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むずかしい平凡 自句自解 第一章「むずかしい平凡」

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拙句集「むずかしい平凡」の自解を行っています。もしよければ俳句を楽しみつつ、お付き合いください。
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#蝶

53 すうっと蝶ふうっと吐いて解く黙禱

53 すうっと蝶ふうっと吐いて解く黙禱

 句集「むずかしい平凡」自解その53。

 これは師・金子兜太先生が亡くなって、ひと月ほど経った頃の作。

 秩父長瀞で最後の「海程・俳句道場」が催され、金子先生の墓参に赴いき、そのときに生まれてきた句。

 お墓の前に立ち、黙禱をし、ひとしきり心の中で会話をした後、黙禱を解く。そこをすうーっと蝶が横切って行った。

 このすうっと横切っていったときの呼吸が、なんだか自分が黙禱を解いたときの息遣い

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40 凍蝶よ言葉を溜めているひかり

40 凍蝶よ言葉を溜めているひかり

 句集「むずかしい平凡」自解その40。

 凍蝶(いてちょう)とは、冬の蝶のことです。ただし、ほとんど動かず、死んでいるかのように見えるけれども、じっと寒さに耐えて凍りついたようになって枯草にしがみついている蝶。生きているというより、仮死状態といったほうがいいかもしれない状態。でも、その凍蝶が冬の冷たい光をあびて光っている。

 それをみながら、なんか、この蝶も言葉を今一生懸命溜めこんでいるんじゃ

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