは、「ラスベガスで本場のクラブ文化を体感して、好きなアーティストをたくさん見に行くこと」。ラスベガスにはあちこちにナイトクラブがあり、週末には有名アーティストが回すDJで大いに盛り上がります。音楽好きの友人は事前に目当てのアーティストの出演情報をチェックしており、ラスベガスにいる間は毎週末クラブの最前列を陣取る予定のようです。

私はクラブ大好きなタイプではないのですが、「友人のおすすめアーティストを見に行ってみよう」と、昨夜は私の分のチケットも予約してもらっていました。

昨晩、私たちがクラブ内に入ったのは夜の10時半ごろ。カジノもショーもTシャツ短パンで行けちゃうラスベガスですが、唯一ナイトクラブだけはドレスコードがしっかり定められています。男性は襟付きの服、女性は露出の多いドレスなどで来ている人が多いですね。入場時の身分証確認や手荷物チェック・ボディチェックも念入りにされるので、セキュリティ的にはかなり安心な場所です。

クラブは11時〜12時ごろから盛り上がってきて日付が変わった1時ごろにメインアーティストが登場することが多いので、私たちが入ったときはまだあまり人がいませんでした。

DJの顔がよく見える位置を確認するなどして、のんびりしていた私たち。すると周りが急に慌ただしくなり、クラブ内の人々が一斉に一箇所に向かって走り出しました。「え?なに?」と思っていると、「Run! Run! Get out!」の声が。

何から逃げているのか分からないまま必死に走る

瞬間的に「大変なことが起きている!」と感じ、慌ててみんなと同じ方向に走り出す私たち。今回のクラブはホテルの1階にあったため、非常口がそのまま外に通じています。クラブの客も従業員も全員が列をなして、出口へ向かって走ります。外へ出てからもみんなホテルから離れようと走り続けたためか、車のクラクションがあちこちで鳴り響いていました。

手近な人に「何が起こっているんですか?」と聞いてみても、返ってくるのは「わからない」の返事のみ。ですが、アメリカ(しかも観光地のラスベガス)でこんな状況が起きたら、何が起きているのか想像はつきます。何かしらのテロか発砲事件が起きたに違いない。生まれて初めて感じる種類の不安と恐怖でした。

そのうち逃げる列の先頭から悲鳴が上がり、先頭集団が逆走してきました。慌てて私たちも別方向へ向きを変えて、さらに必死に走ります。集団で逃げているときに先頭でまた何かが起こるというのはパニック映画でよくあるシチュエーションですが、実際に体験するとこんなに恐ろしいことだとは知りませんでした。

こっちに走っていって大丈夫?
ホテルの方に戻ったらまずいんじゃないの?
今にも後ろから発砲されるんじゃ……

日本で30年以上暮らしてきて、「銃で撃たれるかもしれない」という恐怖を味わったのはこれが初めてでした。これまで何度か海外旅行の経験はありましたが、そんな場面に出くわしたことがなかったのは幸運だったんですね。ラスベガスに来て2週間でこんなシーンに巻き込まれるなんて、本当に驚きです。

情報が錯綜したけど、結局銃撃はなかった

少し落ち着いた後に周囲の人に何が起こったか聞いてみると、「MGMホテルで銃撃があったらしいの」と、一緒に逃げていた年配の女性が教えてくれました。
ツイッターで情報収拾をすると、逃げる人々の動画とともに「発砲があった!」とツイートしている人がちらほら…。

しかし結論から言うと、銃撃はなかったようなのです。何か大きな音がしてMGMホテルの入り口のガラスが割れ、周辺の人が発砲音だと勘違いしてしまったとのこと。事件発生後ほどなくして、ラスベガス警察のツイッターアカウントから「発砲は確認されなかった」と公式発表がありました。

少し驚いたのが、その現場であるホテルは私たちがいるホテルとはかなり離れた場所にあったのです。
テロだった場合は犯人グループが他のホテルでも同時に銃撃を始める可能性がありますし、犯人が逃走してくる可能性もあるので、たとえ現場から離れていても客を屋外へ避難させるようにしているんでしょうね。周辺のホテルでは、入り口を閉めてロックダウンしたところもあったようです。

「銃がある社会」をこの身で感じた

「近くで発砲事件があったらしい」なんて、日本で普通に暮らしていたら遭遇することのないシチュエーションですよね。
それだけに、先日の安倍元総理の襲撃事件は本当にショッキングでした。まさか日本国内で銃による公人暗殺事件が起こるなんて…。

私は、「銃」というものはどこか遠い世界の話で、暴力で思想・政治が弾圧される社会なんて日本からは縁遠いものだと思っていました。おそらく、大部分の日本人が同じような感覚を持っていたのではないでしょうか。

アメリカに来るときも、「たかだか3ヶ月の旅行だし、よっぽど運が悪くないと銃撃事件に遭遇することなんてないだろう」とどこか他人事のように思っていました。なのに、(結果的に発砲はなかったとはいえ)こんなに早く「銃」の存在を意識することになろうとは…。
誰でも簡単に人を殺傷できてしまう道具が手に入れられてしまう社会というものを、初めて本当に実感したような気がします。

安倍元総理の事件によって、「日本という国の圧倒的安心感」が崩れてしまうような不安を感じた方は多いと思います。
しかし、事件をきっかけに日本人が長年目を背けてきた「政治と宗教」についての論議が活発になっていることは、大きな変化ですよね。せめて一人ひとりが現状に興味を持つことで、日本の将来にとって良い結果を生むことを願っています。

そんな状況でもアメリカ人のフランクさを感じた

今回、わけも分からず逃げているときにもう一つ実感したのが、「やっぱり海外の人ってどんなときでもフレンドリーだなあ」ということ。

走っている途中で小さな生垣を乗り越えなければいけなかったのですが、タイトワンピースを着ていた私はちょっとモタモタしていました。すると、近くにいた男性が私の手を取って引っ張ってくれたのです。彼はジェニーと名乗り、何度も繰り返し「もう安全だよ、大丈夫」的な言葉をかけてくれました。

彼も何が起こったかは知らなかったようですし、親切心だったのかナンパ心だったのかは分かりませんが、見ず知らずの私をなごませてくれる行動力には感服です。

私も、どんなときでも助け合い精神を忘れない人間になりたいものです。
ありがとう、ジェニー。

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