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ギフト

好きな人は私が喜ぶことばかりする。 免許を更新したその日に免許証の写真を送ってくれたり、仕事が始まる直前に連絡をくれたり、私をイメージして甘い林檎のお酒を買ってきたり。こんな些細なことで私の心を掴んで離さないんだからずるい。実際、踊り出してしまいそうなくらい嬉しかった。きみねえ、少しくらい手加減ってものを知りなよ。私が簡単すぎる?免許証くらいで大袈裟だって?ここまで夢中にさせておいてよく言うよ。 彼は私を喜ばせることが好きだと言う。あの日はこんな反応を見せたから、今度はあ

    • 日記 薄紅のまどろみ

      「君といるとぐっすり眠れるよ」 初めて付き合った男の子、初めて寝た男、好きな人、あとは誰に言われただろうか。 自分と寝ていない時の彼らを知る術はないから本当か嘘かは分からない。そういった類の睦言なのかもしれないけれど、自分よりはやく眠りに落ちていく男の顔はいつも幸せそうで、そのまま死んでしまいそうで、ずるいと思う。 映画「イエスタデイ」を好きな人と観た。ビートルズが存在しない世界で唯一そのバンドを知る男となってしまった、冴えないミュージシャンのお話。 学生時代から今まで音楽

      • 7年の人

        わたしの言うこと お願い届かないで 全然わかんないよって 笑う顔が好きだから 新人戦なら一年だけ どこからどこまで 泥舟からの救済チケット 何を言ったって言わなくったって あなたが正しい わたしがかわいい 特別じゃないから ずっと見ててね どこに行ったって行かなくたって 澄んだ足音だけで見つけられるよ 呪いが効かない お願い届いてね 信じちゃダメだよなんて 笑われても困るけど 延長戦あと一年だけ どこからどこまで 空から落ちる蜘蛛の糸 何を言ったって言わなくったって

        • 2020.4.18 語録

          就職以来初めて、ほぼ職場と家の往復しかしていないこの数日間。限られた時間の中で好きな人と言葉を交わす時間も減ってきた。最近好きな人から言われたことで印象に残っているものを書き残そうと思います。 ①仕事中 「私と対等に議論ができるくらい、ちゃんと勉強してきてくださいね」 ぐうの音もでない。ぐう。 一つだけ反論させてもらうと、最初は議論を吹っかけるつもりなんてなかったんだ…相談から議論に発展して、ヒートアップした末にこの言葉でトドメを刺されたというわけです。ええ頑張ります…。

        ギフト

          2020.4.6 離島の箱

          好きな人と遠出する約束したのは、彼とはじめてホテルへ行くより前のことだった。住んでいる土地から車で数時間、船で小一時間もあれば辿り着ける小さな島。観光できる場所はあまりないようだけど帰りの船の時間が早いから日帰りではゆっくりできないし、せっかく仕事を休むなら泊まりでいきましょうと先に提案したのは自分だったか彼だったか。しばらく経って、もしあの日より前にホテルへ行かなかったら、体の関係がない状態であの旅行を迎えてしまったらどうするつもりだったの?と意地悪に聞かれたからきっと私だ

          2020.4.6 離島の箱

          2020.3.29 不要不急の痴話喧嘩と見えない動物たち

          こんな時世だけれど、恋人と遠出をすることにした。もちろん移動手段も行程も行先も練り直し、最悪の事態について話し合った。私たち明日にはもう会えないかもしれないよ。そうだね、今日が最後かもしれない。そんな言葉が引き金となって、ホテルで入手した消毒用バンドジェルをお互いの指先に塗り込んだ。世界が終わる直前の恋人たちはきっとこんな風なんだろうな。 出発前日の夜、恋人から不穏なメッセージが届いた。「裏切られることは気にしていません」「他人には期待していないので全然平気です」………。申

          2020.3.29 不要不急の痴話喧嘩と見えない動物たち

          2020.3.27 毒と皿

          毒も食らわば皿までよと聞けば、毒も皿もおいしそうですねと思う。毒を盛られてもまず気づかないし、仮に気づいてもおいしければそりゃあ皿まで完食するだろう。私の皿にはおいしい毒、おいしい悪事をじゃんじゃん盛りつけてほしい。そもそも、毒と皿って字が並ぶとなんだかご馳走感がありませんか?「ドクトサラ」、きっとチラキレスの仲間に違いない。            もうすぐ好きな人と自分の間にある社会的な繋がりが一つ減ってしまうことから、何者でもない男と女として自分達を再解釈しようと試み

          2020.3.27 毒と皿

          2020.3.24 草木花の夢

          前触れなく、というよりはふわりと常考しているような気もする。ふだんは深いところに置いてあるこの気持ちが、なにかの折に触れて表面をぷかぷかと漂うようになるというか。この日は風の強い春の夜だった。 このときの「嘘だったらいいのにな〜」は決してネガティブではなく、「死にたい」「消えたい」と生を手放したいわけでもない。ただ穏やかに、この世界の非実在を望んでいる。私の目を通して見ている世界(社会、生活、人生、そのほかすべてのもの)がすべて、自分ではない誰かの夢であったらと願うよう

          2020.3.24 草木花の夢