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16歳の私は彼女に恋をした|第6話|前編

2学年が終わりに近づいた頃
学級担任との進路面談が行われていた。

私の第一志望は関西にある大学で、
地元から離れて1人暮らしすることになる。

"大学で留学していつか海外で仕事がしたい"


その夢に近づけるために選んだ進路だった。

私と親しいクラスメイトの4人は、1人は東京の難関大学、残る3人は地元の国立大学を目指している。

もし進路の希望が叶えば、
私はみんなと離ればなれになってしまう。

「みんなで第一志望に合格したいけど、寂しくなるよね」

1人がそう言った。
正直、私も3人と同じ地元の大学を目指して残ろうか悩むほどだった。

だけど私にはどうしても夢みている"憧れ"があった。

「寂しくなんかねえだろ!2人ともいつでも地元に帰ってこいよ!」


そう言って私を励ましながら背中を押してくれた。

とうとう最後の進級を迎えた。

3学年に上がった私たちは同じクラスのままだった。

私たち5人組は予備校に通い始めて、
以前のように放課後を楽しむ余裕はなくなってしまった。

4人が徐々に成績を上げていく中、
私だけが思うように伸びずに悩んでいる。

第一志望 某大学 判定


夏休みを目前にしてこの結果だった。

「私、もうだめかもしれない」

模試の結果を握り締めて思わず涙を滲ませていた。

「元気だせよ。今年もみんなで夏祭り行こうぜ」
「いいね、最後の思い出作りしようよ!」

今年もまた5人揃って花火を見ることになった。


夏祭りの日

私は今年も浴衣を着て会場に足を運んでいた。

人で混み合うなか4人がいる待ち合わせ場所へと向かう。

「───!」

ふいに誰かに呼ばれたような気がして後ろを振り向いた。

まわりを見渡しても人に紛れて誰なのか分からなかった。

「気のせいか…」

私はそう思い直して友だちのもとへと向かった。

今年も花火は最高に綺麗だった。

「これで終わりかー、高校最後の夏」

1人がそう言うといつもは盛り上げ役の彼も
今日ばかりはしんみりと花火だけを見つめていた。

私は色鮮やかな花火を見ながら、
胸の奥に燻っている"何か"を思い出すような気がした。

胸が締め付けられるように鼓動が高鳴る。
花火の音が胸に響いて余計に苦しくなった。

「おいー!先に泣いたらダメだよ!」

私は思わず涙をこぼしてしまった。

だけどそれは5人で過ごす最後の夏への寂しさとは違っていた。


秋も終わりに近づいた頃
いよいよ最後の進路希望調査が行われた。

あれから私は少しずつ成績を伸ばして
やっとの思いで「B判定」に手が届いた。

「第一志望はこのままでいきます」

私は関西にある大学に覚悟を決めた。

寒さは厳しくなり、吐く息が白くなっていた。

いよいよ年を越して受験シーズンに突入した。
私たち5人はみんなで初詣に行き、合格を祈った。

「絶対に桜を咲かせような!」


そう約束して、それぞれの本番へと挑んだ。




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