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本を読むことと、ものを書くことが好きです。 有吉佐和子文学賞入賞。社会福祉士・保育士・ケアマネージャーを経て、現在専業主婦。子ども支援コミュニティに参加中。 サイトマップはこちらです→ https://note.com/blue_ocean_gem/n/n0e4b4988fcc8

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    素敵なクリエイターさんたちの、素晴らしい記事をまとめています。どれもおすすめしたい記事ばかり。

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    わたしの大好きな本だけを並べた部屋。 いつか壁一面の本棚みたいになる日を夢見てニマニマしています。 「ふーん、どれどれ」くらいのスタンスで気軽に立ち寄ってみてくださると嬉しいです。 もしもこの本棚の中にあなたのお好きな本や気になった本があったなら、さらに幸せです。

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    感じたこと考えたこと、わたしが書いた記事をまとめています。読んでくださったなら、うれしいです。

  • 『おはよう、私』(短編連作小説&音楽)

    小説と音楽でひとつの世界を作り上げる『おはよう、私』をまとめて読める無料マガジンです。 音楽から小説が生まれ、小説から歌詞が生まれ、糸をつむぐように織り重なってできた、連作短編小説&音楽『おはよう、私』。 この作品が、どなたかの心に届きますように。

  • 絵本部屋(大人向け)

    どちらかというと大人のかたに響く絵本を集めたお部屋です。

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「おはよう、私」①(短編連作小説 & 音楽)第1話

第1話・瑠璃  朝。  遠く聞こえるアラームの音が意識をたたく。  細く開いたカーテンの隙間から、細い光がこぼれている。  ああよかった今日はいい天気なんだなと、ぼんやりした頭で反射的に考える。  「よかった」と思ったのは仕事で人に会いに行く予定があるからで、晴れていれば移動がらくだからだ。雨ならば広がってしまう細いくせ毛も、今日はきっと大人しく、肩で揺れてくれるだろう。  ほとんど無意識に、頭の中で手帳を開く。  ベッドに横になったまま、今日の予定を確認していく。

    • note創作大賞2024、中間選考通過できませんでした~🥹 多くの方に作品に触れて楽しんでいただけたことが何より最高の喜びでした。 今回は結果に繋がりませんでしたが、また次の挑戦を楽しみたいと思います✨ 中間選考を通過した皆さま、おめでとうございます✨ 応援しています!

      • 女友達とのお喋り ー 『シェニール織とか黄肉のメロンとか』/ 江國香織

        江國香織さんの、『シェニール織とか黄肉のメロンとか』を読んだ。 ここに描かれているのは、女性たちの目からみた世界だ。 もちろん男の人には男の人の感覚や真実があるに違いないのだけれど、わたしは女なので、彼女たちの言い分に肌感覚レベルで共感してしまう。 彼女たちが語る世界。 その手触りや肌感覚まで伝わってくる言葉はどれも秀逸で、あまりに言い得て妙なので思わず笑ってしまったりもする。 まさに、女友達とのお喋りだ。 くだらなくて他愛なくて、でも時折深くて切なくて、つまりは、すご

        • 底の知れない物語-原作『風の谷のナウシカ』

          何度読んでも読み終えた気のしない物語、というものがあるけれど、『風の谷のナウシカ』はわたしにとって、まさにそういう物語だ。 映画版の同作はご覧になったかたが多いと思うけれど、原作は、映画版とはまるで違う。物語の背景も奥行きも、ストーリーさえも。 たとえば巨神兵ひとつとっても、その存在の意味深さがまるで違って、初めて原作を読んだ時には仰天した。 なにしろ、子どもの頃からDNAに刻まれてしまうのではないかと思うほど何度も観てきた映画版『風の谷のナウシカ』では、巨神兵は「意思を

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        「おはよう、私」①(短編連作小説 & 音楽)第1話

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        • 女友達とのお喋り ー 『シェニール織とか黄肉のメロンとか』/ 江國香織

        • 底の知れない物語-原作『風の谷のナウシカ』

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          なかなか暮れない夏の夕暮れ ― 夏に会いたくなる人々

          江國さんの描く夏が好きです。 夏を描くとき、暑さではなく、暑さの中でしか感じられない涼しさを描くところが好き。 暑いからこそ涼しさがこんなに嬉しいんだもんなあ、と思う。 江國さんは、人生の幸福や愉しみを描く天才だ。 『なかなか暮れない夏の夕暮れ』に描かれる50代の男女も、人生の幸福な側面を見ようとする。 夏のさなか、暑さを嘆くのではなく涼しさを楽しもうとする。 「なかなか暮れない夏の夕暮れ」、それは実際の夏の夕暮れのことだけでなく、人生の後半に差しかかった彼らの、

          なかなか暮れない夏の夕暮れ ― 夏に会いたくなる人々

          蝉時雨の読書 ―『八月の御所グラウンド』によせて

          図書館に予約して、待つこと半年。 「予約本が届きました」とやっと図書館から連絡がきたのは、「ぜひ8月前半中に読んで」と知人からアドバイスをもらった翌日のこと。 あまりにタイムリーだったので、読んでいた併読本をすべて脇に置き、届いたばかりの『八月の御所グラウンド』を読んだ。 あちらこちらで「おもしろかった」という感想を見聞きしていた直木賞受賞作。 お盆直前に読む『八月の御所グラウンド』は、率直に言って最高だった。 人生は有限で、生きている今という時間がどれほど貴重かとい

          蝉時雨の読書 ―『八月の御所グラウンド』によせて

          創作大賞2024は、もうすぐ終わるけれどーあとがきにかえて

          note創作大賞2024の募集が、5日前に終わりました。 チャレンジされたみなさま、本当に本当に、お疲れさまでした! ここnoteの世界のハイレベルなみなさまと一緒にこのお祭りを楽しめたことは、心の底から楽しく、わたしの人生の大切な経験のひとつになりました。 これはきっと、わたしにとって、死ぬまで忘れない体験。 「死ぬまで忘れない」なんて、あまりにも大げさな言葉だなあと、自分でも思います。 でも、本当に心から、そう思うのです。 なぜそこまで思うのか、今回の記事ではそ

          創作大賞2024は、もうすぐ終わるけれどーあとがきにかえて

          「おはよう、私」⑤(短編連作小説 & 音楽)〜素晴らしいアーティストが加わりました(完結編)

          『おはよう、私』(フルバージョン)   うた:坂本櫻 / 詞・曲: Jaga   小説:さち 一曲のピアノ曲から小説が生まれ、小説から歌詞が生まれ、糸を紡ぐように織り上げた短編連作小説&音楽、『おはよう、私』。 このたび素晴らしいアーティストを迎え、この作品に歌声が加わりました。 それが、冒頭で聴いていただいた『おはよう、私』です。 シンガーソングライター 坂本櫻  歌ってくださったのは、プロのシンガーソングライター、坂本櫻さん。 ピアノ曲と小説のコラボ作

          「おはよう、私」⑤(短編連作小説 & 音楽)〜素晴らしいアーティストが加わりました(完結編)

          noteの路地裏で

          しばらくご無沙汰していたnoteの街。 戻って早々、コニシ木の子さんの「なんのはなしですか」の路地裏に迷い込んでしまった。 路地裏の入口となったのが、こちらの記事。 ↓ #なんのはなしですか のハッシュタグの生みの親(たぶん)、コニシ木の子さんの文章に、まずやられてしまった。 まじめな文章かと思いきや思わず笑ってしまうその絶妙なワードチョイスに、知性とただ者じゃない感が滲んでしまっている。 村上春樹のエッセイにも似た面白さ。 わたしには絶対に醸し出せないその雰囲気に

          noteの路地裏で

          「おはよう、私」④(短編連作小説 & 音楽)ピアノソロ編

          短編連作『おはよう、私』をお読みいただき、ありがとうございました。 この3つの物語には、根底を貫いて流れる一曲の音楽があります。 第3話で青磁の背中をやさしく押した、この曲です。 ↓  作詞・作曲・演奏すべてが Jaga さんの手による、この素敵な楽曲。  もともとは、歌詞のないピアノ曲でした。  その優しくうたうようなメロディーからインスピレーションを得て、小説『おはよう、私』は生まれました。  そして嬉しいことに、この物語がまた、作曲者である Jagaさんにイン

          「おはよう、私」④(短編連作小説 & 音楽)ピアノソロ編

          「おはよう、私」③(短編連作小説 & 音楽)第3話

          第3話・青磁  朝。  スマホのアラームで目が覚める。  カーテン越しに伝わる外の世界はまだ薄暗く、僕は小さくうめく。  うう、なんだかいい夢を見てたのに。  なんでこんな薄暗い時間にアラームが鳴るんだ。  さらさらと崩れていく夢のしっぽを追いかけてもう一度寝てしまおうと思った刹那、今日が春休み明けの一日目であることを思い出す。  スマホは7時を知らせていた。  耳を澄ますとかすかに雨の音がした。外が薄暗いのは、どうやら雨のせいらしい。  ぼうっと雨の音を聞いている

          「おはよう、私」③(短編連作小説 & 音楽)第3話

          「おはよう、私」②(短編連作小説 & 音楽)第2話

          前回のお話しはこちら ↓ 第2話・葵  朝。  アラームの音が意識に届く。  細く開いたカーテンの隙間から、細い光がこぼれている。  ああよかった今日はいい天気なんだなと、まだ半分眠りの中にいる頭で反射的に考える。 * * * *  昨日の朝は雨だった。  雨の日は、子どもを保育園に送るのにいつもより時間がかかる。  レインコートを着こみ、自転車の後ろに乗せた子どもに椅子ごとすっぽり雨除けカバーをかぶせ、自転車を漕ぐ。  たったそれだけのことなのに、どういうわけ

          「おはよう、私」②(短編連作小説 & 音楽)第2話

          『両手にトカレフ』ー 子どもであるという牢獄

          ブレイディみかこさんの『両手にトカレフ』は、子どもの貧困をテーマにした小説だ。 ティーン向けに書かれたような読みやすい文体ながら、内容は決して甘くない。 表題の「トカレフ」が拳銃のことだとわかったときには、ひやりとした。 銃を両手に少女が撃ち抜きたかったもの、それは一体なんだろう。 1.子どもの貧困生活保護費がドラッグに消えていく 物語の舞台は現代の英国、主人公は14歳の少女ミア。 アルコール&ドラッグ中毒の母親に代わり、9歳の弟チャーリーの世話を、ほぼ一人でしてい

          『両手にトカレフ』ー 子どもであるという牢獄

          言葉のひとひら『あなたのための短歌集』

          少し疲れたとき、わたしには詩や短歌が効く。 心も体もいっぱいで、もうこれ以上何も入らないと思うとき、詩や短歌をただ眺める。 なにが書かれているのか、意味は考えない。 ただ眺め、その言葉のもつ音が、頭の中を流れるままにする。 ぼうっとした頭を、言葉はただやさしく通り抜けていく。 ひらひらと通りすぎていく言葉たち。 考えることを要求しない言葉たち。 ふいに、言葉のかけらが反射する。 わたしの中のなにかが呼応し、言葉がひとひら、きらりとひかる。 なぜ光ったのか、何に呼応し

          言葉のひとひら『あなたのための短歌集』

          夜を歩く

          あれは沖縄のどの島だったろう。 本島からずいぶん離れた、小さな島だった。 一日思うさま泳いだあと、宿でシャワーを浴びて着替え、明るい夕方の空の下、バスに乗って夕食を食べに出かけた。 * * * * 沖縄のごはんと音楽とおしゃべりをたっぷり堪能してお店を出る。 バスの時刻表を見ると、次のバスまでまだ少し時間があった。 すでに陽は落ち、昼間の強烈な熱気は涼やかな夜風に変わっている。 歩くのも気持ちがいいかもしれないね、お散歩がてら次のバス停までぶらぶら行ってみようか。一

          夜を歩く

          2000円分のアイスクリーム

          「よかったら家族で食べて」とサーティワンアイスクリームのギフト券をいただいたので、2000円分のそれを持って、1駅先のサーティワンへ行く。 ショーケースの前で、思いきり悩む。 ストロベリーショートケーキ、キャラメルリボン、ラムレーズン。 ジャモカコーヒー、オレンジソルベ、白桃ブラマンジェ。 よりどりみどりのサーティワン、ああどれも美味しそう。 あまりに悩んでいるので、店員さんが次々に試食をくれる。 アマーロアフォガード、ティーオーレ、新作の抹茶きなこ。 ひとさじずつ手

          2000円分のアイスクリーム