シェア
くにん
2021年7月29日 17:43
「はあっ、はあっ、ああ、ああ・・・・・・」 一気に砂丘を駆けあがってきたせいで、その頂点に立った時には、羽磋の胸は破裂しそうに傷んでいて、彼はオアシスを見下ろしたままで動けなくなってしまいました。座り込んでしまいたいという身体からの欲求を押さえるのが精いっぱいで、とても、このまま砂丘を駆け降りることはできません。「早く、あのオアシスに行きたい。そして、あの人に会いたいのに・・・・・・」 羽磋
2021年7月22日 22:55
遥か遠くにそびえ立つ祁連山脈に端を発するこの川は、その山々の麓に湧く水が少しずつ集まって小さな流れとなったものが源でした。この川は上流の方では山脈に沿って東から西へと流れていますが、一部で地表に顔を出す他は、地下を流れる水脈となっています。ゴビの地表にはとても強い日差しと絶え間なく吹き続ける風があるため、地表を走る分流の多くは枯れてしまっています。 川は祁連山脈の西端で北西方向へ流れる向きを変
2021年7月18日 21:00
王柔が必死に水をかく先では、大きな茶色の塊が波間に浮かんでいます。その塊は、駱駝のコブが水面から顔を出している姿でした。 駱駝のコブには水が入っているとよく言われます。それが嘘か真かはわかりませんが、どうやら水に浮かぶことは確かなようです。それは、まるで大きなナツメヤシの実がぷかぷかと水に浮かんでいるかのように、激しい川の流れの中でも全く沈むそぶりを見せていませんでした。 羽磋は泳ぎ着いた駱
2021年7月15日 22:01
「王柔殿、早く、理亜を駱駝の背に」「そうだ、理亜は、理亜はどこに。羽磋殿、理亜は!」「王柔殿、理亜は貴方の後ろにいます。うわっ、あれはなんだっ」 ようやく意識がはっきりとしてきた王柔は、直ぐに自分の一番大切な存在である理亜を探し始めました。彼女のことが心配でなりませんでした。理亜は無事でいてくれているのか。羽磋のように、自分よりも上手に泳げているのか。それとも、自分の助けを必要としているのか
2021年7月11日 16:41
羽磋が子供の頃の遊びで、ナツメヤシの木の上からオアシスに飛び込んだ時もそうでした。高いところから飛び込むと、その勢いで水中で体がぐるぐると回転してしまい、どちらが上か下かもわからない状態になってしまいます。もちろん、そのまま水中にいると息ができませんから、不安な気持ちがどんどんと大きくなってきます。そのため、まだ小さくて羽と呼ばれていた頃の彼は、早くどちらが上かを探して水面に顔を出そうと必死にも
2021年7月4日 19:15
「ィヤアアッ・・・・・・、オージュ!」 王柔の胸の中で理亜があげる悲鳴が、空中に長い尾を引きました。王柔は少しでも理亜を守ろうと、ギュッと目をつぶったままで、彼女に回している腕に力を込めました。実際の所では、王柔の腕は理亜の身体をすり抜けてしまうのですが、彼はそうせずにはいられなかったのでした理亜の悲鳴を聞いた羽磋は、目を見開いて自分に何かできることがないか必死に頭を回転させ続けました。でも、彼