土と火 マザーフッドが咲く展によせて 浦田(東方)沙由理(東京家政大学 期限付助教)2024・3・9-17 @なるせ美術座
3/11(月)安田早苗さんの個展「土と火 マザーフッドが咲く」@なるせ美術座にお邪魔させていただきました。早苗さんとはエコフェミニズムという思想(理論)をきっかけに知り合った仲で、お会いするのは2021年に講演に呼ばれて以来でした。
今回の個展はマザーピース・タロット(Motherpeace tarot)を基盤とし、そこから汲み上げてきた豊かな自然と女性の世界(土の世界)と、異様な火(原子力)がもたらす世界(火の世界)が表現されていました。それはまさにエコフェミニズムが行ってきた批判そのものだと私には映りました。
そもそもエコフェミニズムとは、自然破壊と女性の抑圧には共通の支配構造が存在するという認識に基づいて、生命の支配ではなく生命の尊重によって抑圧からの解放を目指す社会運動です。その理論によると、破壊と抑圧をもたらしているものには2つあり、1つは資本主義経済、もう1つは科学技術なのですが、批判のポイントは、それらの両方に家父長的支配構造が内在しているという点です。またその支配は軍事力によって成り立っています。その最たるものが核兵器です。火は人間を人間たらしめ、生活を豊かに彩るのに役立ってきましたが、火による支配は死の灰しか残りません。私たちが求めているのは何のための開発・発展・技術なのでしょう。
ここに来て、今回早苗さんがマザーピース・タロットを基盤とした理由が浮かび上がってきます。Mother=母、peace=平和です。タロットに描かれているのは女性の自然な営みであり、タロットの円い形は月を表す*といわれているそうです(*英語版wikipedhia、Motherpeace Tarotによる情報『タロットの文化史』)。それらの結びつきを理解した時、繰り返しの連続と空(彼方)に向けた広がりを感じました。
個展で展示されている、性を問わず育成する精神=「マザーフッド」がタイトルの絵には、人の動きが加えられています。自然な動きは美しい、そう思わせてくれるような描写です。私が好きな動きはスコップで土を掘ろうとする動作でした。なぜだかはわかりませんが、私は雪かきが好きで、雪かきにも通じる動作だったからかもしれません。
私にとってエコフェミニズムとは現在を問い直す批判軸です。いのちは自然なくしてはありえない、そんな風に考える人が増えたらいいなと思ってます。
【追記1】沙由理さんの他にも色々感想いただいてますが、あんどうさんが「マザーフッド」に触れておられるのをご紹介します。これまで、あまり光があたらなかった年齢の、普遍的女性像が創造できたと解釈しています。
【追記2】沙由理さんの講演を聞いて共感されていたMiyoshiさんが立ち上げた、生命の尊重の視点からの科学技術である、水素エネルギーを推進する会社です。
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