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【最近読んだ本】幸せの連鎖は自分でつくれる。みっともないから、カッコいいんだ。

昔の私はいつも「幸せになりたい」と思っていた気がする。
そのくせ、幸せになることが怖くて仕方がなかった。自分の存在意義や生まれた意味ばかり考えていた。

小学生の頃から劣等感の塊で、自己否定感が極端に強くて、ダメな自分に嫌気がさしてばかり。
たとえば幸運なことが巡ってきても、「ひとつ幸せになったら、きっとひとつ幸せを失う」と考えていたし、それを口に出してしまうこともあった。

あの人はいいなぁ。いろんなことに恵まれてるし……。
あの人は、あれも持ってるし、あんな才能もあるし……。
そんなふうに人を羨むことも多かった。

自分を変えることができたのは、30歳を過ぎてからだ。(おそっ!)
それまでも、いわゆる「思考は現実化する」みたいな話は聞いたことがあったし、そういう本も読んだことはあったので、このマイナス思考が自分の人生を悪くしていることにはぼんやりと気づいてはいた。
それでも動けなかったのは、本当の意味で「自分を変える必要性」を感じていなかったのだと思う。「少しだけ不幸であること」は、なせか安心できたからだ。幸せになることのほうがずっと恐ろしかった。

それが、本当にどん底に落ち込んでどうしようもなくなったことがあった。今思えば、あれが人生の分岐点だったのだと思う。
その時、行きつけの料理屋のマスター(ヒーラーでもある)にもらった言葉が初めてちゃんと私の心に響いたのだ。

「自分を許して、自分を認めて、心の中で子供の頃の自分をちゃんと抱きしめてあげて。みんな幸せになるために、楽しむために、生まれてきたんやで。そのことを受け入れられたら、自分もまわりも愛であふれて、そこから幸せの連鎖が始まるから」

今変わらないと、一生ダメだと思った。
怖かったけれど、勇気を出して、「自分」の存在を許した。
楽しんでいい、幸せになっていいんだ。生まれてきてよかったんだ。そう心から思った。
不思議なことに、想いが変わると行動が変わり、行動が変わると人生が良い方向に動き出した。マスターの言ったように、「幸せの連鎖」が始まったのだ。

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青山美智子さんの「ただいま神様当番」も、昔の私のような人たちが出てくる。

なにか楽しいことないかなぁ……。
あの人はいいなぁ、羨ましいなぁ……。
私はいつ幸せになれるのかなぁ……。
もっとえらくなりたいなぁ……。

そんなことを思いながら生きている、さまざまな年齢、立場の5人。
OL、小学生の女の子、男子高校生、外国人教師、ワンマン社長。

不満や愚痴は日常的で、他人と比較して落ち込んだり羨んだりする。
なのに、人に良く思われたいという自尊心や見栄はある。
どんどんマイナス思考に陥り、これではダメだと気づきながらも「きっかけ」がなく変われない日々を送っている。

ところが、ある日突然「きっかけ」がやってくる。
なんと、神様だ。

気がつくと自分の左腕に大きく「神様当番」と書かれていて、同時にえんじ色のジャージを着たおじいさんが現れる。自分のことを「神様」だと言い、「お当番さんはわしのお願いごと、きいて」と、彼らの左腕に住みながら「願いごと」を叶えさせるのだ。(火の玉みたいになって入っていく)

その「願いごと」は、「わしを楽しませて」とか「わし、リア充になりたい」とかで、実は本人の心の内にある「願いごと」だ。

神様に振り回されながらも、「きっかけ」をもらい、少しずつ変わっていく5人。
ちょっとした勇気やプラス思考の行動で、人生が良い方向に動き出す。まさに「幸せの連鎖」が始まっていくのだ。
ちょうど私がマスターの言葉で動き出した時のように。

愚痴や不満、見栄や虚勢、嫉妬。
誰だってそんなみっともない自分、みっともない心を多少なりは持っていると思う。
大事なのは、そんな「みっともない自分」を受け入れ、向き合うことなんじゃないだろうか。
それは勇気のいることだけど、その一歩で人生は良い方向へ動き出し、輝き始める。
この物語の5人が「みっともない自分」をさらけ出したとき、私にはそれがすごくカッコよく見えた。

青山美智子さんらしい、現実とファンタジーのバランスの良さが絶妙な物語。
読み終えた後、ほっこりして、心があたたかくなって、「人生って悪くないな」と、そんな気持ちにさせてもらえた。

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