増子博子

『側-カワ-の器』(2013〜)とは何なのか、毎日のドローイングを通し、絵と共に考えて…

増子博子

『側-カワ-の器』(2013〜)とは何なのか、毎日のドローイングを通し、絵と共に考えているところです / 伊藤勇雄顕彰会 ◉個展→2020年5月30日からCyg(盛岡)

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  • よくよく、沃野 「よくよく、沃野」増子博子

最近の記事

うつろう景色

〈time for project - TIME FOR TEA お茶の時間 〉 増子博子個展「うつろう景色」 場所:松坂屋静岡店 北館2階 Blanc CUBE 2,3 2023年3月1日(水)-7日(火)  私は2006年より、自然と人間との協働で生まれる盆栽の景色をペン画で制作しています。そして2011年からは、様々な土地で生活していく中で出逢ったものや人から影響を受けた作品を制作しています。  栃木県の益子では、明治期から昭和30年代にかけて土瓶などの絵付をしていた

    • くまにんげんになって 

       私と熊との繋がりは葛巻町に引っ越してきた春、一頭の熊に出逢ったことから始まります。2階で寝ていた時のこと、夜中の2時頃に、家の外壁をひっ掻くようなバリガリガリッという物凄い音に起こされました。強盗か何かと思い恐る恐る窓から下を覗くと、大きな黒い生き物がゆったりと体をくねらせるように歩いていくところでした。ああ、いるんだなぁ、と腹の底から感じたのを覚えています。今までも子熊を見たことはありましたが、大人の熊を見たのは初めてでした。それからというもの、暗闇全体が熊であるかのよう

      • 葛巻の人魚

        岩手県岩手郡葛巻町は人口約5500人、岩手県を顔としてみると、眉間あたりに位置します。わたしは2020年4月からこの町で生活をしています。 街を歩いたり郷土史を読んだりしているうち、「イモンバサマ」と呼ばれるカミサマに出会いました。葛巻文化財保護委員の藤岡一雄さんによれば、「イモンバサマとは疱瘡神のことで”いも神”ともいう。」(1)とのこと。コロナ感染が拡がっていく中、100年以上昔の人々が疫病の際に何にカミサマを感じ、祈ったのか興味が湧き、少しずつ調べているところです。

        • 「ひじおりの灯り」取材記録1

          {取材記録(6月9日、22日)|増子博子} わたしは今年、2回目の参加になります。今まで外から「ひじおりの灯」を眺めていましたが、制作者側になってみると、温泉街の方々と制作者の方々が本当にこの灯りを大切に想っていることが伝わってきます。今年も携わらせて頂き嬉しく思います。 今回はまだよく解明されていないコロナウィルスに配慮し、(関東圏から岩手県へ引越したという事もあり)取材は出来る範囲で肘折やその周辺を歩いて行います。 ぐるりと歩いて足がぱんぱんになった時、肘折の旅館で

        うつろう景色

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        • よくよく、沃野 「よくよく、沃野」増子博子
          4本

        記事

          よくよく、沃野 皮の野

          あーー、デーー、べろーーーん、、、オーー! わたしは2013年7月7日より「側の器(カワノウツワ)」と名前のドローイングを毎日制作しています。 「側の器」(かわのうつわ)の〝側(かわ)〟は、川(カワ)の語源の一説で、流れる水を受ける側(ガワ)から着想したもの。「側の器」という名前は、名付けた2013年のわたしから遠く離れてしまい、どうして浮かんだのかもうはっきりしない状況です。 ↑ 上:2013年7月7日の「側の器」 下:2020年6月7日の「側の器」 長年続けていく

          よくよく、沃野 皮の野

          よくよく、沃野 リアスの蝶

          日本の昆虫写真家、海野和男氏の「蝶の道」という写真集の中に、一匹の蝶が水を飲みながら排尿をしている瞬間を捉えたものがあります。これはポンピング(pumping)といい主に雄の行動で、体温を下げたい時の行動なのだそうです。吸ったものが身体をそのまま抜けて流れ出ていく時、蝶はどんな感覚にいるのでしょうか。写真に捕らえられた蝶の大地と繋がるようなその姿に惹かれ、今までは触っただけで弱りそうで苦手に思っていた存在に、力強さを感じるようになりました。 蝶は昔からひとの魂に見立てられて

          よくよく、沃野 リアスの蝶

          よくよく、沃野 肉の野

          わたしは「リアスひとり歩き」と勝手に名前をつけ、日本のリアス海岸を歩いています。リアス歩きを始めた理由は、2011年に岩手県の宮古市に移り住んだ時、その海岸沿いの豊かな文化に触れた事や、日本の原発がリアス海岸に多い事。まずはとにかく歩いてみようと東北は三陸沿岸から福井県の若狭湾、愛媛県の西予市の沿岸を歩いてきました。 ↑小浜からおおい町のある大島を望む景色 ↑西宇予市明浜町狩浜を望む景色 2018年の夏は福井県の小浜を訪ねました。現地で地図を眺めていると、「八百比丘尼入

          よくよく、沃野 肉の野

          よくよく、沃野 菜の野

          岩手から栃木に引っ越した2018年の春、一面の菜の花畑を眺めていた時の事でした。トラクターが一台やってきて、菜の花を土に混ぜ込み始めました。"花"を見ていたわたしはあまりの暴力的な光景に心底驚きましたが、これは「緑肥」と呼ばれる農法で、菜の花を水田の裏作にすることにより春は景観形成に役立ち、土にすき込んだ後は菜の花の持つ抑草効果を発揮して除草剤の量を少なく済むのだそうです。菜の花の他に蓮花や向日葵を緑肥にするところもあるそうで、畑を歩いていると、農薬が普及する以前、農家の

          よくよく、沃野 菜の野

          よくよく、沃野 器の野

          皆川マス、ヒロ、移ろう景色 皆川マスは明治7年(1874年)生まれ、昭和35年(1962年)に87歳で没した益子の陶画師です。10歳の時に益子のトバ絵かき皆川傳治郎の養女となり、陶画を描き始めました。 彼女の絵付けとの出会いは2020年の1月、益子陶芸美術館を訪ねた時のことでした。展示してあった皆川マスの山水の絵付けが目に飛び込んできて、その前から暫らく動くことが出来ませんでした。彼女は主に当時需要が多かった土瓶の絵付けを最盛期(明治時代後半)には一日500個から700個

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