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ゆるくてホットなスパイス愛。自由が丘・香辛堂にて

チャイやカレーなど、すっかり市民権を得たスパイス。しかし、まだまだその奥深さは知られていないのでは。そこで今回は、スパイスを愛するあの人の元を訪れてみた。

話題を生み出す店が多く立ち並ぶ自由が丘エリア。そこで、10年以上に渡って「スパイスだけ」で勝負している珍しい店がある。その名も「香辛堂」。小さな店内には、所狭しとスパイスが並べられており、まるで博物館のような、好奇心をくすぐられる商品が揃っている。

「常時、160種類以上のスパイスを置いています。いろいろと眺めたり、香りを比べたりして購入していただくのもいいですし、『辛みを強くしたい』『このスパイスをプラスしてほしい』などのリクエストがあれば、調合してカスタマイズもできますよ」

朗らかな様子で答えてくれたのが店主の勝又聖雄さん。飲食業界では“スパイスマジシャン”として知られ、老舗和菓子店とのコラボや、有名レストランのオリジナルスパイスなども制作している。

「ここでお店をはじめて15年目になるんですが、最近はコラボのものとか、スパイスカレーのブームも影響しているのか、若い人たちもけっこう来てくれますね」

勝又さんによって調合されたカレースパイスも。最近ではマドラスカレーをはじめとする南インドカレーがトレンドなのだとか。

勝又さん、この店を始める前はクラブイベント、舞台、クラシックといったイベントを企画する会社を経営していた。スパイスの香りがすこしも漂ってこないような異業種からの転身だが、何がきっかけでハマっていったのか。

「25年ぐらい前のことでしたね。インドを放浪していた友人と登山をしたときに、夜寒いから『チャイ』を作ってくれたんです。飲んでみたら、温まるどころか汗が出てきて、『なんだ、これ!?』と。今考えたら、ジンジャーがいっぱい入ってるだけだったんですけど(笑)。とにかく、自分の中でビッグバンが起こったんですよね。」

「スパイス=辛い」というイメージがあるが、実は辛味のあるスパイスは全体の2割程度なのだそう。

しかし、今では市民権を得た「チャイ」だが、当時はスターバックスコーヒーが日本に上陸するかしないかという時期。まだまだ知名度には欠けていた。さらには勝又さん自身も、旅先で出会ったスパイスが当たり前に市場に並ぶ景色と比べて「日本でスパイスを買えるところが全然なかった」と“スパイス後進国”ぶりを痛感していたのである。

「だからずっと専門店をやろうとは思っていて、仕事のいろいろなことから離れて『好きなことやりたい』って思ったタイミングで、お店を立ち上げました」

とはいえ、お店をはじめた15年前は、「チャイラテ」を出すことで知られるスターバックスコーヒーもまだ新興勢力。スパイスも今ほどは身近ではなかった。開店当初は「やはり大変でしたね」と振り返るが、料理好きの口コミやメディアでの紹介をきっかけに、少しずつ訪れる人は増えていった。


「好きなスパイスをひとつ挙げるならカルダモン。白湯に2粒ほど浮かべると、香りもいいしリラックスできますよ」

現在、勝又さんは東京と、“ある場所”で二拠点生活を送っている。スパイスが結んだ縁で見つけた場所だ。

「昨年から島根県の松江市に家を借りました。スパイスのワークショップで何回か行っていたんですが、非常に景色が綺麗な場所で……何もないとも言えるんですけど(笑)。でも、海の幸、山の幸といった食材、人がとにかく素晴らしいんですよね。ポテンシャルがめちゃくちゃ高いわりに、気付かれていないのも何か良いなって」

そんな松江には、家を借りるだけでなく、「BOABOA(ボアボア)」というカフェも松江城の近くにオープン。山陰地方では珍しいヴィーガンフードを食べられる店として存在感を示している。もちろん、勝又さんをスパイスの世界に引き込んだ「チャイ」の種類も豊富に取り揃えている。

原点となったチャイとの出会いから20年以上。勝又さんは未だに新たな発見があるという。彼もまた、自由が丘と松江、それぞれの土地で人々とスパイスをつなぎ続けている。

SHOP DATA

香辛堂

東京都目黒区自由が丘1丁目25−20
Google Map
■オンラインストア
https://koushindo.net/
■Instagram
@koushindo
■営業時間
11:00~19:00
■定休日 
水曜・第2・第4木曜・不定休あり






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