戦略人事とは「人間についてのプロ」になること
戦略人事といえばこの本と聞いて。
戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れを読んだ。
GEでの経験をベースに著者流の人事感を語る。マネジメントを「戦略性」と「継続性」の2つに分け、前者を現在、後者を過去と定義(P.27)。本書の主張は過去の継続に縛られない戦略性マネジメントが戦略人事としている。
戦略人事は組織育成の視点から捉えることが重要
組織のパフォーマンスを最大化することを役目(P.89より)とし、「組織開発ができなければ人事ではない」と言い切っている。自身のストーリーを語る(Our Story)方法は真似しやすい知見だ。
これはキャリアアンカーの内的キャリアにつながる話だと感じた。価値観の共有が個々人のやる気につながるからだろう。もう一人の著者もエドガー・シャインの組織開発の理論を例にあげ、目指すべき姿を補足している。
組織開発は英語では「Organization Development」つまりは「組織育成」が本来の意味のようだ。言いにくいから、組織開発らしい(P.103より)。近年はOD(組織開発)とも略される。
組織の育成と発展は、戦略人事に必要不可欠な観点だろう。
人間の生産性をあげるのが人事の役割
社員のモチベーション向上を目指すためには、人事部門が重要な役割を担うと伝わる。人のやる気と生産性は密接に関連しており、適切なモチベーション管理によって数倍の効果が生まれる可能性があることを示唆している。
近年、組織開発の話題が注目される背景には、最終的には生産性を向上させることが求められているからだ。数倍というと、質と量の境界線に迫るような、大幅な行動量の増加が求められることになる。
フィリップ・アンダーソンの「More Is Different」より。
人間の生産性にも量と質の境界線がある。つまり、良質な成果物を生み出すための生産性は、一定の量をこなすことも必要であり、モチベーションの変化が生産性に影響を与えると言えよう。
人事のプロフェッショナルとしてのビジネスパートナー
人事プロフェッショナルの役割と資質(P.208)より、HRBPの話が登場する。他にもGEには5つの人事の役割を述べており、変革を率先したりコーチングしたり採用したり、HRの専門家(給与・労務)も求められるとある。
著者はこれを、アンバサダーや通訳に語り手としての役割が求められるとあり、「人や組織を最大限に活用し、その会社の「勝ち」を実現するのが人事の役割(引用:P.209)としている。
近年も、この10年前のモデルが依然として求められていることがよくわかる内容だ。また、HRBPの話題が近年注目される背景には、先述の人事の視点からの発展があると考えられる。
戦略とはストーリーと言えば
こちらでもまとめたが、物語る行為が戦略となる。本書のタイトルにも制度で縛るな、ストーリーを語れとある。なぜ、ストーリーなのか?それは、人がやる気を持って行動するには物語る(ナラティブ)しかないからである。
経営者が物語る立場であり、経営目線で物語る必要がマネージメントにも求められるようになった。つまり、組織の育成と発展は、物語る必要があることを意味している。
自身の経験にあてはめて考えると、エドガー・シャインの内的キャリアの有効性を改めて感じる。誰かに感化されたり影響を受けたりと人は物語を聴きたいのだ。内的キャリアを伝えることは、組織開発になると感じた。
本書を通じて戦略人事を考えると、行動を促すことがいかに重要かを再確認できた。特に、部門レベルの底上げが求められる現代においては、HRBPという役割が登場することになったのも当然の流れに思えた。
そうしたなかで、組織育成の観点で自分ができることとしては、内的キャリアを語る仕組みをもう一度復活させることが重要なのかもしれない。
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