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紙ペンゲームをつくろう! 【保存版】 《ボードゲームの作り方 vol.1》

こんにちは、ボードゲームデザイナーの山田空太といいます。

noteでは主にボードゲームの作り方について書いています。

*本記事は、このnoteの中で最も読まれている記事です。下の2つが次に読まれている記事です。


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まだまだ外出自粛が続きそう。これからも自宅でいる時間が長くなると予想されます。

今こそ「アナログゲームを作るとき」ではないでしょうか!?


そこで、紙ペンゲームは最強!!


なぜなら、紙とペンさえあれば作れてしまう。一人でテストプレイができる。オンラインでテストプレイもやりやすい。今の時代にぴったり。僕も今作っています。ぜひ一緒に作りましょう。

ということで、本noteでは紙ペンゲームの作り方について解説していきます。

はじめに

本noteでいうところの紙ペンゲームとは、ロール&ライト(Roll And Write)という、サイコロを振って&シートにペンで記入するゲーム全般のことを言っています。

このnoteでは・・・紙ペンゲーム ≒ ロール&ライト(Roll And Write)


まずイメージをつかんでいただくために、有名な紙ペンゲームをご紹介します。2013年にドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた『クウィックス』です。

サイコロを振って、合計値の数字をシート上でチェックします。高得点を取るためにたくさんチェックをしたいけれど、数字は昇順か降順のみにしかチェックできないので、どこかで諦めないといけないというジレンマ。10分から15分で終わる手軽なゲームです。

実はロール&ライトのゲーム、数年前に大流行していました。

下のグラフのように、この『クウィックス』が登場した2012-2013年あたりから段々と盛り上がってきて、2017-2018年に大流行し、今はやや下火になっています。若干、出尽くした感もあるんですね。

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引用元:https://www.kotaku.com.au/2018/12/the-resurgence-of-roll-and-write-board-games/

なので、ボードゲームに詳しい方は、今さら紙ペンゲームって思われるかもしれません。

とは言え、個人的にはロール&ライトの紙ペンゲームにはまだまだ可能性があるのではないかと考えています。

これまではシートにチェックするゲームが多かったですが、もっと自由にシートを使ってゲームデザインができるのではないだろうか・・・って。せっかく紙とペンがあるんだから。

はい。それでは、紙ペンゲームの作り方を実践的に解説していきます。

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紙ペンゲームの特徴について、まとめてみました。

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1:構造

基本構造は、ロール&ライト(Roll And Write)の文字通り、

ダイスを投げる → シートに記入する

これを1セットとして、ゲーム終了まで何セットも繰り返します。

もう少しゲームの流れを詳しく説明すると……


ダイスを投げてその出目によって、自分の紙のシートに文字や数字や道路を記入する。それを何度も行い、最後にシートに記入された結果によって得点計算をします。

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ダイスの代わりにカードをひいて、ランダム性を演出する方法もあります。

カードをめくるので、フリップ&ライト(Flip and Write)と呼ばれたりもします。構造上は、ロール&ライト(Roll And Write)と大きな差がないので、この記事では両者を区別せずにロール&ライトにまとめます。

さて、もう1つ大切なことがあります。

それは、紙ペンゲームは、ほぼ多人数ソリティアであるということです。

ソリティアとは1人で遊ぶゲームのことですね。つまり、多人数ソリティアとは、1人でも遊ぶことができるものを複数人で遊ぶゲームのことです。

ソリティア(solitaire)とは、一人で遊ぶゲームを意味します。


有名なところだと『テイクイットイージー』というゲームがあります。最近では『カルバ』や『ナンバーナイン 』というゲームも出ています。

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全員が同じ条件の下で行動を選択するゲームですが、もともとがソリティアなので、プレイヤー間のインタラクションがありません。

紙ペンゲームは、多人数ソリティアに向いています。と言うよりは、どうしても多人数ソリティアに近いものになってしまうのです。

なぜなら、紙ペンゲームでは、他プレイヤーのシートは見え辛いという物理的な制約があるからです。

だってテーブルの向こうの人の、鉛筆でチェックした紙を覗き込むの、大変ですよね。あつまり、他人のシートをじっくりと観察しなければならないようなインタラクションが強いゲームは不向きです。

ただし、紙ペンゲームでは、ボードやタイルではなく紙を使うので、1回のゲームで何枚でも準備ができるというメリットがあります。99人で遊んでも成立する可能性があるっていうことですよね。

『ダイスビンゴ』
っていうゲームがあるんですが、結婚式の二次会の余興に使えるかもしれないなって考えたこともあります。


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システム上は「インタラクションがない」多人数ソリティアですが、他プレイヤーの進捗状況が自分の選択に影響を与えることもあります。

例えば、「高得点を狙わないとトップを走るプレイヤーに勝てないので、ここは思い切ってリスクをとる!」というようなケースが考えられます。ゲームに勝つために、通常では選択しないであろう手を打つということですね。

他にも、体験を共有する楽しさもあります。

例えば、『ビンゴ』は選択肢がないため厳密に言うとゲームとは言えないかもしれませんが、まさに多人数ソリティアですね。『ビンゴ』には、大勢でやるからこその楽しさがあるものでしょう。

2:作り方

いよいよ作り方に入ります。

紙ペンゲームの作り方:
❶まずソリティアとしてゲームを成立させる 
❷インタラクションを作る

この順序がオススメです。

繰り返しになりますが、紙ペンゲームはシートに記入するソリティアなんです。

最初に、1人用の紙ペンゲームを作ることを目指します。そして、インタラクションを最後に付加します。

重要度は、90:10くらいのイメージです。ソリティアとしてのゲームを完成させることが何より大事。

そして最初の一歩は、Rollの部分を白ダイス2個で固定すること、をオススメします。

ここは、なぜって思われるかもしれませんが、最初の一歩のところなんですよね。0から1を生み出すことは、何かを決定することでもあります。

ゲーム制作においても、最初から理想的な決定ができれば良いですが、なかなかそうはいきません。時には手探りで進んでいくことも大切です。

こと紙ペンゲームにおいては、最初の足掛かりとして、Rollにあたる部分を白ダイス2個で固定しておいて、Writeの部分に集中して設定することが良いと考えています。

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白ダイス2個でも、様々なケースを想定できます。例えば、2個の出目の和を使う、大きい出目だけを使う、一方を数字に一方を場所に割りふるなど…。

カラーダイスに変えたり、カードを使ったり、Rollにあたる部分は簡単に変更できる箇所。なので、後から最適な方法を考えれば良いです。白ダイス2個というぺグを打って仮決定して、一旦スルーしてしまいましょう。

そうしておいて、いよいよ最も重要なところ。紙のシート設計です。Roll and WriteのWriteにあたる部分ですね。

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「いかにシートを設計するか?」紙ペンゲームではここにかかっています。シート設計に99%フォーカスしてもいいかもしれません。

本noteの主旨:紙ペンゲーム作り≒シート設計


紙は何でも表現できるため自由です。タイルやボードだと色々と制約もありますが…。

自由であるということは、方向性を定め辛く、作り始めが難しいということでもあります。そこで、次項からは実践的なヒントになる情報を整理していくことにしましょう。

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3:面白さ

さて、紙ペンゲームをどのようにして設計するか。そこで「いかに面白さを生むか」から考える2つの手段を提案します。

(1)チキンレース
(2)得点経路の多彩さ

チキンレースは、高得点を狙えば狙うほどリスクが増大するというメカニクス。リスクマネジメントのゲームですね。

有名なチキンレースのゲームは、シド・サクソンの名作『キャントストップ』。手番ではサイコロをふって駒を進めます。たくさん駒を進めたプレイヤーの勝ち。サイコロをふるか、ふらずにストップするかを毎回選択します。成功すると再び手番が回ってきます。うまくいけば、1手番でどんどん進める。しかし、バーストすると全てが元通り。どこまで欲張るか、どこでストップするか。まさにチキンレースの構造です。

紙ペンゲームは、与えられた条件をいかに割り振るかというリスクマネジメントのゲームです。つまり、チキンレースの構造を組み入れることはほぼ必須であると言えます。

もう1つの手段は、得点経路を多くすることです。プレイヤーに効率的な得点方法を選択させるわけです。

実際にはこの2つの要素を組み合わせます。わかりやすいチキンレースだと単調になるので、得点経路を多彩にすることで、リスクマネジメントを複雑にさせるわけですね。

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例えば、先ほど挙げた『クウィックス』は前者寄りです。非常に明快なチキンレースの構造になっています。

2018年のドイツ年間ゲーム大賞のエキスパート賞にノミネートされた『ガンシュンクレバー』は後者寄りです。このゲームはリスクマネジメントをさせながら、効率的な得点方法を探らせるゲームです。

4:ポイント

シート設計において気をつけるべきポイントは、「ターン数と個人シートの達成率」です。

繰り返しになりますが、紙ペンゲームは、他人との競争よりも自分のシートをいかに効率よく埋めるか。

初回のプレイではシートの半分しか埋まらくても、習熟するにつれてシートをうまく埋められるようになると、リプレイ意欲も向上しますね。

とてもうまくプレイして、なおかつ運が良かった場合に、個人シートがほぼ埋まるような調整が良いでしょう。

ここでは、ゲーム終了までのターン数(記入できる回数)が目安になります。ターン数と個人のシートの達成率の関係を意識することで、シート設計の枠が決まっていきます。

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ターン数はRollとWriteの回数に等しいため、シートに記入できる回数でもあります。全員が同じ条件のもと一斉記入するとして、1ターン=1分の計算で考えると、通常ターン数は20から30でしょうか。それくらいの規模のゲームが多いですね。

迷った場合、紙ペンゲームは淡々と進行し冗長になりがちなので、ターン数は短めに設定するのがGood!

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ヒント:アイデアはあるのに取っかかりが見つからないときは、数字やチェックを記入するスペース(マス目、道など)を30〜50個ほど作ることを考えてみると良いです。毎ターン1,2個記入し、約30ターンで6〜8割埋まるイメージで。


5:秘策

紙ペンゲームを作るときのとっておきの秘策があります。それは「連鎖ボーナス」です。

つまり、「ある条件を満たすと+1アクションができる」というヤツです。「連鎖ボーナス」はたくさんのメリットがあります。

・プレイヤーに快感をもたらす
・短距離の目標になる
・ゲーム中、軌道修正ができる
・運の要素を軽減できる

このような効果が考えられますね。なので、連鎖ボーナスを採用しない手はありません!

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6:短所

紙ペンゲームの短所は、先ほども述べましたが、他人のシートを見づらいこと。ゲーム中、どうしてもゲームしている感が薄れてしまう。他人のシートに興味がなくなる。

ただ、最近のボードゲームの特徴として、インタラクションがどんどん薄れている傾向もあります。

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7:最後に

ここまで到達したら、あとは簡単。

① 最後に、インタラクションを付加します(任意)
② Rollの部分にさかのぼって、最適な手段を考えます

インタラクションには、

・親にだけメリットがある
・チェックマスの早取り
・目的達成の早取り

などの方法があります。

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Rollの部分に最適な手段を考えるというのは、最初に仮決めしておいた白ダイス2個よりもbetterな方法がないだろうかという検討。カラーダイスを追加する、カードに変える、他のランダマイザーを考えるなどなど。

ダイスを使うと、ターン数のコントロールが意外と難しく、プレイヤーに終了条件のスイッチを踏ませることになりがち。

カードにすると、山札の枚数でターン数の調整が容易。出目の偏りも減る。そのため、ゲーム全体を制御しやすいのはカード。

まとめ

・まずは1人用ゲーム(ソリティア)を目指す
・とりあえず、白ダイス2個に固定し
・シート設計に集中
・シート設計は自由なので作り始めは難しい
・要はチキンレースか、得点経路を多くするか
・ターン数と個人シートの達成率は気にしつつ、
・リプレイ意欲が出るようなサイズにして、
・連鎖ボーナスはつけて損はない
・インタラクションは付加してもいいし、しなくてもいい
・最後に、白ダイス2個よりも適切な手段がないかを考える

紙ペンゲームに限って言えばインタラクションは弱めでいいかなと思います。それよりは。1人用ゲームとしての完成度を高める方が大切ですね。

おまけ

このシリーズは長くなってしまいましたが、最後に補足をして終わります。

紙ペンゲームでのプレイヤーの役割は、「割り振り係」です。プレイヤーは、ダイス目(リソース)をシート上のマス目に、リスクマネジメントをしつつ、いかに効率よく割り振るかを考えるのです。これを覚えておくと、紙ペンゲームの制作に役立つと思います。

最後まで読んでいただきまして、有難うございます。

紙ペンゲームではありませんが、ぼくの作ったゲームを1つ紹介します。『でんしゃクジラ』は6才から家族4人で遊べるカードゲームです。もう1ゲーム!と止まらなくなる面白さです。一度のぞいてみてください。

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同じくボードゲームの作り方の【保存版】記事です。
テーマからボードゲームを作るレシピ 《ボードゲームの作り方 vol.2》
箱庭ゲームの作り方 《ボードゲームの作り方 vol.3》

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