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どこかの街で

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いつか・どこかの街の光景
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#車窓から

2018/11/27

2018/11/27

電車がよく揺れる。普段は意識しないが、意識を傾けてみれば地下鉄にも丘と谷があって、かすかに上下左右に振られる。
一度閉まったドアが再び開かれた。理由は語られなかった。人が一人ホームに出て、誰も動かないことを確認して元の位置に戻った。

先程まで、大学の記念会館で副学長とともに日本の電車の人間の密度の高さについて嘆きのようなただの愚痴をたれていた。地方の不活性についても議論を交わした。
人というのは

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2018/11/13

2018/11/13

不思議な建物だった。
おそらく用途は普通のマンションだが、その形が不思議なのだ。三階建てのアパートのうえに、それを90°回転させたものを乗せて、その上にさらに一軒家をひとつ乗せたような形をしていて、その上にまるで監視塔のように、そう、それはまるで要塞のようであって、てっぺんにすべてを見渡す監視塔のように、給水塔が聳えていた。

人の気配はなかった。さっきまで雨が降っていたこともあって、洗濯物もなく

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2018/06/24 (回想録 Vol.1: イタリア[1])

2018/06/24 (回想録 Vol.1: イタリア[1])

イタリア・ミラノ。快晴。
空港を出た特急はしばらくすると地上へ出た。点在する林、牧草の山、ところどころ崩れた古い倉庫、そこに書かれたペンキの落書き。人影は見えないが、人の生活がそこにはあった。
車内放送のイタリア語は、日本の鉄道と変わらぬ口調で聞きなれない言葉を流し続けていたが、乗換駅につくころには何を言っているのかだいたいを理解した。斜向かいに座っているゲルマン系の女性が、電話ごしによく笑ってい

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