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離島の怪奇体験

17年前くらいのこと。大学3年の夏休み、体育会系の部活に所属していた私は、部活の仲間3人と貴重なオフ期間を利用して伊豆諸島を訪れた。

なぜ伊豆諸島になったのかは今となっては思い出せないが、泊まる場所は決めず、行き当たりばったりの旅行にするつもりで、高速ジェット船のチケットだけを買い、東京湾を出発し、離島へ向かった。

初日は神津島を訪れた。

神津島

きれいな海で夢中になって遊んだ。みんなでカニを何匹か捕まえたので、夕飯で食べてみることにした。ヒッチハイクをして、宿泊先となるキャンプ場に何とか辿り着いた。ヒッチハイクで乗せてくれたおじさんからは、カニを食べたらお腹を壊すからやめたほうが良いと言われ、渋々海に逃した。

売店で食材を買い込み、みんなでカレーを作って食べた。

みんなで火を起こし、作ったカレーは格別に美味しかった。夕食後はお金を払い、キャンプ場内のバンガローに泊まった。


翌日は、高速ジェット船でとなりの新島へ向かった。

新島に到着すると、観光パンフレットに記載されていた新島名物の湯の浜露天温泉に浸かった。

前日、お風呂に入っていなかったため、とても気持ち良かった。無料もありがたかった。

港の反対側にある羽伏浦海岸へ歩いて向かった。

貧乏旅行のため、途中で売店に立ち寄り、おにぎりなどを夕飯用として購入した。

海岸にある東屋で、夕飯を食べ、野宿をすることになった。

友人の一人がコンビーフを買ってきていて、少し分けてもらって食べたが、その時はやたらとおいしく感じた。

夕飯の後、東屋近くのトイレに友人Aと友人Bが行った。

トイレから帰ってきた友人Aが青ざめた顔で、「さっき、トイレで小学校低学年くらいの女の子を見たんだ。」と言ってきた。

友人Bが「えっ、まじで?おれも見たんだけど。」と反応した。

夜中に小さな女の子が一人でいるはずはなく、みんなでゾッとした。海難事故にでもあってしまった女の子の霊がいたのだろうか?確認しに行ったが、女の子を見つけることはできなかった。

昔から大の怖い話好きだった私は、友人が心霊体験したことを恐れる以上に興奮してしまった。

しばらくすると、パトカーが巡回に来て、警察官に東屋で野宿することを注意されため、場所を移動しなければならなくなってしまった。

悩んだ挙句、近くにあったキャンプ場で野宿することになった。

ちゃんとテントを張ってキャンプしている人たちもいたが、我々は芝生を布団がわりにバックを枕にして寝た。

夜風が強く吹き、木々が激しく揺れ、一層不気味さを醸し出し、なかなか眠りにつくことができなかった。

先程の心霊体験も忘れられず、ほとんど寝つけない状況で朝を迎えた。


翌日、午前中の船便で帰った。

旅行を終えた後、バイト先の友人たちにさっそく新島での心霊体験を話した。

バイトの友人たちも、私が話す心霊体験を信じて驚き恐れた。

今まで憧れていた実体験に基づく怖い話を、自分ができたことに高揚した。小さな頃から怖い話が大好きで、テレビで怖い話が特集されるたびにかぶりついて見てきた。しかし、自分には霊感がなく、怖い体験というもの自体がなかったからだ。


半年後、伊豆諸島旅行に行った友人たちからカミングアウトされた。

新島での心霊体験は、全て芝居だったと。

私が知らないところで、3人で打ち合わせをしていたらしかった。

私があまりにもドッキリを信じ込んでしまったため、なかなかカミングアウトできなかったとのことだった。

友人3人に騙された悔しさよりも、心霊体験でなかったことへの落胆のほうが大きかった。

今では、良き思い出であり、笑い話でもある離島での一夏のできごとだ。

#とは #怖い話  




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