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「雨の恋」

細い雨音、窓辺に聴いて、
手繰るのは美化した記憶、
思い出す、憶えてる、
煙のにおい、深く切った爪のあと、
下唇を舐めるくせ、俯く顔の濃い影や、
背中に星座をつくる黒子と、
感傷的な映画で泣くのに、
「愛してる」なんて言ってくれない、
私は爪を噛みながら、
忘れようと思い出す、

昨日忘れた、雨の音階、
食べ残しは痛み続ける、
忘れたい、思い出そうとも思わないのに、
皺寄る眉間、蹴り倒した傘立てや
苛立ち任せに雨を降らして、
「消えろ」と流れる街を眺めた、
私は嗚咽を殺そうと、
雨に咲く傘、閉じてゆく、

夏なんて、何のひとつも好きになれない、
それなのに、雨が過ぎれば吐くため息、
雨に蒸せたら勘違いして、
晴れたら雨のこと思う、
私は爪を噛みながら、
誰かに咬んでもらった首の歓びを、
思い出すんだ、雨の日に、

photograph and words by billy.

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