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どこかの街で

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いつか・どこかの街の光景
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2019年11月の記事一覧

対岸【2019/11/25】

対岸【2019/11/25】

僕は河川敷が好きだ。
此岸があって、対岸がある。この世界があって、水面に写る反対側の世界がある。
どちらの対の世界も似たようでいてよく見ると違っていて、あちら側に行ってみたくなる。

こちらの世界では、雲があって、その隙間に空がある。
水面に写る世界では、輝く空の光がところどころに写っていて、他は、水。夕陽が沈んで、あちらの世界がぜんぶ鈍色になると、こちらの世界はもうすぐ夜だ。

しょぼ喫【2019/11/21】

しょぼ喫【2019/11/21】

しょぼい喫茶店に来た。

新井薬師前の商店街をずっといったところにある、変わったお店。木曜夜の店番は詩人の向坂くじらさん。

今日はそのくじらさんの店番最終日だった。正確には、しょぼ喫そのものがもうすぐ店仕舞いになってしまう。その人に会いに来た。

くじらさんは詩人でもポエトリーリーディングという少し変わったことをやっているのもあって、ワークショップなど刺激をたくさん与えてくれた人だ。
しょぼ喫に

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隠れ家【2019/11/18】

隠れ家【2019/11/18】

軽い頭痛とふらつきを覚えたままいつもの坂をくだる。今夜は久しぶりにうどん屋へ行こうと思い、地下鉄の駅を通りすぎて大通りをまっすぐに進む。

日本の町には、日本の町らしさというのがあって、それは歩道の広さかもしれないと思った。とりわけ、下町は道路の幅と歩道の広さ、建物の高さの比率が独特だ。見慣れた景色ではあるが、車道と歩道を区切る縁石、手前にある金属の柵。これはヨーロッパとは雰囲気が違うし、新宿や渋

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ルイボスティー【2019/11/15】

ルイボスティー【2019/11/15】

家でいつも飲んでいるルイボスティーを切らしてしまったので、お気に入りの紅茶店Teapondに買いにきた。このお店ではルイボスといっても、ルイボスをベースにドライフルーツや様々なハーブを調合したフレーバーティーを数種類置いている。ルイボス以外にも数十種類の紅茶やハーブもある。

ルイボスは四種類。
・シンプルなルイボス
・ジンジャー系のスパイスの強いブレンド
・ジンジャーと苺などをまぜたやさしい味の

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コーヒーヒヨシ【2019/11/07】

コーヒーヒヨシ【2019/11/07】

駅から歩いて数分のところに、ヒヨシという喫茶店がある。独特のフォントの組文字で作られた看板は遠くからでも目立つ。長く続いている喫茶店だそうで、ネットでも細々と根強い人気を誇る店のようだ。
隣にもひよしという居酒屋がある。5時過ぎではまだ開いていない。同じ名前だから、経営も実は同じで、昼はカフェ、夜は居酒屋にしているのだろうか、しかしそれなら同じ店舗を使えばいいような気もするので、違う店なのだろうか

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羽を持つものたち【2019/11/04】

羽を持つものたち【2019/11/04】

前にここを訪れたのは晩夏だった。日陰を抜けたときに射す陽光を思いながら住宅街を出ると、秋の訪れを強く感じた。

秋晴れ。昨日の雨もあって空気は澄んでいる。

橋の真中から川へカメラを向けていると、通行人が同じ方角を見つめる。あいにく何も面白いものがあるわけではない。

先日の台風で流されてきたのであろう流木の上で亀が交尾をしていた。倒木も流れ甲斐があるというものだ。

本流へ向かう小路はさらに秋め

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