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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2022年9月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第241話

月の砂漠のかぐや姫 第241話

 洞窟の奥へと歩き出す前に、羽磋はもう一度天井を見上げて耳を澄ませてみました。
 先ほど聞こえてきた馬の足音は羽磋たちがいる場所を通り越して進んで行ってしまい、既に聞こえなくなっていました。その音が進んでいった先を頭の中で思い起こすと、それはやはり羽磋たちがこれから進もうとしている洞窟の奥と同じ方向でした。
「冒頓殿、待っていてください。きっと僕たちはこの洞窟の外に出ますから」
 羽磋は心の中で冒

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月の砂漠のかぐや姫 第240話

月の砂漠のかぐや姫 第240話

 相手が自分と同じ考えであると知って、羽磋と王柔はこの地下の空間で目を覚ましてからもっとも嬉しそうな笑顔を浮かべました。そうです、お互いに言い合った通り、その震動は馬の足音、それも、多くの馬が一斉に走っている音でした。
 では、その音はどこから聞こえてきているのでしょうか。
 羽磋はパッと立ち上がると洞窟の壁に走り寄り、そこに耳をくっつけました。間違いありません。地面から伝わっていたのと同じ振動が

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