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弟子入り後の中弛み5選

今日は、染の作業の修行がある程度進み、工房にも慣れてきた新人さんが陥ってしまう...中弛みというか続けられない理由のようなもの「こういう落とし穴がありますよ」という例を幾つかご紹介したいと思います。

①褒められない事に不満
フォリアの教育方針は、無駄な失敗経験はさせずに良い経験を積み重ね、最短で成長を促す...というものです。失敗する事が分かっている状態で先に進ませて失敗を経験させて...という事はさせません。(目を離した隙に勝手に失敗したり「こうすると失敗するからしないでね」とアドバイスしたのにも関わらず話を聞いていないで失敗したり...という事はあります。)そうしますと、なんだかスムーズに良い感じのものが出来上がってしまうのです。こちらとしては「この段階だとこれくらいかな」というように、成長に応じて教えることを調整しています。

しかし、新人さんは全部自分の力で出来たと勘違いする事が多く「ほぼ初めてでこれだけ出来るのだから、自分にはやはり凄い才能があるんだ。なのになんで褒めないんだ」というような感情が湧き起こるようです。フォリアの誘導が上手過ぎるのか、新人さんの自己肯定感が高すぎるのかは分かりませんが、この現象は良く起こります。私自身もこの感情に覚えがあります。そして、私の場合は師匠に「これぐらい普通だからね。学校じゃないから褒めたりしないよ。」と言われた記憶があります。「確かに」と思いました。

因みに最近は、師匠は、なるべく褒めるように工夫をしています。と言っても、事実を伝える...という感じで「こういうところは良いです。」「ここは良い感じなので、伸ばしていきましょう。」という具合です。しかし、ここで新たな問題が...「良いと言われたという事は、もう完璧で、練習しなくて良いという事なんだな!」と思い至る人の多い事...。より具体的に伝えるしかないのでしょうか。難しいですね。

②差が分からない
私は、今はもう工房内独立をした作家なのですが、とりあえず姉弟子である私を超えてから師匠と張り合う気持ちでいて欲しいものだなぁ...と思います。具体的には分からなくても、師匠と自分がとてつもなく差があるという事くらいは感じていないと、成長する事は難しいと思います。差が分からないというのは、結構...ヤバいです。

中には、初めての友禅(実技③の丸小花更紗の図案を使ったもの)での制作にて「師匠のようなクオリティで仕上げられなかった」と泣いていた方もいらっしゃいました。「向上心があって良いじゃないか!」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは向上心ではなく傲慢としか言いようがありません。プロの仕事を舐めています。勿論、そのような場合でも丁寧に説明し、アドバイスしますが、そこまで差が分かっていないような方は、説明をしても理解は難しいようです。

私が弟子入りした時は、先輩が一人いらっしゃったのですが、その時の私の目標は「まず先輩の仕事を奪う事」でした。自分と師匠を比較しても、差がありすぎて何がなんだか分からないので...。「とりあえず、出来る事を増やす」そんな気持ちで通っていました。

③練習好き
染の練習を真面目にするのは、本当に素晴らしい事です。積極的に「次はこの図案で練習がしたい」というような方もいらっしゃいました。しかし、練習をするだけで、工房の制作には興味がないのでは困ります。練習は楽しいです。練習は気軽です。染が好きなら尚更そうでしょう。失敗しても問題のない作業は楽しいです。

師匠の図案を使うと、自分が何でも出来るセンスがある才能豊かな人間であるかのような気持ちになれます。練習であれば、ミスをしても誰も困りません。しかし、同じ作業でも、実際の作品となると話は別です。少しのミス、小さなシミ1つで、作品(商品)にはなりません。その緊張感に耐えながら作業が出来るようにならなければ意味がありません。

プロのスポーツ選手になりたい人が、練習ばかりしていて、本番で失敗をするのが嫌だからと試合に出ないようなものです。でも金メダルは欲しい。そんな事は不可能です。それでは、いつまで経ってもプロにはなれません。

④アドバイスされると不機嫌
練習の小布を見せようとしない人がいます。少なくありません。アドバイスを嫌うようです。見せないまま家に持ち帰りコレクションをして...練習ばかりしている。③と通ずるところがあります。上手になりたいのかなりたくないのか不明です。「問題点を自分で見出している。分かっている。」という設定のようですが、それならば弟子入りする必要がないと思います。自分で自分の問題点が分かっているのであれば、弟子入りする必要はありません。

⑤自分のやりたい事しかしない
フォリアの修行では、noteの毎日更新と染の練習は必須です。身だしなみやルールに則った生活態度等も指導の中では重要なものです。しかし「染めの作業は楽しいけど、他の事はしたくない」という人は少なくありません。他の事というのは...

例えば、フォリアでは引染めをした後、必ず床を拭き掃除します。水元をした後も同様に掃除をします。それは、新人さんのお仕事です。勿論、方法や理由を説明します。その数少ない新人さんの仕事を、気が付かないふりをして、サボろうとする人は少なくありません。「私は練習が忙しい」「私は集中しているから席を立ちたくない」「動くのが面倒だ」という事です。集中して気が付かないことはあります。1度や2度の事で問題にしたりしません。しかし、それが繰り返し続くのであれば、それは職人仕事、プロの仕事に不向きという事です。気が付かないふりでなく、本当に気が付けないのであれば、もっと問題です。改善する気がないのであれば、それはフォリアで修行するのは難しいです。

例えば、毎日noteを1つは投稿するという事をしない人・したくない人・出来ない人がいます。注意をすると、「昨日2つ投稿したから」「熱があって...」「友達と用事が...」そんな事は関係ありませんし、いつ作ったそのマイルール...と、戸惑います。毎日投稿する事がルールです。更新し忘れたまま0時を過ぎて、1時に更新している事に文句を付けているのではないのです。なんでも良いから1投稿という緩い決まりも守れないのであれば、それは表現者としては向いていないという事です。「完成度の低いものを投稿したくない」という事を言う人が多くいますが、こちらから言わせて貰えば「未だ嘗て完成度の高い投稿を見せてもらった事がないんだが?」という気持ちです。それが出来るようになる為に修行しているのですから、せめてこちらの言う初歩の初歩「毎日note1投稿」という決まり事くらい完璧にこなしてください。完成度の話はそれからだ。

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これ以外でも個人的なところで躓いてしまう方は少なくありません。特にプライベートでの異性関係のトラブル...そちらの問題に引きずられて、修行が疎かになり、辞めてもらうという件は非常に多いです。

自分は修行を開始して、2022年2月で12年が経ち、13年目となります。工房内独立して、5年目の年です(2022年時)。私の場合は、フォリアが向いていたのか、運良く続けられ、現在に至るわけですが、その間に何もなかったわけではありません。親には「才能があるとは思えない」と言われましたし、師匠には「(プライベートな面で)もう駄目かと思った事もあるし、駄目だった場合どうするか妻と相談してたよ」と言われた出来事もあります。

向き不向きもありますが、やりたいかやりたくないか...も重要だと思います。私は自分が思っていた以上に、制作をしていないと苦しさを感じる人間だったようです。なので、フォリアの環境はとても居心地が良いです。そういう意味では、フォリアで修行する為には「作ってないと死ぬ病」に罹患している人間でないと難しいのかもしれません。

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過去に弟子入りした方々について思うこと


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