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「デザインファーム」はこれからどうなる?

こんにちは、BIOTOPEの石原です。昨年末に報道されたIDEO東京オフィス撤退のニュースからはや数カ月。「デザイン思考」を民主化し、多くの人々のクリエイティビティを解放した功績はもはや語るまでもなく、それだけに「デザイン思考の終焉」とまで言われています。

私たち、共創型戦略デザインファーム・BIOTOPEとしてもこの出来事は決して他人事ではなく、自分たちの在り方や今後進むべき道について深く考えさせられる機会になりました。

これからデザインファームはどんな存在として、どのような価値を提供することができるのか。そのなかで、BIOTOPEはどうあるべきなのか。そんな問いを、BIOTOPE CEO・佐宗邦威、COO/Transition designer・押野直美、Business designer・山田和雅に対してぶつけながら議論をしてみました。

佐宗邦威◎BIOTOPE代表。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&G、ヒューマンバリュー、ソニークリエイティブセンターなどを経て2015年にBIOTOPEを創業。

押野直美◎COO/Transition designer。日産自動車にてマーケティング、商品企画、新規事業開発、技術戦略、経営企画、アライアンス・パートナーシップに従事。2020年、BIOTOPEに参画。

山田和雅◎Business designer。総合商社にてインフラストラクチャ―事業を担当。海外大型案件の事業買収後、自ら事業会社に経営メンバーとして出向し、PMI、組織変革、企業価値向上等を牽引。2022年、BIOTOPEに参画。

聞き手:石原龍太郎(BIOTOPE Editor)

驚きと、喪失感と


──早速ですが、先のニュースを受けて率直に3人はどう思いましたか?

押野:
私は「時代が変わるんだな」と思いました。前職の自動車メーカーで商品企画をやっていたのが2010年前後ですが、私のように商品企画をやってた人間からすると、IDEOと一緒に仕事ができるっていうのがブランドだったし、最先端っぽかったんです。

私は直接関わってはいませんでしたが、すごく目新しく、今までにはないアプローチで商品企画を考えてくれるという噂は聞いていました。ただ、そのプロセスで考えたそのままの商品が世に出たことは私の周りでは聞いたことがなく、そこに多少の違和感はありましたが、閉塞とした商品企画の世界にこれほどまでインパクトを与えたところはなかったなと思います。

正直、それらは「デザイン思考が」ではなく「IDEOが」だったので、今回のニュースを見た時に何かひとつが終わったような気持ちになりましたね。

山田:
僕の場合も前職時代にIDEOの仕事を横目で見ていた経験が少しありますが「この文脈ではハマらないのにな」みたいな状態でも、「これをやればうまくいくんです」みたいな感じで、適材適所感のないままデザイン思考が使われてる感じにちょっとした違和感を抱いていました。

当時まだIDEOという存在やデザイン思考に対して解像度が低かった自分は「こういうものなんだな、僕が知らないだけなんだな」とごまかしていましたが、数年前にイリノイ工科大学デザインスクール(以後、ID)へ留学をしていろいろなエッセンスを学んでみると、やっぱりあのときの違和感はそれほど外れていなかったのかもって感じてます。

IDEOの個社の話もあるのかもしれませんが、社会一般として、「デザイン思考」というマジカルバレットに対してバクっとした過度な期待があり、その誤解が解消されない状態でふわふわと活用されている現実の中に大きな矛盾が初めから存在していて、今回の件はそれがたまたまIDEOさんを通じて露呈したということなのかなと受け止めました。

押野:
IDEOに関しては、私の知る限り商品企画系の人たちはかなりテンションが高かった記憶ですね。それまでIDEOが入らなくても良いコンセプトはできていたと思いますが、当時それができるのはものすごく一部のセンスある人に限られていた感覚です。

そこで、IDEOが広げた「デザイン思考」というメソッドを取り入れれば、一部のスーパーマンだけではない人たちもそれなりのアイデアを出せるようになった。人々の創造性を民主化した存在だと思います。


──佐宗さんはあのニュースを見たときどんなことを思いましたか?

佐宗:
僕は正直ショックでしたね。僕自身、2000年代前半にIDEO共同経営者であるトム・ケリーらが書いた「発想する会社」という本を読んで、デザインファームという新しい世界観にすごく興味を持ち、IDEOに憧れ、いつかはIDEOのようなデザインファームをつくりたいと夢見ていた時代があります。

2011年にIDEO Tokyoが創設され、2012年にIDへ留学をし、帰国後BIOTOPEを創業したという流れのなかで、僭越ではありますが、僕的には日本における「デザインコンサルティング」という市場を一緒に切り開いてきた気持ちでいました。なので、個人としては喪失感に近い感情です。

── 日本におけるデザインコンサルティング業界の黎明期を一緒に頑張ってきた同志がいなくなった、くらいの気持ちでしょうか。

佐宗:
そうですね。デザインコンサルティングの市場って、2015年くらいまではそんなに単価を取れなかったんですよね。以前IDEOの友人と話していた時に、その頃はまだまだ安い価格でやっていたよね、という話をよくしていて。

IDEO tokyoができてから市場ができるまでそれなりに時間はかかりましたけど、いまはかなり単価も上がってきたし、それだけ社会に価値を認めてもらえるものをつくってきた自負もあるので、それぞれのドメインで一緒に市場を作ってきた感覚があります。

その会社がなくなってしまうんだなあと思った時に、自分たちももっと頑張らなきゃだめだなと思いました。

デザインファームの変化


── 今回の件が日本におけるデザインファーム全体のエポックメイキング的な出来事だとすると、そもそも「デザインファーム」という存在の役割のpre/postはどのように整理できるのでしょうか?

山田:
これまでのデザインファームに対してはあまり解像度高く話せませんが、まず「デザイン思考の終焉」という言葉がIDEOの文脈から語られるってことって、つまり一般的な認識では「デザインファーム=IDEO≒デザイン思考」という図式があるのではないかと思うわけです。

しかし本来はそうではなくて、デザインファームという円の中にデザイン思考というメソッドが存在する構造ですよね。なので、あくまでツールのひとつとしてこれからもデザイン思考は使い続けることになると思います。

もう少し説明すると、一般に言われるように、デザインは「Design Doing」と「Design Thinking」の2つに分かれます。この「Design Doing」と「Design Thinking」を一体として運用しないといけない領域、ユーザビリティを高めるデザインをする文脈ではデザイン思考は依然として有効なんじゃないかなと思うわけです。

しかし、人間中心デザインだけではもうこの世の中は語れないほど複雑になっています。僕の興味領域であるカーボンニュートラル領域でも、当然相手は人ではなく自然界で、あえて極端に言えば、そこにはヒューマンエクスペリエンスはありません。

そうなると、エコシステムとかサプライチェーンとか、ギャップを生み出してる組織全体とか、複雑な物事が向き合うべき射程になっていくので、「デザインファーム」の役割はより広くなっていかなければいけない。

そうなるとデザインファームは、デザイン思考の他にも、BIOTOPEが得意としている戦略思考、システム思考、ビジョン思考、あるいはパーパス思考など、あらゆる「思考ツール」のようなものを内包して活動していくべきなのかなと思います。

デザインファームの本質的な役割は「意味の再結合」だと思っていて。それは「De-sign」の語源から考えていくと、一度意味を切り離し、その上で意味の再結合を特定の文脈において一番適切なやり方でやっていく存在がデザインファームなんだと思うんですよね。

なので、いろいろな思考をその文脈において適切な形で使い分けていく、それができないとダメなのかなと考えています。

押野:
そうですよね、おっしゃる通りだなと思いました。デザインファームって、すごい特殊だなと思っています。

──というと?

押野:
なんだろう……。なんとなく、感情を含めた人間性があることを価値につなげているという感覚があります。IDEOが広げたデザイン思考はメソッドとして完成度が高かったことは言うまでもなく、プロセスを通して心からワクワクしたり、心が動く瞬間そのものを扱っているという実感は、すごくあたりまえのことだけど新鮮だった。

どうしても真面目に真面目に考えてしまいがちだった商品企画やサービス企画などを、「心が動きながら・わくわくしながらやってもいいんだ」というものに変えてくれたことは彼らの貢献だったと思います。

ですが、山田さんが言ったように、アプローチする相手が人だけでなく社会や自然環境など複雑になってきているので、人間中心の商品・サービスだけつくればいい話ではなくなってきたなと。そういう意味では、デザインファーム=デザイン思考ではなく、もっと広いものを包含する存在である点も同意です。

──いまBIOTOPEではVision/Missionのデザインはもちろんですが、Valueの開発や、MVVを浸透させていくための取り組み、いわば組織文化を扱うプロジェクトも増えてきています。そんな現状も含め、デザインファームの役割の変化について佐宗さんはどう考えていますか?

佐宗:
元々デザインファームの本分ってなんだろうと考えてみると、「自分たちでは考えられないものを作ってくれる存在」だったのかなと思ってます。歴史的にいうと、グラフィックやプロダクトデザインの分野では職人的なデザイナーが活躍した時期がありました。

この流れが変わったのは、インターネットによって情報がインタラクティブになったことです。「人間中心デザイン」の考え方が広がり、徐々に社会がネットワーク化し、IoTサービスなどが広がっていくにつれ、IDEOが人間中心デザインを「デザイン思考」という形でうまくシンプルなフレームワークに落とし込んだことで、企業のサービスやプロダクト開発の文脈で相性が良く使われていったのだと思います。

つまりインタラクティブな体験のデザインという共通項を持つ領域において、デザイン思考がうまくハマった。いまはインターネットが社会インフラ化し、それとともに人間中心デザインの考え方自体も民主化しているのかなと。ある意味、テクノロジーをユーザーの体験に翻訳していくという意味のデザインに関しては一回りした印象があります。

いまは、課題が組織や環境といった「システム」に移行しつつあるタイミングです。いろいろな人が考えたアイデアを組織全体としてしっかり実務に落としていくことに価値が移ってきたのが2010年代前半くらい、「デザイン経営」の考え方が出てきたのは2010年代後半ぐらいから。

特定の人だけではなく、当たり前のように社員みんなができるようになろうとチャレンジしている最中なのではないかなと。

また、気候変動や社会課題などの複雑な課題が社会で求められるようになっています。ユーザー個人の課題から集団が共有する課題に対しての課題解決を求められるようになり、デザイナーの役割も、集合的なシステム的を可視化しながら人やコミュニティの行動変容を促していくような変化の媒介に変わりつつあります。

その流れのなかで、これからのデザインファームってどんな顔を持つんだろうと考えると、大きく3つがありそうです。

ひとつは、難しい問題を一緒に答えを導き出していくための場づくりを行うカタリストとしての顔。2つ目は、組織自体を創造的にする会社経営の創造的変革者としての顔。3つ目は、「Design Doing」のプロセスの伴走者として、つくるプロセスを支援していくような顔。大きくこの3つに分化していくのではないかと、現段階ではぼんやりと思っています。

どんな人なら価値を発揮できる?


──顔や役割が変わることは、つまりデザインファームが提供する価値も変わるということ。そこで気になったのですが、これからデザインファームで活躍できる人ってどんな人なんでしょう?僕自身はずっと編集の世界にいたり、山田さんは商社、押野さんは自動車メーカーとBIOTOPEメンバーのバックグラウンドもさまざまですが、どんな人がデザインファームに入ってくると新しい価値を提供し続けられるんだろう。

押野:
「かけ算」ができる人かな。これまで積み重ねてきた経験や多角的なものの見方といったかけ算ができるものを持ってることと、足し算でも引き算でもなく、かけ算ができる能力を持ってることが必要だと感じます。

佐宗:
自分の中にある経験や知識だけでなく、クライアントと自分たちのかけ算もしなきゃいけない。自分たちの持ってるものと、クライアントが持ってるものをかけ合わせて何倍にもするコラボレーションを一緒にできる存在こそがデザインファームかなという気がしています。

「かけ算できるものを持っている」という点でもまったく同感で、例えばマーケティングやグラフィックデザインのスキルや、カーボンニュートラルに対する知見など、何かしらの専門性があって、そんな人がコラボレーション能力や統合していく力を身につけるとすごく価値が発揮されていくと思います。

自分自身の専門性が0だと何をかけ合わせても0だし、知見の足し算しかできなかったら大きな変化は起きない。

自分自身がもっている表現スキルと特定テーマ・ドメインに関する知見に加え、相手の可能性を引き出す力、それらをまとめて統合する、つまりかけ算する力といったさまざまな能力が求められるようになってきているような気がしています。

──積み木をイメージした時に、一番底に柔軟性や応用力とも言い換えられるかもしれませんが「かけ算ができる/楽しめるスキル」があって、その上に2つ「ビジネスドメインスキル」と「表現技能スキル」が乗っかっているような絵を思い浮かべました。はじめからすべてを兼ね備えているに越したことはないけれど、まずは根底の基礎的な素養があることが重要なのかなと。山田さんはいかがですか?

山田:
僕はまず、ID留学時代の仲間たちの顔をいっぱい思い浮かべたんですよね。そこには銀行や航空会社、商社など比較的大企業から来ている人が多くて、僕も含めて彼らに共通するのは「隔絶」みたいなものに問題意識を持っているのかもしれないと思ったわけです。

というのも、自分がかつてやっていた仕事は足し算の世界に近くて、大きなサプライチェーンのようなもののなかの一部をこなしていたような気がします。つまり巨大な仕組みの中の足し算の1つでしかない自分を自覚したときに「隔絶」を感じる。IDには、僕と同じようなものに問題意識を抱いている人たちが「このままでいいのだろうか」と答えを探しに来てたような気がします。

この話を押野さんと佐宗さんの話につなげると「かけ算をしたい」って思うためには、かけ算が必要だと思わなきゃいけないとか、かけ算が素敵だなと思わなければ始まらないと思うんです。

だからさっき石原くんが言った積み木イメージの根底にある部分をマインドセットと捉えた時に、自分の可能性と相手の可能性をつなげることに可能性を感じていること、「隔絶感」を人と人の可能性で埋め直したいと思うことが必要で、それがあるからこそかけ算を楽しめるんじゃないかなと思います。

BIOTOPEが求める基礎的なスキルセット(暫定版)

押野:
かけ算を楽しむためのマインドセットって、「ひとりでできることって限界があるよね」って考えていることでもありますよね。だからこそかけ算をしていく。これからもっと広義のデザインを扱っていくデザインファームとしては、ひとりで何でもできてしまう人とは違うタイプの人が活躍するのではないでしょうか。

一人でなんでもできるスペシャリストがもてはやされていた時代もあったけれど、自分はそうじゃないと考える人たちが「かけ合わせる」というキーワードで自分の持っているスキルや経験、そしてかけ合わせる先を探し始めるようになる。

私もそうで「共創」が2010年代くらいに出てきた時に「これ面白いじゃん」ってなったんですよね。「ひとりで正解を出さなくても良いんだ」と思えたきっかけが共創であり、IDEOが出したデザイン思考のメソッドはまさにユーザーとの共創で新しい体験でしたね。

佐宗:
共創とは、つまり「知の新結合」のこと。それはかけ算を通じて起こることで、入り口となったのが多分デザイン思考なんだと思うんですよね。

IDEOは人間中心デザインを用いて新結合させていきましたが、いまはもっと多様なステークホルダーがいるのでシステムを対象にしながらデザインしていくシステミックデザインと呼ばれる取り組みも欧州で増えてきているし、新結合の起こし方は変わっていくんじゃないかと思っています。

ユーザーを超えてそのシステム全体を見る、場合によっては自然環境や地球レベルの大きなシステムを見る必要があることも。こういった変化のなかで、繰り返しですが「かけ算の媒介となる存在」がより重要になってきているのだろうなと。

これからのBIOTOPEがやるべきこと


──ここまで「デザインファーム」という大きな括りで話をしてきましたが、翻ってBIOTOPEってこれからどんな役割を果たしていくべきなんでしょうか。

山田:
「MVV」というアウトプットだけを見ると、極端に言えば所詮は言葉なので、BIOTOPEじゃなくてもつくれると思います。他社も増えているし、またはAIでもつくれるかもしれない。最後のものだけをみても、その良し悪しは主観でしか判断しにくいし差がわからないと思うんです。

じゃあ何が必要なのかというと、一言で言うならば「本当の変化を起こすまでやる」ことなのではないかと思います。言葉だけだと良し悪しが主観でしか分かりづらい。じゃあ何で納得するかというと、as is /to beの変化幅なのではと。

MVVなりコンセプトなりをつくった後に、実際それに沿って何らかのアクションを起こしていって、振り返った時に結果としてこんなに変わったね、ということを証明できた瞬間が大切だと思うんです。

複雑なシステムの変容を起こしていくのはめちゃくちゃ大変。その水先案内役として、またはプロセスの伴走者としての役割を誰かがやらなければいけない。

本当だったら「それはクライアントさん自身でやってください」という話なんですが、現実はそう甘くない。自分自身の実務感覚として、自分たちだけでうまくいく確率はせいぜい2割くらい。その1割2割の勝率をなんとか4割、5割ぐらいに高めるための伴走が必要なんです。

ただ進めるためのプランを一緒につくるだけではダメで、では何が必要かというと「人」です。BIOTOPEが介入したことによって生まれたマインドチェンジした「人」や組織における「関係性」が会社に資産として残ることによって、僕たちがいない状態でもうまく回っていく状態をつくることが大切だと考えています。

BIOTOPEのMission

押野:
BIOTOPEのMission「意志ある道をつくり、希望の物語を巡らせる」に「希望」という言葉が入っていますが、私はそれがすごく良いと思っています。というのも、私にとって希望とは「いまここで自分が生きていて良いんだと感じられること」だから。

いまの社会、特に会社組織ではそう思うことができない人たちが増えてきているような気がしています。個々人が「ここにいて良い、存在意義がある」と感じられることが、その人自身の生きる希望に繋がるはず。1日の約1/3という膨大な時間を仕事に費やしているなかで、自分が生きる希望を仕事と繋げられることって、本当にすごいことだと思うわけです。

なので、私はBIOTOPEを通じて会社のパーパスやミッションを、そこで働く人達にちゃんと紐づいた形でデザインしていくことをしていきたい。自分はここにいていいんだなとか、世の中を変えるための役割を自分も担っているんだなと感じられるようなプロセスを大切にしたいと思います。

最終アウトプットとして具体的なモノをつくることもあるけれど、こうした部分もデザインファームだからこそできることだと思いますね。

佐宗:
その流れも含め、BIOTOPEが新規事業創造から始まって、ビジョンデザインにドメインが移り、最近では、ミッション・バリューなどの組織文化デザインを扱うようになってきたのはなんでなのか?というのが正直よく分からなかったんです。でもここまでの話を聞いて、やっぱりつくるべき対象が変わってきているんだろうなと思いましたね。

例えば画像や動画、記事の生成だってAIでできてしまうので「つくる」こと自体の意味合いも変わりつつあるはず。これからは、「自分にとって意味あるものをつくる」ことが重要なのではないでしょうか。

自分たちで自分たちの意味をつくり出していくことをBIOTOPEは支援しているし、これからはよりその流れが加速していくんだろうなと。

そのプロセスは、すごく人間くさい営みのはず。だからAI時代においても、つまり我々のような媒介者が果たす価値は高まっていくし、ワークショップのようなリアルな場がものすごく大事になっていくでしょう。

まさにBIOTOPEの腕の見せ所です。つくったもの自体もそうですが、つくる過程やつくった後のプロセスまでしっかり伴走していきたいなと思います。

山田:
すごくわかります。人の目を見て、仕草を見ながら話し、相手はメモを取ったり上を見上げて考えていたり、誰かの発言に誰かが意見を言ったりするその場を思い浮かべると、AIが加速するなかで決して代替できない残されたヒューマニティの領分だなあと思いました。

佐宗:
身体感覚を伴いながら心理的な変容が起きていく場が、まさにワークショップなんですよね。変容のプロセスとはつまり身体体験であり、体験を通じてしか人の信念や考え方は変わらないような気がします。

──答えを提示するようなプロセスではなく、複雑な問いをひとつのシステムと捉え、身体体験を通じて解を共創していきながら人や組織の変容を促していく。そんな場をつくることだったり、その場から生まれた意思を組織に伝播させていったり、その場で出てきた要素を材料にしながらものをつくる過程に伴走したりなど、これからBIOTOPEが果たすべき役割の輪郭が見えた気がします。一言で具体的に説明するのはなかなか難しいですが、引き続きBIOTOPEのみんなで走りながら、自分たちのやるべきこと、やっていきたいことと向き合い続けていきたいですね。ありがとうございました。


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Interview&text by Ryutaro Ishihara


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