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【最近読んだ本】私にも「推し」がいたことを思い出した。

自分に「推し」がいただろうかと思い返してみた。
なんとなくだが、いた。

中学生のとき夢中になっていたチェッカーズの藤井尚之さんだ。(ここではナオユキと呼ばせてもらう)
圧倒的にフミヤに人気が集まる中、私はナオユキ推しだった。

顔が好きで、声が好きで、作る歌が好きで、サックスを吹く姿が好きで、ちょっとシャイな性格も好きで、とにかくあんなに好きになったアイドルは後にも先にもいない。

レコード(当時はまだレコードだった!)を買い、写真集を買い、妄想で結婚し、コンサートにも足を運んだ。
ナオユキがサックスを吹いていたから、私も親に頼み込んでサックスを買ってもらい、ナオユキが久留米の筑後川の河川敷で練習していたというから、私も地元の淀川の河川敷で練習をしていた。
それくらいは好きだった。

あの頃は「推し」なんて言葉はまだなかったから、単純に「ナオユキファン」と言っていたけれど。

そんなことを30年ぶりくらいに思い出したのは、宇佐美りんさんの『推し、燃ゆ』を読んだからだ。

デビュー作の『かか』は読んでいない。彼女の作品を読むのはこれが初めてだ。

芥川賞を受賞した本を全部読んでいるわけではないし(どちらかといえば読んでいないものが多い)、売れている本を必ず読むタイプでもない。
ただ、この本は興味があった。
令和に生きる21歳の女性が、どんなものを書くのか知りたかったのだ。
そしてそれは、彼女の親世代の年齢である私にも響くのかも確かめたかった。

読んでみて思ったのは、今のこの時代(それもかなりピンポイント)を切り取った、今を生きる人にしか書けない作品だなということ。
また、五感を刺激するような描写がリアルで、表現力に引き込まれた。

ただ、私には響かなかった。
それは作品の優劣ではなく、もう好みの問題で……。

私は「登場人物が魅力的」で「読後感が良い」小説が好きだ。人のひたむきさや優しさが伝わる物語が好きだ。
そういう点からいえば、主人公にも惹かれなかったし、読後感もあまりよくはなかった。
村田 沙耶香さんの『コンビニ人間』や、今村夏子さんの『こちらあみ子』を読んだ後の感じに似ていた。
社会でうまく生きていけない人と、あまり優しくないまわりの人々。そういうのが、私は読んでいてなんとなく辛くなってしまうのだ。

作品は自分の好みには合わなかったが、きっとこれからすごい作家さんになっていくんだろうなと思う。
なんといってもまだ若い。もっと年齢を重ねた時にどんなものを書くのか見てみたい。

また、『推し、燃ゆ』を20歳前後の人が読むと、どんな感想を持つのだろうか。ちょっと聞いてみたい気がする。

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