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「他の国では、歴史をどのように教えているのか?」を知る本

コロナウイルスがワールドワイドになる前、語学留学をしながら世界一周をする計画を立てていた。むしろ、出国する寸前だった。これまで幾つかの国を旅行していて、自国の歴史や政治について、きちんと説明できる人が日本以外の国には多いように感じていた。他の日本人の旅仲間も同じことを言っていたので、ほぼ一般論と言って良いのではないだろうか。日本史や世界史の授業はほとんど寝て過ごしていたし、日本の政党でどれが右派か左派か語れない。外国人を浅草に連れて行くことはできても、どういう場所か説明はできない。そんな自分が、とてもつまらないと思った。

世界史や、政治・経済を学びなおせる親切な個人サイトやnoteを見つけ、読み漁った。そんな中で「他の国では、歴史をどのように教えているのか」「植民地を持っていた国や戦勝国は、過去をどのように認識しているのか」「日本をどう見ているのか」ということが気になり始め、各国の歴史の教科書を読みたくなった。

調べればどこかの大学で研究されていそうだと思った。しかし、どうせなら日本ではない国で教育を受けてみたくなった。それで、私の作戦は、はじめはどこかの国の大学に留学するか聴講生になることだった。世界には留学生に対しても学費が無料の国がある一方で、べらぼうに高額な国もあることを知り、価値観の違いに驚いた。

大学はハードルが高そうなので、気軽に語学学校に籍を置きつつ、目的を達成できないか考えた。例えば、語学学校の生徒は色んな国から集まっているので、そこで歴史について聞いてみる。ステイ先の家族に頼んで子どもの教科書を読ませてもらう。図書館に行く等々。語学力が追いつくか、大いに懸念はあったものの、カナダ、コロンビア、スペイン、イギリス、ドイツに滞在方向で世界一周航空券を購入する直前、パンデミックとなった。

どこにも行けず、働くしかない状況になった。コロナのお陰で、オンラインでできることの枠が広がり、留学しなくても語学は独学である程度頑張れそうだ。あとは、やる気と根気の問題だ。

ある日、ブックオフで佐藤優氏の著書を買った。佐藤氏は、易しい言葉で書かれているのに内容が難しすぎて、かつて殆ど理解できなかった苦手意識のある作家だった。

今回も私にはまあまあ難しかったが、この著書の中で引用されていた文献が、まさに私の探している本だった。だから、語学留学もしなくて良くなってしまった。現地で歴史の教科書を探さなくても、各国の言語が理解できなくても、既に日本語で出版されていた。そんな有難い本が、明石書店から「世界の教科書シリーズ」として47シリーズも出ている。

ヨーロッパやアメリカだけでなく、アジアの国々の教科書もある。様々な視点からの資料が豊富で、学習者への問いかけも多い。

「もしあなたが、●●戦争の映画を作るとしたら、どのアングルでどの場面を撮るか」「●●将軍をどのように説得して反乱を鎮めるか」こんな教科書だったら、授業中に寝ている暇はない。

こちらは、長年に渡って仲が悪い隣国同士で共通の教科書を作ろうという発想にまず驚く。序文から気合が入っており、「知識の不足によって引き起こされる偏見」や、「一つの現実に対する受け止め方の差異」に注視して作られた教科書とのこと。歴史をさーっと俯瞰したものではなく、まさにその歴史上の日々に巻き込まれているような臨場感のある資料が豊富だ。日本もしばしば過去の出来事でバッシングを受けるが、相手には相手国の歴史があり、異なった認識があるのだろう。少しずつ読むのが楽しみな、大変ボリュームのある本なので、読了には相当時間がかかりそうだ。翻訳も大仕事だったことだろう。時々、日本語なのに理解が追いつかない文章がある。

まだまだ続きそうなコロナ禍の期間中は、これらの本を読んで遅咲きの社会科学びなおしをする。晴れて出国できるようになったら、今までよりもっとその国のことを理解できるようになっていれば良いなと思う。


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