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多くの米農家が赤字で米を作り続けていることを知ってほしい

正月に地元の友達に近況報告の電話をした時、ふと農業の話になりました。
その友達は兼業農家で、仕事をしながら先祖代々続く田んぼを維持管理しています。
作っているのは米だけで、他の作物は作ってないとのこと。
そんな友達との会話の中で気になる発言がありました。

「米を作っても15万円くらい赤字なんだよね」

私の実家も元兼業農家ですが、そんな話は聞いた事がありません。
かなり気になる内容だったので、電話を切った後に色々と調べてみました。
それで分かったのは、米農家にとって今の状況はかなり厳しいということでした。

まとめるとこうです。

  • 少子化や人口減、食事の多様化などで米の消費量が減っている

  • 消費よりも生産数が多くて米が余っている

  • 米余りの影響で米の価格が年々下がっている

  • 作物売上に対して生産コストが割に合わなくなっている

  • 割の合わない事業かつ高齢化で担い手が少ないので将来性が見えない

赤字になってしまう問題は、直ぐに対処できるようなことではないようです。
今の状況で米農家が黒字を確保する方法は三つしかありません。

一つ目はもっと多くの米を作ることです。
変ですよね、米余りで価格も下がってるのに作って儲けるって。
利益率が低ければ大量に作って売ればいい、という薄利多売の考え方ですが、実際に沢山農地を持っている生産者は黒字の人が多いようです。

二つ目は他の作物を作ることです。
米を収穫した後の田んぼを有効利用すれば、麦や大豆などを作ることができます。
米以外の作物を作って売上を増やすというよくある技です。

ただし、作物を育てるためには地力の維持が必要なことを忘れてはいけません。
農地だからといって無理に作物を作りすぎると、土壌がやせて収穫に影響が出るだけではなく、下手したら売れない作物を作る羽目になります。
そのため、農家は肥料などにコストを掛けたりして収穫量を上げる工夫をしています。
インフレで肥料の価格も上がっているのもあって、収益性は悪化しているようですが、その辺を上手くやれば黒字が期待できます。
いっそ米ではなく、高利益率の作物を作るという手もありかもしれません。

三つ目は、独自の販売網を持つことです。
ほとんどの米農家は販売網を持っていません。
仮に持っていたとしても知人間での取引くらいでしょう。
なので、必然的にJAなどの組織に頼ることになります。
買取業者や機関に作物を売るのではなく、米農家自身が販売できるチャンネルを持てば、利益率を上げられるので収支が良くなりますよね。
更にブランド化が出来れば、販売価格も高く設定できるので収益率はかなり良くなります。

この問題の根本はとても簡単。
米の消費量が年々減ることによる需要不足が原因ですよね。
そんな状態で過剰生産をすると、更なる米価の下落に繋がってしまいます。
小さな米農家は現状でも厳しいですが、これ以上の米価下落になると廃業するしかありません。

しかし、廃業しても土地は残ってしまうので固定資産税は掛かり続けます。
また農地を適切に管理しないと雑草が生えて、作物を育てる地力が失われてしまうので、農地としての機能も失って作るも売るもできない不毛な土地だけが残る形になります。

一応その回避策は残されていて、農地を外部に委託するという技が使えます。
ですが、そこにも次のような問題があるんですよね。

私の友達の場合だと、持っている農地は山の中にあるんです。
つまり、狭くて小さい田んぼを複数所有している状態だと、農作業を機械で効率化できないので業務委託してくれる人が見つかりません。
運よく委託先が見つかったとしても、農地関連の諸経費を賄える収益を出すことは難しいようです。
宅地に転用するという手もありますが、土地改善や登記関連の手続きで大きな費用が掛かるのと、立地が悪い土地は宅地にしても売れにくいわけです。
しかも、売れなかったら農地よりも高い固定資産税を支払うことになります。

ここまでの内容で、米農家がかなり厳しい状況というのは伝わりましたよね。
『お金を払って重労働している人がいるということ』
『農地を売るにも売れない状態にあること』
私は、今更ながらそれらを知ることが出来ました。

私の実家はJAに加入していて、今は専業農家を営んでいます。
JAから業務委託を受けて約6ヘクタールの農地の面倒を見ている状態です。
手持ちの農地も持っていますが、そちらは二毛作で米以外に麦や大豆などを作り、国から補助金を貰っていて、その両方のおかげで黒字を確保できているとのこと。
ただし、天候不良による収穫量減少や農機具故障の修理費などで収益が悪化し、かなりきつい状況が続いていると父から聞きました。

今となって気付くのは、小さい頃に農作業を手伝ってお小遣いを貰っていたのも立派なビジネスだったなと。
父曰く、昔は米価も高かったので、作れば作るほど儲かっていたらしいです。

事業なので浮き沈みがあるのは当然ですが、米価のチャートを見るとずっと右肩下がりなんですよね。
農機具の改良で仕事が楽になったとはいっても、採算が合わなければどうしようもありません。
一般企業と違って農業は事業が大きく跳ねることはありませんし。
作れば儲かってた時代から生き残る戦略が必要な時代に変化していて、今はそれに対応できない人が苦しい思いをしている状況だと言えます。

ただ今後どうなるかは分からないのが、ビジネスの良いところでもあり怖いところでもあります。
例えば戦争が始まって外国から食料を輸入できなくなった場合、国内で作れるものを食べるしかありません。
そうなると米の消費需要が上がり、米価も一気に持ち直す可能性が高いです。

人口の話で言うと、日本は年々人口が減っていますが、世界レベルで見ると人口は増えているんですよね。
そういうのもあって一部では食料危機が起こると騒がれています。
本当に食料危機が起きて輸入が制限されたら、私達が頼れるのは日本の農家だけです。

意識的に国内産の食材を消費することが大事で、それこそが日本の一次産業を救うことに繋がります。
消費が増えれば、いずれ価格にも反映されるはずです。
私自身、元々国内産中心の生活を心掛けていましたが、今回の件でより意識しないとなと感じました。

暗い話ばかりしましたが、国家レベルでもこの課題に向き合ってくれているので、それにも期待したいですね。
日本米の輸出強化とか、米の加工品の開発支援とか、色々頑張ってくれているようです。

いずれ経済が上向くことを信じ、黒字確保の努力をし続けるしかないという米農家の実状。
それを知ってほしいと思って記事にしました。
よければ今日はお米を食べてください!
以上でこの話は終わりです。

この記事を仕上げるのに参考にしたサイトはこちら。

最後に農林水産省がやっている消費促進用のPRサイトのリンクを貼っておきます。

びじさばの自己紹介記事はこちら。

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