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2024人事トレンドワード「Voice」と「Trust」を『ヤフーの1on1』本間浩輔が解説

こんにちは、bizlogueです。

パーソル総合研究所が発表した2024年の人事トレンドワード3つ。そのうちの1つである「BANI(バニ)」に関して、bizlogueのメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者でもある本間浩輔が前回、前々回の2回にわたって解説しました。

今回は残り2つの人事トレンドワードである「Voice(従業員の声)」「Trust(信頼)」について引き続き本間が解説します。

コロナ禍を経た今の時代だからこそ、改めて重要となっている「Voice」と「Trust」。そして、その2つのワードに関わる1on1の役割とは?


「Voice」はエンゲージメントの「次」

本間 今回も2024年の人事トレンドワードについてお話したいと思います。前回は2回にわたって「BANI」についての話をしましたが、これのもとになっているのがパーソル総合研究所が発表した人事のトレンドワード2024。その3つのトレンドワードのうちの1つが「BANI」だったんです。では、あとの2つは何かと言いますと、1つは「Voice」

吉澤 「声」ということですか?

本間 はい。「Voice of Employee」という言い方をするのですが、「従業員の声」という意味を表しています。そして、「BANI」「Voice」に続く3つ目が「Trust」です。

吉澤 Trust、信頼という意味ですね。

本間 そうです。それでまず「Voice」ですが、これは決して今の概念ではないんですよね。

吉澤 え、違うんですか?

本間 ええ。僕が神戸大学の大学院に通っていたころに「それは『Voice』ですね」と、当時の先生からよく言われていましたね。

吉澤 その時からもう出ていたワードだったのですね。

本間 僕の指導教官だった鈴木竜太先生は「本間さん、それは『Voice』だね」という話をよくしていて「決して難しい概念ではない」と。逆に言いますと、なぜ今もう1回「Voice」なのか?

吉澤 そう、そこですよね。

本間 まず、最初の補足説明になりますが、パーソル総合研究所の人事トレンドワードは世界中の研究者にインタビューしたり、日本の人事担当者の人たちにアンケートを取ったりしながら真面目に作っているんです。その結果、もう1回「Voice」がトレンドになっている。そして、昔から言われていることがなぜ2024年に再びトレンドになったかと言いますと、「Voice」はエンゲージメントの「次」なんですよ。

吉澤 あ……! エンゲージメントの「次」というものがあるんですね。

定量から定性へ

本間 僕の理解で言いますと、エンゲージメントの前はES。従業員満足度だったと思います。

吉澤 ええ、そうですね。従業員満足度。

本間 従業員の満足度を測り、エンゲージメント、関係性へと続いたわけです。それで今や一部の企業においてはエンゲージメントサーベイの結果を役員報酬のポイントの評価にするくらいにまでなった。そしてその次に「Voice」が来た、というわけです。どういうことかと言いますと、「エンゲージメント」と「Voice」の違いは定量か定性か、なんです。

吉澤 なるほど。確かにエンゲージメントは定量で数値が出てくるから分かりやすかったという効果、効能がありました。それが定性になってきたと。

本間 エンゲージメントサーベイで1~5段階の数値をポン、ポンとつけるのではなくて、「従業員一人ひとりの声をもっと聞け」。こういうことになっているんです。ESからエンゲージメントになり、そして「Voice」へと移っている。従業員の働きやすさ、あるいは従業員は会社をどういうふうにしていきたいと思っているのか、会社の理念をどこまで理解しているのか――これらのことを数値のポイントではなく「声を聞け」、だから「Voice」なんですよ。

吉澤 そうか……素朴な疑問ですが、従業員の声を聞くというのはインタビューということですか? やり方はおそらく新しくなっていくものだとは思いますが。

本間 例えば、リーダーシップで言うのなら「聞き耳」ですよね。アンケートではなくて。

吉澤 あ、そうか。アンケートとはまた違うんですね。

本間 アンケートであれば自由記入という方法になりますが、大事なのは「声」なんですよね。どんなふうに語るのか、どういう背景でその言葉が出てくるのかというものがあるじゃないですか。だから、どうやって声を聞くのかと言われれば、それは1on1ですよねと僕は思うわけです。

吉澤 確かに1on1はその場で従業員の声をナマで聞いているわけですからね。

本間 ええ。ですから上長と部下だけではなくて、例えば1つ飛ばしてさらに上の人や、直属ではなく斜めの関係にある人とか、色々な意味で1on1を使えるのではないかなと思うんですよね。

吉澤 そうか……今の時点で「Voice」がどういうふうに表れてくるのか、僕自身もそうですが、まだイメージできない人もいるかと思います。ただワードとして「Voice」というものを頭の片隅に入れておいた方が良さそうですね。

本間 はい。ですので、これからを占うであろうトレンドワードということですよね。

新しい形の信頼が求められている

吉澤 では、2024人事トレンドワードの3つ目、「Trust」についてはいかがでしょうか?

本間 信頼、ですね。コロナを経て、会社と働く人との関係がちょっと変わってきつつありますよね。

吉澤 なんとなく直感的に分かる部分もありますが、もうちょっと言いますと?

本間 2つ、3つくらい要素があると思いますが、1つは大学、高校時代をコロナ禍の中で過ごした人たちが会社に入ってきました。その人たちは僕たちのようなベタッとしたコミュニケーションとは違いますよね。

吉澤 ベタッとした?

本間 例えば、飲みにケーションとかね(笑)。

吉澤 ああ、そういう「ベタッ」ですね(笑)。

本間 だって彼らはオンラインだから。

吉澤 そうか、なるほど!

本間 新人研修もオンラインですし、普段もオンラインがかなりのベースになっていると思います。それに座席もフリーアドレス。昔のように新人研修を1カ月、2カ月も同じ場所でギュッとやって、現場に配属された後も先輩の近くに座ってランチも一緒に行くぞというのとは違うわけですよね。だから、信頼も新しい形が求められていると思うんですよ。

吉澤 そういう観点ですと、今のような話をたくさん聞きますね。

本間 それで雇用の流動性も高まってきており、今の会社が嫌であればどこの会社にでも行けてしまう時代。だからこそ、やっぱり人間関係であったり信頼関係というものが重要になるだろうということで、繰り返しますが、日本だけではなくて世界中の研究者や日本の人事担当者たちがもう1回「Trust」なんじゃないかと、こう言っているというわけです。

全員出社か、それともリモートワークか

吉澤 ああ、だからそこから来ているのかな、最近はオフィスに従業員を戻そうという動きもあるじゃないですか。それはなぜかと言うと、要するに「Trust」といったものが危ういような感じになっていると。それを何とか解消するための手段として、以前のスタイルに戻そうという企業の決断はもちろんアリだと思います。片や、いやいや1回リモートワークになったし、それでメリットもあるし、それを続けていきたいし……というせめぎ合いや岐路が出てきますよね。

本間 間違えてほしくないのは、じゃあもうオンラインをやめて従業員全員が出社すればいいのかと言うと、そうでもないような気もするんです。もちろん、以前のスタイルに100%戻らないといけない会社もあれば、そうではない会社もあると思いますが、それだけではなくて、これからの時代に合った信頼の構築の方法があると思います。あと、なかなか見逃されているポイントがあって、それはフリーアドレスなんですよね。

吉澤 え、そうなんですか?

本間 はい。コロナ前は全員の固定席がありましたが、コロナ禍になって多くの会社がオフィスを返却しましたよね。

吉澤 そう、そう、返しました。

本間 それでコロナ後も以前のスタイルに100%戻していない企業はどうなっているかと言いますと、自分の固定席がないわけです。

吉澤 そうですよね。図書館みたいになっていますよね。全員出社しちゃうと座れない人も出てくるかもしれません。

本間 そういう時代だからこその信頼関係の作り方とか、上長と部下の関係値というものを考えないといけない。

吉澤 それは直面している問題ですよ。

本間 では、そういう時代に上長と部下が信頼関係をどうやって作っていくのか――そのうちの一つの方法として、もちろんそれ以外の方法がないというわけではありませんが、僕はやはり1on1がとても重要だなと思うわけです。

吉澤 そうですね。1on1という名前をつけるかどうかはともかくとして、それが起点となって何かを改善したい、あるいは何かを予防するという点で十分役に立つものですよね。今回、本間さんに解説していただいたVoice=従業員の声と、Trust=信頼。これの中身に関してはまだまだ大事なことがあると思いますので、また私たちの中で咀嚼してもう1回お話していきたいですね。

本間 はい。また、今回紹介した2つのトレンドワードに関して現場でどのようなことが起きているのか、読者の皆さん、ぜひ教えてください。


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