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くにん
2022年1月19日 22:55
「そうですね、早く出口に辿り着けば良いのですが」 羽磋の方でも、周囲に気を配りながら黙々と歩き続けるのに疲れて来ていました。そのため、王柔に返した何気ない言葉には、少しほっとしたような調子がありました。 地平線まで続くかのような広いゴビの荒地で馬に乗って羊を追う遊牧をしていた羽磋に、交易隊の先頭に立って長い旅をしていた王柔。どちらも、このような閉ざされた狭い空間に長時間いたことなどありませ
2022年1月16日 15:32
羽磋たちは、大空間が回廊のように細くなっている場所に入っていきました。回廊に入ってすぐのところにはザワザワと音を立てながら水を飲み込んでいる一つ目の洞窟の入り口がありましたが、彼らはその前で立ち止まることはありませんでした。さらに回廊の奥へと進んでいくと、それが行き止まりとなっている箇所の岩壁に洞窟が大きな口を開いているのが見えてきました。二つ目の洞窟でした。こちらの洞窟にも一つ目の洞窟と同じく
2022年1月12日 23:17
「王柔殿の心配はごもっともです。ありがたいことに、この大空間では何にも出会わなかったのですが、この先もこうだとは限りません。あのサバクオオカミの奇岩の様に僕たちを襲ってくるものがいないとは、とても言い切れません」 王柔は真剣な顔で羽磋の言葉を聞いています。羽磋は小さな声で話を続けました。「それでも、僕は奥の洞窟を進むべきだと思うのです。一つは、先ほどお話したように、僕たちの目的の達成にはそ
2022年1月9日 23:08
「では、決めさせていただきます。王柔殿、奥の洞窟の方に入っていきましょう」 もともと、「奥の洞窟に入るのが良いと思う」と、自分の意見を王柔に話そうとしていた羽磋でしたが、それが最終的な判断になると思うと、緊張せずにはいられませんでした。 王柔は羽磋の判断に異論は唱えませんでした。自分では判断ができないからと羽磋にそれを任せたのですから、それは当然でした。ただ、羽磋が手前の洞窟でなくて奥の洞
2022年1月5日 22:43
二人が言うように、羽磋たちと同じように交易路から落下した駱駝や荷物が見つかれば良いのですが、それをあてにすることはできません。羽磋は自分たちの手元にあった食料や水が入っている皮袋をすべて駱駝の背に載せると、その手綱をしっかりと握りました。ただ、自分がとても大事にしているもの、つまり、父である大伴から渡された兎の面や小刀などを入れた皮袋だけはこれまでと同じように自分の背にかけて、何があっても手放す