暮らしの手帖ー花森安治と名もなき優しさ
ぼくは、戦争を知らない。ぼくの父親は、ぼんやりとかすかな記憶を有しているらしいが、ぼくの先生たちは、戦争を知らない。
ぼくの父親の母親は、つまりぼくの祖母は、かつてぼくにこう語った。
おまえのお父ちゃんを背中にしょって、空襲で燃え上がる東京を走ったんだよ。
ぼくは、東京大空襲を、写真で見、映像で見、そして焼け野原になったぼくの故郷に想いを馳せた。
そこからの復興。高度成長期。
そうした中、ぼくたちの母親の世代を喜ばせ、力づけた雑誌がある。それが、『暮らしの手帖』だ。
30年間