映画 オートクチュール
なんて美しくて、華やかで、情熱的なんだろう!
職人気質でちょっと怒りっぽいエステルと移民二世のジャド。
二人はぶつかり合いながら新しい人生を紡いでいく…。
ディオール1級クチュリエールのジュスティーヌ・ヴィヴィアン監修。
ナタリー・バイ(現在74歳)が品があって美しい!
フランス発、世界的に有名なラグジュアリーブランド・ディオール。
華やかで美しいアイテムの数々、その“作品”が作られているアトリエの“裏側”もまた華やかだ。
誇り高き一流の職人たちが集まるそのアトリエでは
“1ミリのズレも許されない”
華やかだが、とても厳しい世界。
真っ白で純白なアトリエは鏡、お針子、職人たちの心そのもの。
ディオールのオートクチュール部門のアトリエ責任者を務めるエステル。
彼女は次のコレクションを最後に引退することを決めていた。
ある朝、エステルは地下鉄でハンドバッグをひったくられる。
犯人は移民二世のジャド。
オートクチュールに人生のすべてを捧げてきた孤独なエステル、自分はどう生きていけばいいのか、歩むべき道を見失っていたジャド。
それは“最悪の出会い”だった。
これは希望の物語、温かくて、とても美しい物語。
エステルを演じるのはフランスの大女優ナタリー・バイ、ジャドを演じるのは若手注目株のリナ・クードリ。
監修を担当するジュスティーヌ・ヴィヴィアンは映画の衣装デザイナーとして活躍、現在はオートクチュールのアトリエで働くディオール専属クチュリエール。
衣装を担当したのはシャルロット・ベタイヨル。
ディオールの初代“バー”ジャケット、“フランシス・プーランク”ドレス(幻のドレスといわれている!)、ムッシュー・ディオール直筆のスケッチ画など、ディオール・ヘリテージに保管されていた数々の貴重なアイテムが劇中に登場する。
“ジャドへ、すべての心優しき女性たちへ”
そのアトリエはパリ、モンテーニュ通りにある。
実力さえあれば、出身、学歴など関係なく、誰もが活躍できる場所。
そこは美が生まれる場所。
心を健やかに、美しくあれ(作中での表現は態度)
美しい物を生みだすためには、見た目(美意識)や技術が大事。
だが、その前にまず心が美しくなければいけない。
心や気持ちというものはその人の行動、立ち振舞いすべてにあらわれる。
心が醜い人間はどれだけ見た目が良くても、醜い。
13歳からお針子になった生粋の職人エステル。
激情家で気難しい、仕事に対してストイックで厳しい…が、とても面倒見がいい。
決して悪い人ではないが、周りにいたら正直付き合いづらいかも…?
典型的な職人なのだ。
友達はバラだけ(名前はギロチン笑)
ヘビースモーカーでよく食べる、アメ、抗うつ剤が手放せない。
誇りをもって仕事に取り組むエステルにはストレスが重くのしかかる。
そんな彼女はナイキを馬鹿にし、化学繊維は絶対に認めない。
どれだけ寒くてもフリースなんか着ない!
ジャドは“ガガーリン団地”に住む移民二世。
ガガーリン団地とは映画“GAGARINE/ガガーリン”の舞台にもなったフランスの公営住宅。
フランスにもいわゆる“スラム”が存在する。
移民、難民たちが暮らす場所。
犯罪が多発するその地域の現状は2019年の映画“レ・ミゼラブル”でもリアルに描かれた。
ジャドはひとつ下の階に住んでいるアラブ系の親友と一緒に犯罪を糧として生きている。
滑らかで美しいジャドの指に才能を直感したエステル、彼女はジャドを見習いとしてアトリエに迎え入れる。
“引退までに、彼女を最後の弟子として、美の技術を伝えたい”
だが、激情家なエステルとおてんばで気が強いジャドは当たり前に衝突する。
その生い立ち、境遇が影響し、ジャドは人を信じることができない。
ジャドの強気な性格、人を信じれないこと。
それらすべてが災いして敵を作ってしまう。
ジャドを理解し、心配してくれる優しい先輩ミュミュ(クロティルド・クロー)
優しくて姉御肌、みんなから好かれている彼女はエステルの後継者。
彼女はジャドと同じガガーリン団地出身。
師であるエステルを慕い、周りにも自分(エステル自身)にも厳しい彼女を心から心配している。
ジャドに思いをよせるアブデル(アダム・ベッサ)、気さくで優しくて美しいディオール専属モデルの女の子など、ジャドにはアトリエで沢山の仲間ができた。
“敵もいれば味方もいる”
世の中のほとんどの人がきっとそう。
なかには本当に一人で戦っている人もいるかも知れないが…。
“自分は一人ぼっちだ”
それはもしかしたら、気づいていないだけかも知れない。
アトリエのみんなは優しい人ばかり。
だが、やはりどこにでも一人はいる、少し癖のある先輩。
“嫌なやつ”
でも、そういう人も本当はみんなと仲良くしたいと思っている。
エステルには娘がいる。
エステルは自分の母親と同じ過ちを犯した。
エステルとジャド、二人は母娘のように、親友のように。
なんて美しくて、華やかで、情熱的。
無性に母親に会いたくなりました!
“ハサミを落とすと悪運を招く、不吉”
“指を怪我すると結婚できる”
アトリエには香水係がいて、みんなげんを担ぎ、縁起を担ぐ。
一流のプロほど、迷信を信じて気にしたり、それを力に変えたりするものですよね。
アトリエでの労働時間は一日14時間、お給料はそこまで良くない。
仕事はお金じゃない、その仕事に誇りをもてるかだ。
その仕事を生き甲斐にできるか、人生を通してできる仕事なのか。
自分もそうなりたい、ありたいと思う。
みんながみんなやりたいことを仕事にできる訳ではない。
だが、やっぱりそこを目指したい。
“自分を不幸せにしないために、やりたくないと思ったらやめること”
ナタリー・バイのこの言葉はまさにそう。
やめないことが正義ではないのだ。
仕事に関していえば、お金を稼ぐための仕事も生きていくためには必要。
でも、本当に大切なことが別にある。
ナタリー・バイは失語症のため、14歳で学校を中退している。
それを乗り越えて女優となり、入れ替わりが激しい世界で50年以上第一線で活躍し続けている。
エステル、ジャド、ミュミュ、アブデル、みんながそれぞれ問題や悩みを抱えている。
それぞれに得意、不得意があり、居場所がある。
これは希望の物語。
エステルには家族、本当の意味での人との繋がりができた。
引退後の彼女の生活も、きっと華やかで楽しいはずだ。
自分はブルガリが好きなんですけど(たまーにしか買えないが)
一流の職人たちがこれだけ手間や時間をかけてデザインし、作っていることを思えば、あの値段も納得がいきますね。
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