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【読書】『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ

透明感のある静謐な文体で語られる、ここではない世界線の物語。
その静かな文体とロマンティックなタイトルに反して、内容は衝撃的。

淡い空気感の中、
静かに流れる穏やかな日常。
物語は、とても滑らかにスタートする。

けれどほどなくして、
わたしたちは奇妙な違和感を感じることになる。

聞こえるはずのない音が聞こえるような、
映るはずのものが映っているような、
そんな、体の芯がひやりとするような違和感。

わたしたちはその違和感の正体を掴もうと、耳を澄まし、目をこらす。
けれどその違和感の正体は、するりするりとすり抜けていく。
かくれんぼの上手な子どものように。

(あらすじ)
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。
キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。
図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。
彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―。

全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。

(Amazon/「BOOK」データベースより)


本書のオマージュのような作品が、
いまではいくつもある。
それはきっとこの本が、いくつものオマージュを生まずにはいられないほどの問題提起をしたからなのだろう。

底知れぬ深淵を覗きこんで身動きが取れなくなるような読後感なのに、やっぱり本棚に置かずにはいられない、おそらく一生忘れられない珠玉の名作。




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